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宇宙宅配便カンパニー「ミゥ」!  作者: いのそらん
1部
25/94

2-5 いくぞ、とぶぞ、超えるぞ宇宙!  その2

 徹は舞のひきつった顔を見て、申し訳なさそうに説明を続けた。


「はい、電波も重力の干渉を受けますからね・・・」

舞が目を見開き唖然とする。


「それって・・ま、まさか・・・・」

 舞の嘆息混じりに、そう声をあげる。

 カレンが、舞に向き直った。


「おい、どういうことだ?」

 1人話が掴めないカレン。


「昨日の今日・・・ですよ?カレン」

「だから、それが?」

 カレンの顔の上にはいまだ疑問符が浮かんでいる。

 舞が、仕方なくもう1つヒントになりそうな相槌を打った。


「で、宇宙ドックですのよ?」

 ようやく何かに思い当たったのが、カレンの目も大きく開かれた。


「ま、まさか、あいつ、ガキの言っていたコロニーに勝手に連れていこうっていうわけじゃないだろうな?」

 カレンは『判っている』だろうことを言葉にして確認する。

 舞もその答えを言うしかない。


「その、まさかの可能性が・・・」

 カレンも、言葉を失った。

 2人のやり取りに、徹が場を納めるかのように落ち着いた声で、

「まだ、そうと決まった訳では・・・」

 力なくつぶやいた。

 舞は、いくぶん落ち着きを取り戻し、口を開いた。


「徹さん、舞の宇宙空間稼動用の実験ユニットはどこにあるの?」

 心の中では、もう答えはわかっている。

 それでも訊かずにはいられない。


「そ、それは、財団所有の宇宙ドックに・・・・」

『やっぱり』

 悪い予想は古来当たると相場は決まっている。


「おいおい・・・やばいんじゃないのか?」

 カレンも事の重大さに気づき、息が荒い。


「大丈夫ですわ。ミゥにはユニットを使うためのプログラムはまだ組み込まれていないはずですわ。それにドックにはパスワードのかかった扉がいくつもあるわ。何より宇宙用のナビの実装もまだのはずよ」

 舞は、そう言って徹を注視する、

『1挙動も見逃さない』

 そんな覚悟が聞こえてきそうなぐらいに。


「そ、そうか・・・じゃあ、安心じゃないか」

カレンが息をつく。


 カレンも、多少落ち着きをとり戻したのか、自分のデスクに戻ると苦いコーヒーをいっきにのどに流し込んだ。

 舞はそんなカレンを横目に、まだ徹を凝視していた。

 そして、何かを確信したかのように、


「徹さん?」

 そう言いながら、覗きこむように徹の顔を覗きこむ。

 しかし、口元は明らかにひきつりピクピクしている。それでもってゆがむような笑みが浮かんでいる。ぶっちゃけ怖い。


「は、はい・・・」

 徹はたじろぎながら返事をする。


「ところで、オフィスの端末には、宇宙ユニットのβテスト用のデバイスはアップロードされてるのかしら?」

舞がジト目で徹を見つめる。


「・・・」

 徹の無言の返事が続いた。舞の視線がいっそう険しくなった。


「カレン、ここからでは宇宙ドックへのホットラインがないわ」

舞が急にカレンにそう告げる。


「何がなんなんだ?大丈夫じゃないのかよ?」

カレンは舞の真意が理解できない。


「私は、念のため、そう、念のため。これから宇宙宅配関連業務部に、急いで向かいますわ」

『念のため』を強調しながら、舞がカレンに告げる。

カレンは、よくわからなかったが、とりあえず

「お、おう、頼んだ」

そう頷いた。

そして次の舞のお願いに凍りつく。


「あなたは、ミゥの変わりに、今日の分の宅配よろしくね?」

「え?」

 一転、カレンが項垂れた。

 舞は笑顔を浮かべて、


「だって、もともとはあなたのお家のお家の仕事だったんでしょう?」

 言い放つ。


「そ、それは・・・」

カレンが盛大に苦笑いを浮かべる。でも舞は追撃する。


「社長、頼みましたよ?」

「かぁ・・・・やっとくよ!」

 カレンの負け。

 投げやりに返答し、カレンはぶつぶついいながら、今日の配送予定のリストチェックし始めた。

舞は徹の顎に手をあてて、くいと手前に低く。


「徹さん、あなたとはあとでゆっくり、2人きりでお話をする必要がありそうね」

 舞は、とびっきりの微笑みを浮かべ徹の顔を覗き込み、鼻と鼻がふれあうかという距離で、もう一度微笑んでから、足早にオフィスを後にした。

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