表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/71

【⑤ スクラップ山脈】

 

 


 急ぐ必要がある。あんまり、時間は掛けられねえ。

 だからこそ、スクラップ山脈を選んだ訳だけど。



「うーわ、めっちゃ湧いてるじゃんすかー」



 スクラップ山脈…………アキハバラの町で出た廃材を、投棄し続けた結果、生まれちまったダンジョンです。そこまで危険なダンジョンじゃないけれど、モンスターはいる。

 それが、今、僕の目の前で群れている奴ら。アイ族の暴走個体やら、ドローン。

 あと、戦車。馬鹿か。

 相手に出来る訳がねえでしょうが。そこまで危険じゃねえとか、寝言ほざいてんじゃねえぞボケェ。

 頭かち割んぞ。という事で、スニーキングです。

 殲滅させてもいいのですが、今回は、戦闘を目的としてねえですからね。スクラップ山脈は、棄てられた廃材が積み重なり、それは時に、身を隠すのに役立つ。

 戦車が走る大通りを避けて、僕は小路へ。鉄錆びとカビの臭いが鼻腔をつく。

 あとは、ドラム缶から漏れ出たオイルがぬるぬると、通路を濡らしてた。走れねえなこりゃ。

 暴走個体に追われてたら詰んでた。詰みポイント多いよね、人生。

 ああ、くそ。鼻が曲がりそうだ。

 くせぇ。ガスマスク持ってくりゃよかったよ。


 道を曲がり、先を急ぐ。


 段差を登り、上へ上へ。時にダクトの上を通り、邪魔なドローンをテーザーガンで排除。

 体感で5~6メートル下の眼下では、我関せずといった様子で、暴走個体らしきアイ族が、どこからか廃材を持ってきて、奥へと消えて行った。暴走個体の中には、意味不明、理解不能な行動を繰り返す個体もいる。

 ああいう、暴走個体が、このダンジョンの地形を複雑化させてんのかも知れませんね。入口に溜まった廃材を、ダンジョンの奥へ運び積み上げて。

 昔の人類も、権力者の墓を作る時にこんな感じだったのかな、と、適当に考える。まあ、こういう遊び場があったから、幼少期から、身体の動かし方を学ぶ事に事欠かなかった。

 お陰で、立体的な運動はお手の物。ロッククライミングの要領で、僕は凹凸だらけの壁を登る。

 ロッククライミングやった事ねえですけど。



「…………!」


「!! ッ!」



 ────? 人の声?


 上の方から、誰かの叫び声がする。壁から突き出す鉄パイプを握る手に、震動を感じた。

 誰かが戦ってんのか。この上で。



「………………」



 うーむ。どーすっかねぇ。

 明らかなトラブルじゃんすか。目に見えてる地雷なら、避けるのが定石。

 …………なんだけどな。いや、これ、マジにどーしたもんか。

 一応、何が起きてんのか、目視確認くらいはしておくか。そのくらいは、やった方がいいのかねぇ。

 僕は、弾みを付けて迂回していく。このまま、まっすぐ進むと、やり合ってる場所に出会しちまいますから。



「……ちっ」



 戦闘音が聴こえてくる方向が、どうにも、目的の場所に近い。僕は舌打ちを隠せなかった。

 目的地の手前には、十分に戦闘が出来る拓けた場所があるんだ。おそらくは、そこで何者かが戦っている。

 僕はスクラップ山脈の空中庭園を目指していた。下層部分は、不衛生な場所だけど、上へ登ると植物が自生してるんよね。

 空中庭園ってエリアは、中層部分を抜けた先にある。花畑…………そこが目的地。

 風に運ばれた土と種。あとたまに、雨が降るので、それで芽吹いた。

 らしい。らしいって話。

 アイ族の連中に訊いても、あいつらそういうのに、興味ねえのよね。だから、空中庭園の詳しい成り立ちとか、なんも聞けねえのですよ。

 困ったもんです。アイ族の奴等にも。

 いい奴等だけどね。アイ族。

 僕の事を大事にしてくれた。してくれたのだと思う。

 尤も、僕がアイ族の創造主にそっくりだからかも知れねえですけどね。旧人類を求めてんのかもです。



「……心なんてわかんねえ、よな」



 わからねえ。目に見えねえから。

 目に見えてるもんを、全部分かったつもりになるのもよくねえ。哲学だわ。

 やっべ。今、超哲学してる。

 哲学者とか超頭よさそう。賢い。



「────くそっ! こんな低ランクのダンジョンに、なんでこんな危険な暴走個体が、群れをなしておるんじゃ!」


「とにかく逃げるよっ! この数は、今のあたしらじゃ敵わない」



 おっと。浸ってると、声がよく聴こえる距離まで近付いたか。

 壁を一気に登りきる。続けて貯水タンクの上へ。

 眼下には、瓦礫を踏みならした様な広いスペース。そこで、暴走個体の群れに囲まれた、2人組の冒険者と思わしき…………。



「────女!?」



 


 

 

次回、更新予定日は1月4日。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ