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【② ダキア=グスタフ・ロンメダール・ジブラルタル】

 

 ダキアという人物は、僕の養父だ。僕をダンジョンで拾い、育ててくれた。

 だから、僕と種族も違う。生物学上、あの人をなんと呼ぶべきか悩む。

 男とも女とも……ううむ。人工知能っつーのが入ってっからコミュニケーションはできる。

 本人は『漢』を名乗ってた。なんだよ、漢って。

 鉄分多めな漢だな。


 …………たぶん、拾った子供の僕が男だったから、漢キャラを演じたんだろう。知らんけど。


 アイ族のダキアは、『はぐれ個体』と呼ばれてたらしい。他のアイ族から離れ、人類と交流を持ち、ダンジョンで資源を集め、自らをメンテナンスしている。

 死という概念からは、程遠い種族だ。アイ族なんてのは。

 パーツを替えるだけで、生き続けているのだから。バックアップさえ残していれば、ボディがぶち壊れちゃっても、ボディの交換だけで復活しやがるのです。

 そのアイ族の中でも、ダキアの生き方は、死んだ時の保険が利かねえのですよね。

 だから、まあ。僕はきっと、そういった要素を差し引いたとしても、ダキアよりも早く、くたばるのでしょうね。


 生物学上、アイ族は生物じゃねえのです。有機物じゃねえ、無機物。

 だけども、リアクションは多岐に渡る。表情は変わらねえくせに、ですよ。

 アイ族ってのは…………────お。

 ダキアだ。



「ただいま、おとん」



 アイ族の町【アキハバラ】。はぐれ個体として、ダンジョンを転々としてきたダキアは、僕を育てる為に、同族を頼った。

 僕の面倒を見る助力を得て、かつ、ここでなら、バックアップが可能。ダキアは、バックアップデータバンクを破壊されない限りは、復活が可能になったのです。

 ありがてぇ話ですよ。こいつは。

 町の出入口で、僕の帰りを待っていたダキアは、絶対にすでに僕の存在に気付いていた筈なのに、僕に声を掛けられてから、たった今気付きましたよみてぇな素振りでこっちを向く。あざといってレベルですらねえぞそれ。



『ヌ……ハラバ、カエッテ、キタカ』



 ゆっくり音声やめろ。ぶち壊すぞ。

 養父ダキアは、ドラム缶ボディを固定したまま、豆腐みてーな頭部をくるりと回す。背中の20㎜戦車砲がなんともまあ。


 僕の帰りが遅いと、それ担いだままスクランブル交差点の【ゴブリン王国】やシブヤ駅の【大迷宮】まで、僕を探しに行くつもりだったのだろう。馬鹿なのかなこの人工知能。

 戦争じゃねえか。装備が。

 過保護。度を越して過保護なんよ。

 僕のメガロ・シャークなんて、かわいいもんだ。


 人間かよ。つってね。

 僕はあんまり、人間の事を知らねえですけど。でも、アキハバラの町にも犬や猫はいやがります。

 かわいい。挙動がかわいい。

 小動物を飼ってるアイ族は、珍しくねえ。かわいいってのが、ちゃんとわかんだよな。


 ダキアや他のアイ族も、喜怒哀楽の機微を備えてるし、察したりもしやがりますから、なんかもう、あんま、機械って感じがしやがりません。ゆっくり音声だけどな。



「ほい」



 僕は、集めた電化製品の残骸を、ダキアへと差し出す。錆びた棒状の何かだったり、どの部分から欠けたのかもわかんない金属片であったりしやがりますが。

 たまーに、ダンジョンに製作図面が残ってたりして、それは特に金になります。ライフイズマネーやで。



『20㎏……ノルマ、タッセイ、ダナ』



 渡したスクラップやジャンク品の重さを、瞬時に報せてくれる。機械ってすげえ。

 渡したパーツの幾つかは、ダンジョンで壊れたままのアイ族の物だったりもする。使える物は再利用。

 限りある資源を大切に。ま、本人もちゃんとリスポーン出来てんでしょ。

 たぶん。


 死に戻りは、他の種族には無い、アイ族だけの強みよな。中には、暴走して襲ってくるアイ族もいるから厄介だけど。

 なんにせよ、地上を最も開拓したのはアイ族だ。世界が核の炎に包まれた後の環境でも、放射能に耐えるボディってのが強いです。

 旧人類の功績とも云えるか。核ミサイル射った戦犯も旧人類だけど。

 僕の先祖あかんよな。

 

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