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「きゅぃ…?」
「お。ラピス起きたか?」
「きゅい! …きゅ?」
ハゼさんはどこ? と、キョロキョロと見回すラピス。
「ハゼさんはさっきのとこにいるぞ。俺らは今からギルドだ」
「きゅ〜。…きゅっきゅい!?」
そうなんだ〜。…え、人がたくさんいる!? 的な感じでハゼさんがいないことを納得したのも一瞬、すぐさま驚いてキョロキョロするラピス。
あーもー可愛いな…。ラピスが可愛いからか周りの人がチラチラとこちらを見てくる。
うちのラピス可愛いだろう。見るなら見物料を寄越せと言いたいな。
「きゅ…?」
「お前が可愛いから見てるだけだと思うぞ? 心配しなくてもいい」
「きゅ…きゅきゅっ」
えへへ〜って感じで喜んでいるのが伝わって来た。
それは注目されるのが嬉しかったのか、俺に可愛いと言われたからか…前者だろうな。
そうこうしているうちに再びギルドへ辿り着いた。
先程来てからそれなりの時間は経っているが受付にいる顔触れは同じだ。
気持ち的には女性のところに行きたいが…ランクⅤのサメを売るなら少しでも事情を知ってる嫌味野郎のところがいいだろうとリアスの下向かう。
「どうされました? ハゼさんのところに行ったのでは? というかその抱えている物は…」
「行ったぞ。んで、ギルドに用があって戻ってきたんだ。それとこいつはラピスだ。よろしくな」
「きゅい!」
「はぁ…契約魔物ですか…。それで、用とは? 依頼ですか? もうすぐ光が落ちますし、オススメはしませんが。まあハゼさんが見込んだ方でしたら問題はないかもしれませんがね」
…鼻にかかる言い方だな。
まあいい。
「この街に来るまでに倒した魔物を売りたいんだ。後は売った金で契約魔物の認可証がほしい。後はオススメの宿を教えてもらえないか?」
「認可証は銀貨五枚です。何を売却するかは知りませんが足りますか? それともハゼさんからまた借りたのですか?」
「ハゼさんにはそれなりの値段で売れるって言われているから大丈夫だ」
というか銀貨五枚なのか。五千円? 高い…ってほどでもないか。
「ではこのトレイに出してください」
そう言ってA4用紙くらいのトレイを取り出すリアス。
「いや、それには入らないぞ。もっと大きい」
「もしかしてその袋は拡張鞄ですか…?」
拡張鞄?
「拡張鞄が何かは知らないが…袋の大きさの何倍も物が入る奴だな」
「……わかりました。それで魔物はなんですか?」
「サメの魔物だ。ハゼさんは人喰いサメと言っていたが」
「まさか…グラースルカン…?」
グラースルカン?
「正式名はハゼさんも覚えてなかったから知らないが…見てもらえるか?」
「…わかりました。では解体部屋で出してもらいたいのでついて来てください」
カウンターの一部を開閉して内部に案内される。扉をくぐり廊下を歩く。そして一つの部屋に入るとそこは体育館ほどの広さだった。
…正面からしか見てなかったから気づかなかったが、このギルドかなりデカイんだな。
中には魚が吊るされていたり、大きな魚を解体している人がいた。
そして何も置いていない一角に連れてこられ、そこに出すように言われたので一匹分取り出した。もちろん頭もだ。ぶつ切りにした胴体だけじゃ他の魚と思われるかもしれないからな。
「本当にグラースルカンを…試験をする必要がありますが、合格すればランクⅢになれる物がありますが受験しますか? 私の権限ではその試験にしか推薦させてあげられませんが」
…嫌味が…ない?
「い、いや。別に大丈夫だ。どうしてもランクを上げたいわけじゃないし、コツコツやるよ」
「そうですか…」
リアスは顎に手を当てなにやら思案している。
ランクを上げないと素材を買い取って貰えないというなら試験を受けるが、そういうわけでもなさそうだし、ゆっくりとやるつもりだ。
それに推薦を受けて先輩冒険者に目をつけられたりしたら嫌だしな。どこの世界でも新人が先輩より高い評価を受けると大なり小なり嫉妬を受けるだろうし。
「査定させますので一度戻りましょうか」
「あ。待ってくれ。後、十五匹分あるんだが…全部買い取って貰えないか?」
「…………」
「リアス? 無理か?」
「…いえ。こちらに出していただいて結構です」
眉間をほぐしながらそう言うリアス。ランクⅠがランクⅤの魔物を持って来たのが問題なのだろうか? それとも解体が面倒…? リアスが解体するわけじゃなさそうだし、それは違うか。
「さて…それでは認可証でしたね。売却分から引けばいいのですね?」
先程のカウンターに戻ってくるとすぐさま認可証の話になった。
「ああ。それで頼む。足りるだろ?」
「ええ。充分だと思いますよ」
無理矢理皮剥いだりぶつ切りにしたからなぁ…認可証分は問題なくても値段下がるかも。解体委託できるなら次から丸々持って来るか。
食料にするつもりもあって初めの一匹は解体したけど、一匹で食料としては充分過ぎるほどだし、後から出てきた十五匹は頭落とす必要なかったな。まあ今更だが。
「それでは認可証を作って来ますので適当に過ごして構いません。ただギルド内にいてください」
「はいよ」
リアスは踵を返し、カウンターの後ろの扉に入っていった。
「じゃあ掲示板でも見てようかね」
ちらほらとこちらを伺っている人…魚人? はいるが、絡んでくることはなかった。
ラピスは武装した人が気になるのか落ち着きがないので背中をさすってやる。
なんか皆俺のことを見ると場所を開けてくれたのですんなりと掲示板に辿り着いた。…何故だろうか? ラピスの愛らしさ効果?
「えーっと…」
魔導椅子に座っているから上の方に貼ってある紙が見にくいのは仕方ないな。
色々な色の紙がある。それに依頼もたくさんあるな。
…うん。文字が読めないのを忘れていました。
しばらくぼんやりと掲示板を眺めているとリアスに声をかけられたのでカウンターに行く。
「…文字読めないんですよね?」
「残念なことに、読めないな」
「…掲示板の前でなにをしていらしたので?」
「掲示板を見ていたんだが?」
「読めないのに?」
「読めなくても、だな」
読めないことを忘れていただけだがな!
「……絵本でも持ってきてあげましょうか?」
む? これは嫌味か? ただの善意か? 表情を見ると…うん。どちらでもなく憐れみだなこれは。
「頼む」
だが、この世界の絵本。読んでみたい。
「…わかりました。明日以降来られた時にお渡しします」
「ありがとう」




