不条識な狼の理53
♗53
とりあえず、朝ご飯を終え、テーブルを四人で囲み、食後のティータイムと作戦会議となった。
「取り敢えず。僕の方から妻からの作戦の伝達もあるのですが。まずは僕ら夫婦に関しての話をします。」
貴志さんは、マグカップの珈琲を飲みながら言った。さすが牛頭なだけあって、飲み辛そうである。
「こちらの世界線での一年三ヶ月前に、妻はこちらの世界に来て、あの迷路で皆様と出会ったと聞いております。シラミズさんに関しては偶々元の壱世界でも顔見知りだったようですが。
その一年三ヶ月前に妻に招待状を送ったのが僕です。
妻から聞いてると思いますが、僕を含め妻とその仲間達は壱世界では素行の悪い生き方をしていました。首都を南下した旧湘南に位置する、我がチーム。通称SOAショーナン・オブ・エンジェルの二大トップとして僕ら夫婦は殺人を含む犯罪にまで手を染めてきました。」
「殺人を含む犯罪も凄く気になるが、おれはそのショーナン・オブ・エンジェルが気になって仕方ない。なんだよ。エンジェル・オブ・ショーナンじゃねえのかよ。そうじゃなかったら、ショーナンズ・エンジェルとかさ。」
ヒカミの鋭いツッコミでこのオブの間違えに気付いたが、あたしは何も気にせず聞き流すとこだった。このチームが《天使のショーナン》であることに。
「そこは詰めないでくださいよ。若気の至りですよ。」
いや、若気の至りってか純粋にただのアホというか、気付かなかったあたしに言える権限はないけど。
「この世界での一日は、壱世界での一分です。
妻やあなた方約一年前にこちらの世界に来てますが、僕とその他SOAのメンバーは十年前にこちらの世界に来ました。」
堂々と、ショーナン・オブ・エンジェルの文法の話は打ち切られた。
「僕は、十年前。あの迷路の中で佐竹羨望のエーアイに捕らわれ、この身体になりました。ミノタウルスの試作品として。しかし洗脳までは上手くいかなかったようで、あの迷路の番人として、誰かを殺すこともなく。寧ろ身体能力が上がったせいで、当時の番人を楽々に倒して、仲間達と迷路を出ました。」
「ん。待てよ。ってことは、佐竹により、あの迷路の番人は定期的に造られているということか?」
「多分それで合っていると思います。妻も同じ事を言っていました。僕が当時戦った番人と、皆様が協力して倒した番人では圧倒的に皆様の方が難易度が高かったと思われます。十年かけて、少しずつ難易度と、迷路をクリアさせる人を調整しているという気がしてならないんですよ。」
「クリアさせる人の調整。」
ヒカミが何か考え事をしているように天井を仰ぐ。
「この世界は、本来は二場が、人間を概念へと進化させるための魂のデータ収集をする為の設備だ。魂に負荷をかけてクリアさせることが目的。
なのに、この世界は、繁栄している。通貨もある、宗教もある。クリアしないでこの世界を止まらせるのが目的のような。」
「そうです。ヒカミさん。そこなんですよ。妻も疑問の提言をしたのが、そこで妻には、緊急で〔塔下街〕に血清を届けるついでに、キアラさんとも会いに行っています。キアラさんなら、二場派に関しての考えでこの世界を見れるはずなので。ただ……」
ただ……?
「僕と妻は佐竹派なんですけどね。」
佐竹派……?
「なるほど。君ら夫婦を始め、ショーナン・オブ・エンジェルが中立派を守るのはそういうことか。」
ヒカミは何か掴んだようだった。
あたしは何一つ分からなかった。




