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不条識な狼の理56

♗56


 洞窟の中は水浸しかと思いきや、意外にも、地下鉄の通路のように、雨水は両サイドに流れ、肝心の通路は少し湿ってるだけで、濡れてはいなかった。

 外からの光が届かなくなりそうで、そろそろ、光源をと思ったタイミングで、洞窟の奥から光源がほんのりと見えた。




 その光を見て、歩が集合の合図を出して、小声で話し始める。


「多分見張りがいる。運が良ければ、あの見張りだけで、あとは道を下って、機械を壊すだけだ。」

「本当かよ。向こうサイドがまだ何人いるかわからんうちは、下手に体力消耗したくねえぞ。」

「ああ。もちろん派手に仕掛ないのは前提だ。温存はしておいた方が良い。

 ただ、入り口と出口が一方通行とわかってた上で、SOAが海岸洞窟の出口を張ってても人の出入りが全然無いんだ。まさか数ヶ月も洞窟に住んでるとは考えにくいだろう。」


「なるほど、出口に人が出てこないなら、入り口に戻れる範囲にしか人は配置されてないだろうという考えか。確かにこんな洞窟に長くは住みたくねえな。」


 ヒカミが納得するということは多分そうなんだろう。

 こういう時、一番頭の悪いあたしは聞く側、みんなに合わせる、みんなの指示を待つに限る。


「おい狼、アタイらの聴力だと、向こうが何人いるのか、分からないんだが、お前の聴力で、足音から割り出せねえか?」


 ほら。こういう感じに脳筋動物でもあたしでも出来る仕事をさ。

 あたしは、神経を集中させた。みんな気を使って、息を潜めてくれる。

 足音は……聞こえない。


『多分。直立してる。』

「おっけ。向こうが何人かわかるように喋らせれば良いんだろ。」


 と今のはヒカミ。


『どうやって?』

「なあサク。狼の声で鳴いてみてくれ。脅す感じじゃなくて、仲間を探すような声で。」


 え?


『ごめん。めっちゃ恥ずかしい。』

「っても、頑張れよ。君、ミノタウルス倒す時も。凄え鳴き声あげてたじゃんか。」

『それは……』


 無意識に出ちゃっただけだよ。

 しかし、みんながみんな期待の目あたしを見てくるのだ。


『ああもうわかったよ。絶対笑わないでね。』


 あたしはそう言って四つん這いになった。ブフっと、歩から鼻で笑う声が聞こえた。だから笑わないでって言ったじゃん。この体勢じゃないと出せないんだって。

 そして、鳴いた。鼻を鳴らすようにクゥーンと向こうの奴らに届くぐらいの大きな声で。あたしの心は泣いていた。




(おい。いまの何だ?)

(狼だろ。そんなビビるなよ。)

(多分入り口で雨宿りしてるだけだろ。気にすんな。)




『男三人の声。』

「でかした、サクよくやったぜ。」


 あたしの恥の上で得た情報だ。大事に使って欲しい。


「ねえサク。今の鳴き声っていつでも出せるの?」


 とハクスイ。


『まあ出せなくもないけど、何で?』

「そもそも、貴方って発情期とかこないの?動物って絶対雌から起こるでしょそれって。発情した雌の声聞いて、雄は発情するの。」


 全然言ってる事の意図が読めない。


「発情期はもっと色っぽい声になるの?」

『は?』

「今ので君が発情してどうすんだ。」


 待って、こんなシリアスな場面で、どうしてこの人はこんな下ネタを突っ込んでくるの。


「ったく。シラミズの記憶が無いってのは本当なのかよ。平常運転でシラミズだな。嘘なんじゃねえの。記憶無いのって。」


 歩、それはあたしも同じ事を思うよ。


「んで議題を戻すけど、男三人。なるべく殺さず、アタイたちもなるべく体力を温存する方法でどうやって制圧するよ?」

「さ。男相手なら、私に任せてもらおうか。」

 とここでエセ記憶喪失の疑い掛けられているハクスイが名乗り出る。

「おいおい。お前の色気で、誘惑するのか?三人も。一人なら気を逸らすぐらいできるかもしれねーけどよ。」

「あら。4Pね。望む所よ。女には穴三つあるからね。」

「どんなエロゲだよ。体力もたねえよ。」

「ま。冗談はさておいて。」


 そう言いながら、ハクスイは……

 下着を脱いだ。もう一度言う。下着を脱いだ。色っぽい、レースと紐だけで作られてたピンクのそれを指にひっかけてクルクルと回している。前言が、冗談はさておいて。であったが、今も尚ハクスイの冗談は続行され、指の上でピンクの脱ぎたてのパンティは回る。


「男を制圧するのに武器なんて、これで十分よ。」

『ハクスイさぁ。あたしみたく武器になる爪があるとかそんなんじゃないのに、こ武器はこれで十分って、どんな冗談?』

「サクはまだ、お子様だからわからないのよね。大真面目よ。この脱ぎたての紐パンが武器。」


 ハクスイは、そう言いながら、帯から刀を鞘ごと取り出して、ヒカミに預けた。


「本気で丸腰で挑むのか?」

「当然でしょ。折角の紐パンも、そんなおっかないもの腰からぶら下げてたら、効果が無くなっちゃう。」




 ハクスイは、一人で奥に進み始めた。


『え?いいの?ヒカミも歩もハクスイのアレにストップかけないの?』

「まあ、男の扱い方は、おれよりもあいつの方が全然わかってるだろうし。」

「アタイも、シラミズには、なるべく殺さないように制圧するってクギを刺してるんだ。お手並み拝見と行こう。」


 それで良いの?

 あたしの心配を他所に、ハクスイはある程度近付くと、岩陰に隠れながら、例の下着を見張り達の方へ投げたのだ。



(おい。何かあるぞ。)

(なんだこれは?)

(こっ、これは女性物の下着ではないか?)

 あたしにはその会話が聞こえた。

 すると、ハクスイは岩陰から一気に奴らの方へ飛び込んでいった。

 そして、光源がこっちに飛び込んできた。多分ハクスイが奴らの松明を投げたんだと思う。

 その松明を、ヒカミが拾い上げると、向こうから動揺した。うわああとかなんだとか男たちの悲鳴が聞こえる。

 そして、物音、地面に叩きつけるような鈍い音数回の後。




「お仕事カンリョー。もうみんな来ても良いよ。」


 ご機嫌なハクスイの声が聞こえる。本当になんとかなったようだ。下着のみで。

 松明を手にした、あたしたちは、ハクスイの待つ所へと歩いた。

 光源が近づき、まず最初に見えたのは、布袋だ。いや、光が完全に入ると見える。布袋ではなく、それは、着物で包み込んだ、男たちの頭で、首のあたりを帯で縛って三人分の視界を完全に着物と帯で遮っているのだ。

 そして、胸だけ、サラシを巻いて、あとは裸体の無駄にデカい長髪の女がそこに立っているのだ。

 もう一度言おう。胸にだけサラシを巻いて、あとは裸体だ。一番隠したいところであろう部分はちゃんと露出している。女のあたしですら、修学旅行の時じゃないと見る機会がない部分。世の中では、モザイク処理を施して流通する部分はちゃんと公開されている。


「ね。男なんてちょろいでしょ、仕上げるから、ちょっと手伝って。」


 なんつーか。


「すげえ絵面だなぁおい。」


 歩がそう言いながら、男たちの上に乗っかり、動きを抑えた。

 すると、ハクスイは、そのぼぼ全裸のまま、男たちのベルトを外す。

 ちょっと待って何するの?って不安になったが、ベルトで、男たちの手を後手に縛っただけであった、危ない危ない。別のこと考えるとこだった。

 流石に後手に縛られると、人間動けないもんなので、目隠しに使っていた着物と帯を外した。



「おい。アマ。こんなことしやがって、神の鉄槌が下るぞ。」

「あら、馬鹿なこと言わないで頂戴。あんたたちの神様への信仰は私の脱ぎたてパンティに及ばなかったクセに。」


 そうして、毒付いた、男の頭に向かって、ハクスイは綺麗に踵落としを決めたのだ。

 ちなみに、松明はヒカミが持ってるので、ここは明るいし、男の正面から綺麗に踵落としを決めた。多分。ベストアングルだったんだと思う。

 まともに脳天に踵落としを食らった男はそのまま綺麗に伸びた。余談だが、この男がハクスイの下着を握りめていた。




「すげえな。おれじゃ絶対出来なかったわ。」


 こんなゲスいやり方でも、正当に評価するあたりも流石ヒカミだと思う。


「でしょ。ここ、アニメだったら、神回って言われて、視聴率上がるとこね。まあ例に漏れず、謎の力が働いて、絶対に見えないアングルになるんだけどね。」


 ハクスイは言いながら、取り返した下着を履いて、やっと着物を着て、ヒカミに渡された、刀を装備し直した。




 我がパーティは、狼とグリフォンと、片腕サイボーグと、唯一のまともな人間であった奴は、見た目はまともでも、中身は一切まともじゃないのが改めて分かった。

 ってか。アリかよ。今の良かったの?台本これで良かったの?

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