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不条識な狼の理42

♗42


『佐竹。何でアンタここにいるの?』


 あたしの疑問を余所佐竹は不敵に笑った。


 テンションは物凄く下がった。元々嫌なイメージの奴ってだけじゃなくて、あたしに酒を振舞ってきた人が、素敵なナンパじゃなかかったってだけで更に嫌悪感が上がる。

 つまり、元々嫌いな奴がもっと嫌いになったので、このまま食い殺してやりてぇ。皮肉にもこの男のせいで、あたしはこの男を簡単に喰い殺せる力を持っている。


『今一瞬ときめいて、そっち向いたら、アンタがいたっていう最悪な状況だから、今すぐ食い殺したい。』

「随分さくらお嬢ちゃんもワイルドになったね。まーでもこんな人目につくとこでの人食はあまりお勧め出来ないなぁ。せっかく仲間との再会へと歯車が回り出したのに、ここで追われる身になっても損するだけでしょ。」


 相変わらず、正論なんだけど。腹立つんだよなぁ。この人。


『で、何しに来たの?用もなく現れないでしょ。アンタは。』


 マジでとっとと要件聞いて、この男から離れたい。

 一年前は得体知れなすぎて、怖いってイメージだったけど、今となっては自分が十分過ぎるほどに強いし。少し自分が大人になったせか、自分が優位に立った上での嫌悪感が露骨に態度に出てしまう。


「そうかそうか。話は聞いてくれるんだね。良かった良かった。」


 勿体ぶらないではよ言って欲しい。


「田中ヒカミの件なんだが。」


 どうやら露骨に顔に出たみたい。


「おお。いい反応だ。ここに田中ヒカミの仲間が誰か一人でも来たら、田中ヒカミの場所を教えるように。それが死神から僕が受けた役割だ。」

『で、どこなのよ。そこ。』

「ここから西に行った森の中の滝の裏にグリフォンが住んでるって噂を知ってるかい?」

『何?それ。またゲームってやつ?隠語?』


 いちいちムカつくんだよね。意味深な変な言い回しも。


「はは。ゲームっぽくて良い感じだろ。酒場で出会った謎の男に、次なる目的地を開示されるって。」

『謎のイケメンだったらテンション上がるけど。残念ながら性悪外道マッドサイエンティストおっさんに言われて誰が良い感じになると?』

「君もだいぶ性格悪くなったね。白水京香お嬢ちゃんと話してるみたいだ。顔が良ければ君もモテるようになるよ。」


 顔が良ければって限定するなら、結局モテないじゃん。それ。


「まあね。田中ヒカミに関して。仲間内では猿みたいだと言われてた彼女だが、本質的には猿ではなく、鳥なんだよね。

 君の狼のように決して強い生き物ではないが、鳥というのは、自由に空を飛び、大空から大地を見下ろす。よって、地上で何が起きているのか見える先現の目を持っている。

 もともと、リーダー気質があるってみんな言ってたじゃないか。純粋に誰よりも視点を高いところに持ち。俯瞰してみる力があるから、誰をどこに配置すれば物事が上手く回るのか。そういった判断力があるのは、彼女の十三回目も魂としての鳥の眼を備えているからだ。まあだからね。彼女の性質って猿じゃなくて鳥なんだ。」


『それがなんなのよ?』

「まあ彼女の本質は鳥であるってのは今の説明でわかったね。しかし、彼女の理想は獅子なんだよ。」

『獅子……?』


 そういえば、歩に彫り師を紹介してって話をしてたよね。ライオンを彫りたいって。


「だから優しい僕は、彼女の本質と理想を兼ね備えた設計をした。」

『は?』

「イッツ。グリフォン!」


 いや。意味わかんない。何も決め言葉じゃない。そんなドヤ顏で言われても。


『マジで、今の言葉決めゼリフ要素ないよ。』


 そんな両腕を天井に向かって広げて、シャフ度でこっち見なくても。


「ああ今のカットは、アップにして、スローモーションで使うように絵コンテには書いておくよ。」


 どうでもええわ。ってあたしが人食うキャラの時点で、アニメ化は無理だよ。


「そこはね。放映版はモザイクで、ブルーレイ販売用でモザイク外そうかと思うんだ。」


 あたしの脳内にツッコミを入れるな!


『とにかく、行けってこと?その西の滝ってとこに。』

「まあ。僕から行けとは言わないよ。僕の役割は伝えるまでだ。あとは君の自由だ。

 ただ。彼女は水が苦手なんじゃないかい?」


 腹立つ。そうだ。この嫌がらせ。ヒカミは水が苦手だ。というか苦手なんて可愛いもんじゃない。トラウマそのものだ。

 それを、滝の裏に住んでるってそれは住んでるんじゃなくて、出れないだけじゃないか。

 今すぐにでも出発したかったが、あたしは一つだけ佐竹に確認しないといけないことがあるのを思い出した。


『ヒカミが水苦手なの知っておいて、そういう嫌がらせするあたりとか、本当アンタの外道さにはもう関心の域なんだけどさ。外道のアンタに一つだけ、聞きたいことがある。』

「なんでも聞きたまえ。」

『呪いの蟲の卵をシキに埋め込んだのはアンタ?』


 勿体ぶるように、佐竹は一度一息ついてニヤリ笑う。


「あははは。そんな事を気にしてたのか。正解は僕であって僕じゃない。今君が話してる僕も、僕であって、以前君を狼にした僕ではない。

 僕はAIだよ。知識を共有した僕がこの世界に何体いると思う?」

『なにそれ?アンタ何人もいるってことなの?』

「まあそう認識するのが一番わかりやすいかもね。」


 私は、50人ぐらいの佐竹の群れを想像した。

『キモい。』

「こらこら、世の中のイケオジたちを敵に回したぞ。今の発言は。」

『キモいでしょ。だってこんな趣味の悪い外道が何人もいるって嫌なんだけど。知識を共有してるってものなんなの?佐竹一号がやった悪事は佐竹二号も知ってるッてことなの?』

「ご名答!だから、君に注射を打ったのは僕ではないけど。あの時の君の泣き叫ぶ声は、軽く勃起する程度には素敵な声だったよ。」


 気持ち悪い!


 いや複数いるのも、記憶を共有ってのも色々あるけど、あたしを目の前にして、あたしの叫び声で、そんなんなるって話を堂々としてくるのが、ほんっッッッッとに気持ち悪い無理。


『本当にアンタ趣味悪いわね。』

「褒め言葉だよ。僕はこの趣味を買われて。二場とも手を組んだんだ?」


 この趣味で?二場と組んだ?


『なに、アンタ二場と出来てたの?』

「よせよ。あんなババア興味ないよ。僕も二場も癖が偏ってるから、意気投合したってだけの話だ。」


 二場の癖が偏ってるというのは新情報として、そこ二人は外道と外道の連合ってことなの?


「僕の趣味は、若い女の子を異物とくっつけるのが大好きでね。

 だから、この世界ではプレイヤーのお邪魔モブキャラであったり、情報伝達のモブキャラ、あとは力を与えたりとか、この世界の運営全体を担う代わりにね。

 多少は、趣味を露呈させて良いと。」


 ニタニタと佐竹は笑う。

 生理的嫌悪感で気持ち悪い。


「君に至っては、魂の因果で呪いと向き合わさせるという名目と、力を与えクリア率を上げるという名目で、僕は君をその姿に変える為の切っ掛けを与えた。

 まあ君の呪いに関してはあまりにも強大だから、遅かれ早かれ【条理】の力が働いて、君はまともな人間の形を成して無かっただろうけどね。

 例の蟲の卵も同じさ。確かに、僕は仕事として卵を埋め込んだけど、それは彼女自身の問題であり、僕が手を下さなくても、いつかは【条理】が働く。遅かれ早かれ彼女は蟲に食われる。

 ただ、ウチもね慈善事業じゃないからね。僕が少し手を加えることによって、【条理】は早めに働き。効率よく魂に負荷がかかりエネルギーが手取り早く回収出来るなら。それに越したことはないだろう。」


 やっぱり、いつかヒカミが言ってたように大きな視点で考えると、こいつらは間違ったことはしてないんだろう。ただ、本当にこの男が不快。

 とにかく、あたしをずっと舐め回すように見てるのが気持ち悪い。


「まあ、趣味と実益を備えたビジネスってことだ。異形の女の子ってのはやはり興奮する。」


 この興奮するというのは、あたしに対して言われたものなのか。シキは以前あたしを【異形】といい。あたしとシキは同じく【異形】であると言った。佐竹は今【異形の女の子】は興奮すると言った。女の子という言い回しは一般的に十代女子を表す言葉で、今のあたしは【異形】と呼称される立場で。





 ふと、佐竹の下半身が目に入った。




 いやややあやあああああアアアアアア





 あたしは、全速力。なんなら久々の四足でバーを出た。

 本来は人前で四足って色々まずいけど、あの近辺では、あたしが最近見世物小屋でバイトしてる子で通ってるから、だいたいのことはパフォーマンスで通るから問題ないけど、これが、人狼とか馴染みのない場所であっても全力四足で逃げたと思う。

 初めてもらったお酒が、最低の外道悪趣味男であったことがあたしの中で泣きたい事実でしかなかった。

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