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不条識な狼の理78

♗78


「そんなわけでですね。一年と一ヶ月前のあの迷路で最初にわたしとシキが逸れた時点で、シキはもう既にこの自ら生み出した呪いの卵を佐竹に埋められたんですよ。

 そして、その後シキによって刺されたわたしは、佐竹に卵を埋められ、治療を施された後にあの迷路で捨てられていた。それ見つけたのが京香さん。

 シキはやはり、自らの因果で生み出した呪いなだけあって比較的に早めに孵化したようですが、わたしのが孵化したのは、四日前の退院後です。

 なんなら、本来は孵化しなくても良かったみたいです。わたしの魂だとそこまで背負うほどの因果は無かったみたいなので。ただ、死神二場さんと契約してしまった、だいぶ苦しんで魂を渡すという契約が今回の孵化に繫がったみたいです。」


「なら、おれのせいかよ。」

「そうは言ってません。勘違いしないでください。わたしはあなた方のたった一ヶ月の友情を天秤にかけて、契約したのではなく、自分の魂の意味を知りたくて条理に身を委ねただけです。」

「なんだそれ?気を使って嫌われようとしてるのかと疑う程度には腹の立つ言い回しだな。」

「何てことない。事実をオブラートに包まずに言っただけですよ。」

「本気で好きだった、ハクスイに対しても、たった一ヶ月の友情って言えるの?」


 ハクスイを見ると、ハクスイは表情が見えないように下を向く。


「ええ。ただの、好きだった人ですよ。過去形です。女の恋愛は上書きは保存。男の恋愛はフォルダ別保存っていうじゃないですか。過去の恋愛引きずるタイプのヒカミさんにはわからない感覚かもしれないですが。」


 空気がピリつく。ヒカミとキアラの無駄な喧嘩腰な会話。といってもヒカミはいつもこんな感じの人だ。おかしいのはキアラの方なんだ。いや、体内を蟲が這いずり回ってる。おかしくなっても当然なのか。


「あのなあ。嘘ついてるやつに限って同じ嘘を何度も言うし、聞いてもない理論立てを喋ってくるんだよ。今のお前みてぇにな。」


 ああ。ヒカミの本気だ。君じゃなくてお前に変わってる。心なしか、目つきも悪い。

 ヒカミの今の言葉に引っかかるものがあったのかキアラの表情が一瞬だけ、嗤いを消し去った。




「やめとかない?その辺で。」


 止めに入ったのはハクスイだった。

 ハクスイは、オイルライターで煙草に火を灯し。煙草を咥えたまま、グラス二つにウイスキーを注ぎ、もうグラス二つにオレンジジュースを注ぐ。もちろん、あたしとヒカミにジュースの方をテーブルの上で配膳していく。


「多分。今その話しても不毛だと思うの。現に私が本気で首を落とそうとしたのに、殺せなかった。私はその器じゃない。それだけの話でしょ。そこにつっかかっていくのは、ヒカミがナンセンス。次の話にしましょう。」



 ハクスイが煙を吐き、店内は一気に煙たくなる。

 そんな中、キアラはグラスを煽り、あれほど注がれていたウイスキーを一気飲みしたのだ。さすがバーテン。まあ出会った時からお酒好きって言ってたもんね。

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