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【開幕】

まずはあらすじです。

 


 


 半壊した高層マンション。身を隠すだけなら、辛うじて目的を果たせるといった一室にて、鉄の集合体と柔らかい生き物が、焚き火を囲んでいた。


 今から約1000年前、世界の文明が滅んだのだと、鉄の集合体が、目の前の柔らかい生き物に話す。柔らかい生き物は、言葉を発する様になり、様々な事に興味を持ち、それを親に訊ねる年頃だ。



「なんでほろんだの?」



 柔らかい生き物が、鉄の集合体をべたべたと触りながら質問を続ける。外の吹雪はまだ止みそうにない。

 ならば、暇潰しがてら、教育をかねて柔らかな生き物に昔話を語るのも悪くはないように、鉄の集合体には思えてきた。


 鉄の集合体が、昔話を合成音声で語り出す…………世界が滅んだ理由は、世界各地に出現したダンジョンの一斉氾濫。

 突如として現れた大小10000以上のダンジョンから、溢れ出すのは、幻想世界の化物共による百鬼夜行。勿論、人類は抵抗した。

 あらゆる武器を、あらゆる知恵を、あらゆる手段を尽くして。銃火器は勿論、毒ガスやミサイルやウィルス兵器すらも勘定に。

 人類は、抗った。どこまでも。

 死力を尽くし。種の存続を懸けて。

 何千万という死者が出たが、それでも決着が着かず、犠牲者の数は、何億という数にまで膨れ上がった。


 オーク率いるゴブリンの大群や、海域を占有するレヴィアタン。そして、天空の覇王ドラゴン。

 そして、死者は時に起き上がる。ゾンビとして、或いは、スケルトンとして。

 ダンジョンから飛び出す怪物に、日々蹂躙されていく文明。それが、世界遺産である事なんて、さして珍しくもない。


 抗って、戦って、殺し合い、憎しみ合い。慈しむ事もなく。

 そんな、殺し合いの果て。人類は、ついに核ミサイルをダンジョンに撃ち込む。

 もっと、幾らでも選択肢も手段も他にあったにも関わらず。殺意の炎は、地表を舐め尽くし、焼き払い、命を焦がした。

 結果から云えば、人類はついぞ、ダンジョンを根絶やしには出来なかったのである。モンスターの生命力は桁違いであり、命尽きる前に人類へと牙を剥く。

 放射能を撒き散らしながら。それが、決定的であった。

 核ミサイルにより、原子力発電所が破壊された事さえあったのだ。まさに、最悪中の最悪。

 地球は、人が住めなくなるレベルで汚染されるまで、然程、時間を必要としなかったのである。


 次元を跨いだ、異世界との戦争。

 やがて、第三次世界大戦と呼ばれたこの戦争は、人類の敗北という形で決着した。


 村が滅び、町が滅び、都市が滅び、国が滅ぶ。人が、民族が、部族が消えていく。

 文明の崩壊である。


 されど、人類が絶滅したわけではない。人類は、耐えて、逃げて、隠れ、潜み、忍ぶ。


 ダンジョンや放射能から逃れ、海へ、地中へ、空へ。逃げたのだ。

 残った文明を駆使して。途中で運悪くモンスターに見付かり喰われる者もいたが、逃げ延びた人類は、モンスターに怯えて隠れ潜む。

 いつか、再び人類が地上の王者として返り咲くと夢見て。


 やがて、人類の中に新たな世代が誕生した。耳が長く、長命であり、後に魔法と呼ぶようになった不思議な術を操る。

 いわゆる、エルフ族。


 一つの種族が生まれると、後はどんどん旧世代から新たな種族が生まれるようになった。

 山岳地帯で生き延びていた旧世代からは、短身ながら強靭な肉体を誇るドワーフ族が生まれ、ドワーフ族からさらに新たな種族であり、最もバリエーションに富み、獣の身体的特徴を持つライカン族が誕生する。


 魔法という新技術の中でも、攻撃魔法という分野に対して、最も高い適性を示したのは、時に悪魔の如き姿を見せる魔族である。新人類のエルフ族に近い容姿ながら、その身体能力は、ライカン族に並び、種としての基準値ならば、全種族最強とも評価されている種族だ。


 逆に、魔法に対して最も高い耐性を持っていたのは、天使が如き容姿のアンヘル族である。彼等は、宇宙ステーションへと逃れた人類が進化した種族。


 ドワーフ並の身長ながら、か弱き強欲者のポックル族は、何故か幸運に愛された一族である。別名、小人族とも。


 そして、新人類ではないが、一風変わった生命体も現れた。精霊である。

 彼等は、言葉を持たない。血肉と呼べるものもない。

 概念に近い生命。物質と概念の狭間の存在である。


 ────旧世代の人類だけが、新技術である魔法を全く扱えない。今の新世代の人類にとっては、過去に過ちを犯した罪の象徴。

 それが、旧世代の人類であった。土地によっては、迫害どころか、殺される可能性すらある。

 ただでさえ、旧世代の人類が生まれる割合は小さくなっていくのだ。旧世代の人類は、絶滅危惧種となっていた。

 そして、この厳しい状況下で、旧世代の絶滅を止める術が、人類には残されていない。滅び、歴史からやがて姿を消す種族なのだろう。


 時に、人狩りが行われ、旧世代の人類は、鑑賞、或いは、愛玩用として、しばしば重宝された。その頃には、旧世代は稀少種と呼ばれるようになっていたが、それは些細な事。


 ダンジョンが地上に出現してから、数百年後には、旧世代…………稀少種は絶滅し、幻の存在となった。稀少種の絶滅から、さらに数百年後。

 或いは、地球にダンジョンが出現してから1000年後。世界に再び、稀少種の赤子が生まれたのであった。

 親は、幾つかに枝分かれしていった新世代の中でも、最後の種族とも呼ばれる【混血種族】。あらゆる種族……一説には、全種族の血が流れているとさえ云われている。


 その混血種族から、実に数百年ぶりに、稀少種が生まれたのであった。旧時代の文明が失われたこの世界で、彼はこう呼ばれている。


 旧人類、と。



『ソレガ、オマエ、ダ』



 鉄の集合体の人形が、柔らかな生き物を真っ直ぐと見つめた。長い耳も獣の肉体も持たぬ人間の3歳児。



「ぼくみたいなのほかにはいないの?」


『ソウダ』


「ふーん」



 


 旧人類の子供が、宙を舞う火花に見とれている様子を見ながら、鉄で出来た機械人形は、この子を拾った日の記録を頭部内に再生させた。


 

よろしくおねがいします。

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