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「きゅい」
ん…。
「きゅいっ!」
なんだ…? えーっと……寝てた、のか。
転生させてくれると言って…そうだ。
目を開くと大空が広がっていた。
…綺麗だ。
「きゅいっ!」
!?!?!?
ゴンッ。
「きゅっ!?」
いったぁ。
額を摩りながら先程俺の視界を覆っていた白い物体に視線をむける。
目の前で器用に顔を抑えているのは….あざらしかな?
…あざらしかな? じゃねぇよ! なんであざらしがこんなとこにいるんだ!
そう思い立ちあがろうとする。
ドプン。
「おおおおお!?」
水!? 水の中!? 死ぬ!
「ぶはっ! はぁはぁ…。なんなんだ…」
「きゅい?」
待て待て。落ち着け俺。目の前には小首を傾げる真っ白な小さいあざらし。…本当にあざらしか? ぬいぐるみじゃなく。
「きゅい〜?」
ペシペシ。
手? 鰭? で頬を叩いてくるあざらし。意外とふさふさだな…ってそうじゃない!
本物っぽいな…。
そしてあざらしがいる、白い…地面。雪だな。
上は大空。後ろはどこまでも続くかと思うような真っ白い地平線。そして俺がいるのは水…いや、海水か…。
俺が立ちあがろうとした地面…氷…に穴が空いて落ちたのだろう。立つだけで割れる氷って、薄すぎじゃね?
そして、そして…先程からものすっごい違和感を訴えている下半身。
動かしてみる。……動く。じゃあ違和感の正体はなんなのか。検討はついている。たが直視したくない。そしてあざらしが何してるの? って目で見てくる。
「ふっ…ふっっっざけんなあ!!!」
空に向かって神に届け。そう願いを込めこれでもかと言うほど叫ぶ。
「きゅっ!? きゅぃ!?」
くそっ。なにが楽しめだ! 文化を広めてくれだ…!
そこのあざらし! 怯えてんじゃねぇ!
「下半身魚じゃねーか! 人魚だわ! どこで文化広めんだよ! アトランティスか!? アトランティスでもあんのか!?」
「きゅ、きゅい?」
「アトランティスってなにかって!? しらねぇよ!」
「きゅ…きゅ?」
「大丈夫じゃねーよ! つかなんで何言ってるかわかんだよ! ………はぁ。疲れた」
どっこいしょ。
とりあえず陸に上がる。
「意味がわからなすぎてもうやだ…。どこだよここ…。お前はなんなんだよ…」
「きゅ! きゅいきゅい! きゅっきゅ!」
「あー? 手紙? それと名前?」
「きゅい!」
「本当なんで言ってることがわかんだ。しかもちゃんと言語としてわかるんじゃない…」
感覚? 飼っていたペットがご飯を要求してるのか散歩に行きたがってるのかなんとなくわかる…ってよりは明確にわかる。意味わからん。
「で。手紙ってなんだ?」
「きゅいっ」
短い鰭…手でいいかもう。手で俺の横を指すあざらし。
「これ、か」
封筒に入っており、取り出すと何枚か入っていたので広げてみると綺麗な字が書かれていた。
『アンケート結果から海人族に転生させました。そこにいるあざらしは君のパートナーです。仲良くしてあげてください。なんて適当に言ったらヒロミさんは「意味わからねぇよ!」と言うでしょう。二十点です。仕方ないので詳細も書くので是非読んでください』
「あっの、阿保神!」
「きゅいっ!」
……手紙を投げ捨てようとしたらあざらしに捨てちゃダメ!って言われる俺。そして言われてもいないのにそう言われたと理解する俺。頭おかしいのではないだろうか?
だが…。
「きゅい?」
目の前で小首を傾げる真っ白なあざらし。そっと触れてみると意外とふさふさだ。
「きゅい〜」
つぶらな瞳を細め嬉しそうにしやがって。可愛いじゃねぇか。体長は五十センチくらいか? 小さい。アザラシの子供か?
ああ…暖かいな…ってなんで俺寒さを感じないんだ。こんな雪と氷一面の場所、普通寒いだろ。
「きゅい?」
「あ、ああ。読むよ読む」
えーっと…。
『まずはステータスを見てもらった方が早いと思うので、ステータスと口にしてください。確認が終わったら次を読んでください』
一枚の紙にそれだけ書いてあった。
「………ステータス」
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⚫︎名 前【神通川 大海】
⚫︎種 族【海人族】
⚫︎性 別【男】
⚫︎年 齢【30歳(0歳)】
⚫︎犯罪歴【なし】
⚫︎位 階【▼】
⚫︎能力値【▼】
⚫︎能 力【▼】
⚫︎魔 法【▼】
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目の前に何か出てきた。
………『0歳』だとよ。『30歳』が本来の年齢で、転生したからこの世界じゃ『0歳』ってことか?
それと…位階? 能力値に能力…魔法…。項目多いな。
そして逆三角に触れてみると表示が増えた。
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⚫︎名 前【神通川 大海】
⚫︎種 族【海人族】
⚫︎性 別【男】
⚫︎年 齢【30歳(0歳)】
⚫︎犯罪歴【なし】
⚫︎位 階
【中位第5位】
⚫︎能力値
【魔力:S】【体力:B】【筋力:B】
【耐久力:C】【免疫力:C】【敏捷力:B】
⚫︎能 力
【水中呼吸】【遊泳】【寒冷無効】【不老長寿】
【水圧無効】【全言語理解】【暗視】
⚫︎魔 法
【水魔法】【風魔法】【土魔法】【火魔法】
【木魔法】【氷魔法】【雷魔法】【光魔法】
【海魔法】【音魔法】【熱魔法】【空間魔法】
【生魔法】【契約魔法】【強化魔法】
【召喚魔法】【結界魔法】
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へぇ…。こうやって表示されるのか。
能力の下限と上限が分からないから強いのか分からないな。能力と魔法は多いのか…少ないのか。だが寒さを感じない理由はわかったな。そして【不老長寿】がある件。不老不死じゃないが…不老じゃんか。まあこれに関して特に注文付けなかったしいいか…。
手紙に視線を戻す。
『ちゃんと見ましたか? まず海人族はヒロミさんのような股下から尾鰭になっている人型、顔が魚の者。顔以外が全て魚類と同じ者など様々です。魚類だけでなくタコ型の海人族や海豹型の海人族もいます。
そして位階とはゲームでいうレベルの様なものです。下位、中位、上位に分かれており、十が最下位で一が最上位です。【下位第1位】になると進化し、中位へ至ります。また訓練したり能力や魔法の数などで位階が上がりますが進化しなければ中位、上位にはなりません。
ヒロミさんは元から適性のある魔法が多かったのと、私がプレゼントした物、海人族としての適性と要素が重なり魔法がその数になりました。そして肉体を私が作り変えたことで、さらに能力値が上がったので現時点で位階が【中位第5位】となっています。本来生まれたばかりだと大抵の種族は【下位第10位】からですので咽び泣いて感謝してください』
「チッ」
「きゅっ!?」
「あ…お前に対して苛立ってるわけじゃないから気にするな?」
「きゅぅ…」
咽び泣くかっ!
…魔法、か。本来適性のある魔法はもっと少ない、ってことだろうか。
『今舌打ちしました? 駄目ですよ。咽び泣いてください。……というのは冗談です。一割程』
「はあ…」
『ため息早くありませんよ?』
「はいはい。神様はなんでもお見通しですね」
紙を捲る。
『本来…進化していないヒロミさんはどう頑張っても下位なのですが、私が肉体を作ったせいで本来の位階とは異なっています。これがこの先どのように作用するかは私にも分からないので訓練し、進化した時のお楽しみにしてください』
「おい。どうなんだよ。お楽しみに、なんて言うんだから絶対わかってるだろ」
そしてまた紙を捲る。
『説明は以上です。では楽しい異世界ライフを』




