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 報告。

評価&ブクマ、ありがとうございます。

勝手なことをして、反省しています。




 キルヒアイズに連れて行かれたのは王の執務室だった。

 中では当然、国王が待っている。机に両肘をついて、椅子に座っていた。手を組んでいる。その顔は怒っているようにも見えた。すでに話が通っているのかもしれない。


「どうでした?」


 にこやかに、問われた。

 わたしは質問の意味を把握しかねる。


「どうというと……?」


 困って聞き返した。


「上手くいきましたか?」


 国王は質問を変える。どうやら、まだ何も聞いていないようだ。考えてみれば、話を聞けるタイミングはなかっただろう。


「……やり過ぎました」


 わたしは正直に自己申告した。反省している。自分で何があったのか話そうとした。

 だがそれを一旦、国王は止める。


「長くなりそうなので、座って話しましょう」


 そう言った。ソファの方へ案内される。

 わたしは素直にそれに従った。座ると、いいタイミングでお茶が出てくる。疲れていると思ったのか、程良く甘くしてあった。

 わたしはお茶を飲んで、一息吐く。

 そして、何をしたのかを話した。隠す気もないし、自分で話さなくてもどうせキルヒアイズから伝わる。

 国王は黙って、わたしの話を最後まで聞いていた。


「なるほど」


 最後にただ一言、そう呟く。


「それだけですか?」


 思っていた反応と違うので、わたしは思わず聞き返した。叱られることを覚悟していたが、お叱りはない。


「終わったことをとやかく言っても仕方が無いでしょう」


 国王は苦く笑った。もっともなことを言う。だが、それでも文句の一つでも言いたいのではないかと思った。

 わたしは明らかに、余計なことをした。

 だが、とやかく言っても仕方が無いのもまた事実だろう。


(それはそうですね)


 わたしは心の中で同意した。


「それより、聖女の力にそういう使い方があることを初めて知りました」


 国王はむしろそちらの方に興味があるようだ。興味津々という顔をする。

 意外と軽いノリだなと思ったが、いちいち重く捉えていたら国王というのは務まらない仕事なのかもしれない。


「正直、上手くいくかはわからなかったんですが……。ああなるとは、ちょっと予想外でした」


 わたしは正直に打ち明ける。


「老化させようとは思いましたけど、物理的に5年分の時間経過を身体が受けるとは思わなかったんです。ただそういうことも出来るのではないかと考えて、試しただけなので。髪とか髭とか伸びて、引きました」


 自分でやったことだが、あの場にいた誰よりもわたしが一番驚いていた。自分のえげつない魔法にどん引きする。


「ああいうことするなら、最初から教えてください」


 わたしの隣に座っていたキルヒアイズがとても疲れた顔でわたしを見た。そんな顔をしたくなる気持ちはわたしにもわかる。逆の立場だったら、わたしもきっとそういう顔をするだろう。


「ごめんなさい」


 わたしは素直に謝った。


「それより、あの人達が聖女の治療を受ける権利を行使したことはちゃんと記録として残しておいてくださいね」


 そして頼む。


「あれ、本気だったんですか?」


 キルヒアイズは苦く笑う。


「本気ですよ。そのために考える時間も与えたんですから。本人が了承して、わたしが力を行使したならそれは権利を行使したことと同様です。彼らは今後、病気になっても聖女の治療は受けられないわけです」


 わたしはにこりと笑う。


「自分を認めない者にそこまでするのかと、悪評が立ちますよ」


 キルヒアイズは警告した。


「違いますよ。わたしを認めようと認めまいと、そんなのわたしにはどうでもいいことです。だから、それだけなら何もしなかった」


 わたしは首を横に振る。


「でも彼らは聖女召喚にわたしが邪魔だから、わたしや家族に危害を加えようとした。わたしはそれが許せないのです。今後もわたしたちに危害を加えようとする者がいたら、きっちり報復します。それを周知して欲しいので、今回のことは上手に噂を流して、利用してくださいね」


 にっこりと笑顔で頼んだ。


「隠すという方向では考えないのですか?」


 キルヒアイズに問われる。


「今日、何があったかをですか?」


 わたしは少し驚いた。そんなことを言われるなんて、夢にも思っていなかった。


「隠すなんて無理ですよ。人の口に戸は立てられません。だからこそ、こちらに都合のいい噂が流れるように、情報操作をする必要があるのです。そういうの、王族が得意だと思ったのですが、違いますか?」


 キルヒアイズに問いかける。


「違ってはいません」


 キルヒアイズは苦く笑った。

 そんな息子とは対照的に、国王の方は面白そうに笑っている。状況を楽しんでいるようにも見えた。

 そんな国王をわたしはくえないおじさんだと思った。


「アヤ様は面白いですね。あの時、降嫁なんてさせるのではなかった。聖女として、キルヒアイズと結婚させてとりこんでおくべきでした」


 そんなことを口にする。

 堂々と利用したかったと言われて、わたしは愛想笑いを浮かべるしかなかった。


「それ、本人に言っちゃうのですね」


 ぼやく。


「隠しても、見抜くでしょう?」


 国王は覗き込むようにわたしの目を見た。


「買いかぶりすぎです」


 わたしは否定する。


「それより、今後のことですが一つだけ、お願いがあります」


 真面目な顔で切り出した。頼みたいことが一つある。


「なんですか?」


 国王は穏やかで-だが真意は読み取らせないような笑顔で-問いかけた。




結果は本人にも予想外だったのです。

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