会議 2
評価&ブクマ、ありがとうございます。
うだうだされています。
にっこりとわたしは笑った。力を自分の目で見ないと信じられないという言葉が出るのを実は待っていた。
「確かに、自分が見ていないものや確認していないものを信じるのは難しいでしょう。それについてはわたしも同意します。ですから、本日は皆様に集まっていただいたのです」
わたしの言葉に、部屋の中はざわっとする。露骨に警戒された。
何を考えているのだという眼差しがわたしに注がれる。そこには怯えも見えた。
(何をされるかわからないから、怖いのでしょうね)
わたしは内心、にたにたする。もっと怯えろと思った。我ながら、性格が悪い。だが、ジェイスにされたことを忘れられるわけがない。彼らの中に犯人がいる可能性は少なくなかった。
「我々を傷つけるつもりですか?」
思いもしないことを言われて、驚く。
「え?」
わたしはきょとんとした。
そんなわたしの反応に、貴族達も戸惑う。
「我々に怪我をさせて、それを治して見せるというのでしょう?」
遠くの方から、きゃんきゃん煩い声が聞こえだ。小型犬が吠えているような感じだ。怖いから叫んでいく。
(バカね)
わたしは心の中で毒づいた。
「怪我を治すのは治癒魔法でも出来ます。それでは証明にならないのではありませんか?」
逆に聞く。そんなことをするわけないだろうと、呆れた。
「仮にもわたしは聖女です。人を斬るなんてことは基本的にしませんよ」
静かに首を横に振る。
「基本的には、ですか?」
エヴァンスに突っ込まれた。
「ええ、基本的にはです。自分や自分の大切なものを傷つけられた場合は違います。わたしはそこまで寛大ではありません。罪を憎んで人を憎まずなんて出来ませんから。罪も人も合わせて憎むし、相応の報復もします。どうか、覚えておいてください。人に傷つけられる覚悟のない人間は人を傷つけてはならないのです」
真っ直ぐにわたしはエヴァンスを見つめる。
「聖女らしかぬ発言ですね」
責めるように言われた。
(そんなの、自分が一番よくわかっている)
心の中で言い返す。
「最初に言いましたよね? わたしはなりたくて聖女になったわけではありません。自分が聖女に相応しいとも思っていません。この国が聖女を必要としているので聖女になるだけで、困る人が誰もいないのなら、今すぐにでも聖女を辞してあげますよ。ただし、死ぬつもりはさらさらありません」
最後の一言に、ざわついていた室内は異様なほどしんとする。誰もが息を飲んだ。
「もうすでに察しているのでしょう? 聖女であるわたしがいる限り、新たな聖女は召喚されません。聖女は常に1人だけというのはそういうことなのです」
わたしは淡々と話す。
「貴方たちが認めても認めなくても、わたしがいる限り、新たな聖女は召喚されません。それに気づいたから、貴方たちの誰かはわたしと家族を狙ったのですよね?」
問いかけながら、貴族達の反応を見る。
ただ驚いている者、急に挙動不審になる者、全く動じない者、反応は様々だ。
(いまいち読めないな)
そう思う。揺さぶりを掛けたがあまり効果は感じられなかった。どれも怪しく見える。
(チッ)
心の中で舌打ちした。自分で犯人を捜すのは、無理そうだ。キルヒアイズに任せる方が良いかもしれない。
「本題がずれましたね」
わたしは脇道にそれた話題を元に戻すことにした。
「あなた方にわたしの力を実感していただくために、これから聖女の力をお見せします。構いませんか?」
問いかけた。1人1人の目を見る。しかし、誰も返事をしなかった。
わたしはやれやれと息を吐いた。
「では、確認のために名前をお呼びします。呼ばれたら、返事をしてください」
埒があかないので、わたしは1人1人の名前を呼ぶことにした。
貰っていた資料に載っている名前を呼ぶ。ついでに、顔と名前を一致させた。
無視することは出来ないらしく、渋々という感じで全員が返事をしてくれる。
(聖女の子孫の3人のうち、1人は金髪碧眼を引き継がなかったのね)
金髪碧眼が3人いるから、その3人が子孫なのかと思った。しかし、違うようだ。1人だけ髪も瞳もブラウンの子がいる。この面子では一番若そうだ。なんとなく肩身が狭そうに見えるのはたぶん気のせいでは無いだろう。顔立ちはなかなか整っていた。もっとも、貴族のほとんどは美形だ。ここに並んでいる連中には並以下の顔はない。
「わたしが力を貴方たちに使うことを承認しますね?」
改めて、問うた。
「断われば、どうなるのですか?」
怯えた声で聞き返される。
「何も」
わたしは答えた。
「貴方たちが力を見なければ信じられないというので、見せるだけです。見なくても信じられるというなら、それで構いません。でも、何も無くてわたしが聖女だということを認められるのですか?」
意地の悪い問い方をする。こんな風に聞かれたら、力を見せてくれとしか言えないだろう。
「それは……」
返答に彼らは詰まった。
優柔不断なその態度に、わたしは苛立つ。さっさと決めて欲しい。
「相談する時間が必要ですか?」
目の前でうだうだされるのが鬱陶しくて、問うた。
「時間をいただけるのなら」
ほっとしたような声が上がる。
「わかりました。わたしは退席しますので、相談してください。1時間後に戻ります」
そう告げて、席を立った。
なんだかんだいって、彼らは怖いのです。




