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不条識な狼の理87

♗87


 塔の中に入ると、松明をつけようとした手が止まった。

 壁が明るいのだ。

 というか、一定距離感で松明が壁に取り付けられ、その松明はどんな仕掛けかはわからないが、消える気配がない。


「はは、最初の迷路以来だな。この不思議な消えない松明も。」


 ヒカミが壁の松明を覗きながら言う。ああそうか、既視感があったのはそういう事か。


「あら、じゃあ、ここがラストダンジョンってのは間違いないのね。」


 ハクスイがなんでそんなこと言うんだろうって思ったけど、そうだ、ハクスイには迷路であったことの記憶がないのだ。


「ダンジョンっていうと、ゲームっぽいけどさ、階段普通だな。」


 ヒカミが妙なことを言った。

 階段普通っても、目の前には、人一人登れるぐらいの大きさの螺旋階段があるだけで、それはそれは普通の階段だ。

 上のフロアまでもずっと吹き抜けっぽい見た目なだけで、どこまで続くかわからない階段があるのと、周りが石壁な何が変なんだろう。


「あれ?私ってゲームとかやる子だったの?その辺の知識は、記憶じゃなくて知識として、判断されるから、消されない記憶なのね。」


 ハクスイも何か理解してるみたい。


「サクはわかんねえよな。うーん。何つーかさ。

 こんな風にダンジョンが出てくるゲームをやると、大体のゲームで階段の間取りが変なんだよ。だから、おれみたいな、道とか覚えながら、頭の中に地図を書きながらプレイするタイプの人間は、攻略にすごく時間がかかるんだ。頭の中に無意識に書いた地図のせいで、かえって迷子になるからさ。」


 へえ。そうなんだ。


「レトロゲームの中でも、あのゾンビを倒すゲームだけは、間取りしっかりしてない?」

「そう。わかる?あれさ、現行シリーズだと、リアルすぎて怖いって理由で、未だに、令和平成時代のリリース品の方がウケてるじゃん。あのゲームだけは、一度、全マップの模型を作ってからCG書き出したんじゃないかって、ぐらいに間取りがしっかりしてるんだよ。って、君もさ。記憶喪失の割には、そこは記憶じゃなくて知識扱いなんだ。」

「ええそうよ。嘗て好きだった人のことは忘れてるのに、レア武器を手に入れるために、ステージを何回も周回しないといけないことも知識扱いで知ってるわ。」

「その知識おれのお陰だぜ。前おれ、どうしてもデカいゾンビ倒せなくて、君と協力プレイで戦ったことあるんだよ。結局朝まで掛かって、三限目から登校したことがあったよ。その記憶は失ってるのに、結構どうでも良い知識はちゃんと残ってるんだもんな。無駄な仕様だなソレ。」


 そんなことを言いながら、ヒカミは、周りを見渡しながら、階段を登り始める。

 どうやら罠は無いみたいだ。

 カタンカタンと階段を登る音が反響する。

 あたしも階段を登り始めて、上を見上げると、五階分ぐらい、上にフロアが見えたけど、目を凝らすとその上もずっと階段は続いているようだった。

 一気に、上のフロアまで登ると、そこには何も無い、石床と松明がつけられた壁があるだけだった。



「何も無いから、とりあえず登るしか無いみたいね。」

「まあバベルの塔っていうぐらいだからな。天まで届く塔って話だし。」

「本当に天までこの螺旋階段で天まで登るならトチ狂ってるわ。」

『うえええ。あたしもう足痛いのに、筋肉痛確定じゃん。』


 カタンカタンと階段を登り続ける。

 軽く拷問だと思う。なんかもう、足上がらなくなってきた。




「ねえ、向こうの世界にいた私ってどのくらい有名に芸能活動してたの?」


 ハクスイが淡々と言った。機嫌が悪いからとかじゃなくて、なんかこう、階段で疲れすぎて、体力を最低限しか使わない会話というか、声に色をつけないトーンというか。


「うーん。ローカルアイドルぐらいな感じだぜ。歩も出演してた、最強の小学生みたいな番組に出たのがキッカケで、CMとかモデルとかちょこちょこオファーあったみたいで。ただ、あのお茶のCMで日本刀持って、竹切る役があったんだけど、あれだけ全国規模で流れたCMだったんだよ。あれ以来一部からカルト的な人気を持っていたことは否定しねえよ。」

「そう。そのコミュニティってまだあるのかしら?」

「多分、あるんじゃねえの?現に、キアラさんは君のファンって言ってたわけだし。」

「じゃあ、私が元の世界に戻れたら、今ここで過ごした一年間と、ヒカミとサクと元の世界で持っていた記憶も戻ってくるってことよね。

 そうしたら、私はとりあえず、亜美さんを探しに行くわ。」


 そうかキアラは、ここで過ごした記憶を持たないで、戻ることになるのか。


「多分。彼女は、元の世界ではシバカワキナミさんと不健全な関係なままだと思うのよね。そこをけじめ付けさせるのと。もし招待状が届いて、またこの世界に巻き込まれる事があったら、次は迷わず私を招待してって伝えたいの。

 今度こそ。護りたい。」


「まあオタクが集まるコミュニティに行けば一発で見つかるんじゃねぇの?

 っても、君のファンの集まりなのに、君が現れたら、現場は騒然とするだろうけどな。」


 それはそれは面白いから見てみたいとは思うけど。

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