不条識な狼の理80
♗80
『ってか。ヒカミよく気付いたね。』
あたしたちが泊まる、安宿へ帰る途中にあたしは言う。
「何がだ?」
『だってハクスイ。あんだけ本気で刀振るったのに、キアラ無事だったじゃん。愛してない。目の前でああやって実践して見せてさ。それなのに、まだあの二人、こう両思いっていうか、そういう空気なの。よく見抜いたね。
あたしはの、芋虫の力、シキの件もあったから絶対的なものだろうしって思ってから、本当に二人はもう破局を迎えたのかと思ってたよ。』
あれを目の当たりにしておきながらも二人の関係性が不変であると見抜いたのはヒカミ自身が最近変わりつつあるからの発想だろうか。
「あーそんなの簡単だろ。ハクスイの首に新しい傷跡あったろ。」
『傷跡?あの黄色と紫の?』
ヒョウ柄のようなあれ。
「あれ、噛み跡だろ。あんな位置に自分でつけれるはずない。どう考えても、キアラがハクスイにつけたんだろう。」
『うええ。なんでそんな痛そうなことするの?』
「さあ。世の中にはそういう愛の形もあるんだよ。」
そうなのか。そんな傷つける事も愛なのか。というか、ヒカミ。
『ヒカミはなんであの痣が噛み跡だって知ってるの?』
普通知らなくない?そんなの?
「…………本で読んだんだ。」
『はいダウト!』
本当にわかりやすいよね。絶対浮気とか出来ないタイプじゃん。耳真っ赤だよ。
「いや、映画で見たから。その……」
『もういいよ。ヒカミはその手の嘘つけないじゃん。やっぱ右キャラじゃんドエムじゃん。』
「ドエムじゃねえって、そのほら。おれ、首絞められるの本当に怖いから、だったら痛いほうがマシって。」
『だから、それがドエム。めっちゃ墓穴掘ってる。今のあたしが鎌かけただけ。だって、今の話、おれが以前付き合ってる人に噛み跡つけたとか言えば、左にクラスアップだったのに。』
「うあああ、そうだ。なんたる墓穴を。もうあれだ。もうだめだ。誰か、おれに残りの土をかけて埋めてくれ。」
ヒカミは、カラクリ村の公演で毎週週末に最前のチケット取ってくる七つも年上のお姉さんと交際していたらしい。まあ、お姉さんの海外転勤を機に別れたらしいが、ヒカミはまだ未練があるそう。
とりあえず、あたしはその話を聞いて、元の世界に戻ったら絶対彼氏作ると心に誓った。




