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 泳ぎ始めてどれくらい経っただろうか。流氷の間からたまに見える太陽の位置的に2時間くらいか。

 未だに俺たち以外の生物に出会わない。


 いや、出会ってはいるか。小さな魚や海藻などには。ただ数が少ない上に、魔物なのかはわからない。

 一応生物ではあるし魔物なのだろうとは思う。だが脅威を感じないし、異形でもないからな。触れても何も無いただの海藻だし、ラピスが追いかけ回せば逃げる普通の魚だ。


「きゅいぃぃ!」


 !?!?


「ラピス!?」


 突然叫ぶラピスを見ると俺にタックルしてきた。


「な、なんだ? なんかあったか?」


「きゅぃ! きゅぃ!」


 なんか物凄く必死に逃げようって…なんかいるのか?


「結界!」


 とりあえず周りに結界を張っておく。イメージはマジックミラーだ。こちらから見えるが外から見たら景色に溶け込むように…反射するではなく外側は海と同じ色をイメージしたが…外から確認してみないことには成功してるかわからないな。


「どうした? 結界張ったから大丈夫だぞ」


「きゅ、きゅい?」


「本当だ。んでどうした?」


「きゅぃっ」


 あそこ?

 ラピスの視線を追うと黒い影が見えた。


「サメ、か?」


 まだ遠くてはっきりと見えないが、動きとかシルエット的にサメっぽい。身体をくねらせるように泳いでいる。


「魔物…だよな?」


「きゅいっ!」


「こっちに向かってくるな?」


「きゅ、きゅぃぃ…」


 そんな怯えなくとも…。

 引っ付いてくるラピスをよしよしと撫でながら考える。

 この結界移動できないんだよな…。空間に固定されてるといえばいいか…。


 外からも中からも通り抜けられないからこちらから攻撃もできないし…俺が作ったんだし腕だけでも抜けられないか…?


 結界の壁に手を当て通り抜けるイメージをして見るが…何も起きない。それでも、と思いイメージし続けると集中しているとなんか手のひらと結界が溶け合うかのような感覚を覚えた瞬間、手首まで通り抜けた。


「なんか気持ち悪! ぬるって感じで抜けたぞ」


「きゅ!? きゅいきゅい!!」


「大丈夫だって」


 もう姿がはっきりと見えるくらい近づいたサメを見てみるが別にこちらに攻撃する意思で近づいてきてる分けじゃ無いと思う。ゆっくり進んでくるし。


「きゅいぃ!!」


 えっ。


 ガキンッ!


 あっぶなぁ!? 咄嗟に手を引っ込めたので平気だったが…あのサメ突然速度を上げて突っ込んできたぞ。俺の手に反応した…?

 サメは結界の周りを泳ぐ。たまにぶつかったりするが。


「ラピスごめん…」


「きゅぃ…」


「いなくなるまで大人しくしていよう」


 サメは俺よりも大きい。というかラピスくらいなら丸呑みできるくらい口が大きい。体長は三メートルくらいか?


 ドンッ!


「え?」


「きゅっ!?」


 なんだ? 四方八方見てみるがサメ以外は何もいないし、そのサメは少し離れたところにいる。


 ドンッ。


 サメが水中で動きを止めると音がした。


「まさか魔法…?」


 そう…だよな。幼いラピスですら魔法を使えるんだからこんな巨大なサメが魔法を使えないわけないよな…。


 何がぶつかったのかは見えないから水魔法か海魔法か音魔法か…。俺の知らない魔法か…。

 力量差がわからないから無闇にこの結界なら出る気はないが…。位階ってのでだいたいの強さがわかればいいが、相手の位階はわからない上、俺の位階は神が作った肉体のせいたで位階だけは上がっているみたいだから実際そんな力は無い…のだと思う。

 魔物との戦闘なんてしたことないからわからないことだらけだし、去ってくれるのを待つか。


 結界の中だから腰を落ち着けていればいいのかもしれないが、結界がいつ壊れるとも知れずラピスとくっ付きながらいつでも移動できるように結界の中の水中に浮いている状態でひたすら攻撃が止むのを待ち続けた。


「きゅ…きゅぃ〜」


 サメがこちらに背を向けるとラピスがため息のような声を上げた。


「諦めた、か?」


「きゅっ」


「……………」


「きゅい!?」


「静かに」


 俺は結界から手を出し海魔法を発動する。サメの周囲の海水を操り、大きな海水の手をイメージする。すると俺が思ったように巨大なキラキラと光る青い手が現れたように見えた。

 それの巨大な手てサメを思い切り握りつぶすイメージを…。


 バギバキバキ…グチャッ。


「うっ…」


 感触がダイレクトに伝わってきた…。すんごい嫌な感触がした。


「ラピス一回上に上がろう」


「きゅ、きゅい」


 未だサメを握り込んだ海水の手は健在だ。俺の突き出した右手も握った状態である。連動しているのだろうか…?


 とりあえず結界を解除き、握っている手を思い切り上げると、サメを握り込んだ海水の手はどんどん上に向かい流氷を砕き水上に出た。

 それを追いかけラピスと共に流氷に乗り上げる。


「ラピス。これ死んでると思うか?」


 キラキラと海水より青く見えるのは変わらないが、やはり海水の手なのでよくみると中は透けており、サメが潰されている。


「きゅ、きゅう」


 死んでる…よな?

 手を開きサメを流氷の上に置く。


「っ…!」


 色々と溢れているサメを見たら胃液が迫り上がってきたが、押し留めた。自分でやったのに吐くのは失礼だ。そんなこと思うのも失礼なのかもしれないが…。


「これ、どうするか…」


「きゅい!」


「え。食べんのか? これ?」


「きゅい!」


 襲われたからって殺して放置はよくないか…。埋める穴も掘れないし。海に放っておけば他の魚の糧にはなるが…。


「わかったよ。やってみる」



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