2-4 入浴、乳浴、女の体 その2
2-4 入浴、乳浴、女の体 中編
チャイは、脱衣所でぞんざいに服を脱ぎ捨てると、バスルームにはいった。
さすがペントハウス付きのお風呂場である。かなり広い。
始めて入る最新設備の整った、大きなバスルームにチャイは興奮を隠しきれないようである。
正直、徹が日常寝とまりをしている仮眠室の2倍ぐらいの広さがある。シャワーも2台ついていたし、大人4,5人はゆったり入れる湯舟と、その横には小さいながらもジャグジーさえ完備していた。
「いいなぁーーーーーーーー」
チャイが感嘆混じりの声をあげる。
「こんな綺麗なお風呂見たことないよ!!」
遅れて、ミゥがお風呂場に入ってきた。チャイが、
「はやくおいでよ!」
そういって、両手で手招きをし、バスルームに入ってきたミゥを見て、首を傾げた。
ミゥは基本服を着ていない。そのため表を歩いているときの格好とお風呂に入るときのそれはまったく同じである。普段の生活で服を着て生活をしているチャイにとっては、その光景にいささか違和感を感じたのかもしれない。まあ、これはチャイ以外も同様ではあるが・・・。
「あ、そうか、ミゥお洋服着てないから・・・」
チャイがミゥの胸をたたいた。
「ハイ。外装パーツガ、衣服トカンガエテイマス」
ミゥが自分の身体とチャイの体を見比べながら、そうチャイに話す。
「へぇ~ミゥ可愛いし、スタイルいいから可愛い服着れたらいいのにね」
「何故デショウカ?」
テキパキとチャイの入浴の準備を整えながら、ミゥが質問する。
「女の子じゃん」
にかっと言う擬音が聞こえてきそうな満面の笑みで、チャイが即答した。
「・・・」
ミゥはチャイの『女の子』という言葉を聞いて、黙ったまま、自分の身体を確認するように見る。
ミゥは、あごから上、ひじから下の指先まで、そして脚の付け根からひざ上までの大腿部が人工皮膚で覆われており、その他の部分は、外装パーツと呼ばれるユニットが剥き出しのままである。
徹に言わせると、今の時点ではこれがいいのだという、ある理由からである。
「ミゥはお風呂はいっても大丈夫なのにね」
チャイは黙っているミゥを眺めながら、つまらなそうに言う。
「頭髪ハイツモ自分デ洗浄シテイマスノデ・・・」
何故か、ミゥはそう答えた。
そして、そう答えながら、自分の髪の毛を指先でいじり始めた、そして、徹に貰った髪留めが置いてあるクローゼットの方角を見つめた。
「洗浄って『髪を洗う』ってことだよね?」
「ハイ」
どうして、急に髪の毛の話になったのか、チャイはよくわからなかったが、確認するように訊いた。
そして、
「自分じゃなきゃ誰が洗うの?」
そう続けた。
「ボディのメンテナンスハ、イツモマスターガァ・」
ミゥがそう返答しかけると、
「ダメだよ!あんな変態といっしょにお風呂に入るなんて、絶対しちゃだめだよ!!」
そう叫ぶ、チャイの声で返答が掻き消された。
ミゥは、髪の毛を弄る手を止めて、
「何故デスカ?」
そう聞き返す。
ミゥの音声は、確かに硬質な声質(徹に言わせると『かわ美しい』声)ではあるが、このチャイの質問に対するミゥの返答の声は、かなり硬い。この場に徹が居たら興味を引くこと間違いないほど、いわゆるトーンが低かった。
チャイは、ミゥの感情表現がどの程度なのか知らないので、『あ、ちょっと嫌な話だったのかな』ぐらいにしか感じなかったので、トーンが下がったことより、お姉さんとしての立場を優先させて、孤児院の院長先生のような口調で話を続ける。
「女の子がいっしょにお風呂にはいっていい男の子は、この人って心にきめた人、大好きな人とだけ
だよ」
「ソウナノデスカ・・・・」
「そうだよ」
ミゥが尋ねると、チャイは即答する。
お風呂の湯気が切れて、チャイの全身がミゥの視界にはいる。少女の体から、大人への階段を登り始めたばかりのチャイの体は、しなやかで、そして健康的でり、美しかった。ミゥは、しばらくの間、チャイの体を凝視した。
「ミゥ。そんなに見ないでよ。恥ずかしいよ」
チャイが頬を赤らめて抗議する。
「モウシワケアリマセン」
ミゥは少しだけ頭を下げてそう謝る。
「謝らなくていいけどさ。どうしたの?」
ミゥは大切なところ隠すようにして、赤面したままミゥに問いただす。
「誰カト一緒ニオ風呂ニ入ルノハ初めてナノデス」
硬かったミゥの声は、この頃にはいつものトーンに戻っていた。
「そうなんだ、私なんか施設ではさ。大勢ではいるからゆっくり体を洗うことさえできないよ」
逆に、一人でお風呂に入ったことなどないチャイは、幸せそうに多いなバスルームを見渡しながらそう言った。
徹がこれまでに選んできた題材には、性的な教育を含むものは少なかったこともあり、ミゥにとってチャイは本当に未知の塊であったのかもしれない。あまり話には興味を持たなかったのか、そのままミゥはチャイに一歩近づくと、
「体ニ触ッテモヨロシイデスカ?」
そうつぶやいた。
「え?」
チャイもさすがにすっ頓狂な返事を返した。チャイは一瞬考えると、
「いいよ」
と返事をして、胸をはり、歯を出して笑った。前日、舞の指先のセンサーがアップデートされたばかりである。
昨日からミゥは、無意識のうちに普段気にしないようないろいろな物に触れていた。ミゥはおそるおそるといった風に、チャイに向かって手を伸ばした。
「きゃん。そんなところ触っちゃだめだよ」
「そこもだめ」
チャイはミゥが触るたびに、笑ったり、恥ずかしがったりしていた。
「今はまだ小さいけどね、もう少し大人になればきっともっと大きくなるよ」
ミゥがあまりにも無遠慮に触るものだから、ちょっとだけびっくりしたチャイであったが、ミゥの行動になれてきたのか、自分の胸を持ち上げた。
「オオキクナルノデスカ?」
「たぶんね」
ミゥがチャイの胸に手を伸ばし、軽く大切な部分に触れる。
「そこはダメ!」
と、言って、チャイは駆け込むように湯舟に逃げてしまった。
チャイが目の前から居なくなったミゥは呆然として
「暖カクテ、ヤワラカイ・・・」
そう、再びつぶやいた。
その小さな声が聞こえたのか聞こえないのか、チャイが湯舟からミゥに声をかける。
「ミゥも女の子なんだから、あの変態に頼んで、もっと女の子ぽい体にしてもらえばいいんだよ」
「・・・」
2人はお風呂からあがると、ミゥはチャイに徹のシャツをわたすと、そのまま仮眠室の徹のベットに案内をした。
ここでもミゥは、お風呂場にはいったときの勢いにまけないぐらいの元気さで、
『こんなふかふかのベット初めて!!』
等と叫びながら、ベットに飛び乗った。
チャイはその後もしばらくの間、多いに興奮していたのだが、ミゥが徹に頼まれてチャイの毛布を準備して戻ると、もう寝息を立てていた。
この季節になんで毛布と思うかもしれないが、仮眠室はメンテナンスルームの隣にあるためメンテナンスルームの冷気がかなり漏れてきてる。夏とはいえ、夜間は特にお風呂上りには少し寒いからだ。
徹は体にある程度の脂肪を蓄えてることもあり、比較的暑がりだったので、普段は白衣のまま寝ているのだが・・。
ミゥはチャイがすでに寝てしまっているのを理解すると、しばらく無言のまま見つけていた。チャイが寝返りを打つと、思い出したかのように急にチャイに近づき、4つ折りのままの毛布をそのままチャイの上に置いた。
その後、部屋の電灯を消すと、徹の待つメンテナンスルームに戻った。




