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不条識な狼の理33

♗33


 出発したのは良いものの。山道な上に、炎天下だから体力がどんどん奪われていく。

 かといって、無口で歩くにも気力が失われていくので、なるべく会話は続けていた。主にヒカミだけど。



「なあ歩。そのカッコイイ刺青はいつ入れたんだ?」

「医者になるの諦めた時だから、十三歳の時かな。」

「その柄って何の意味があるんだ?」



 歩の刺青は手首から肩まで、アルファベットに似たアルファベットではない言語が虎の柄のようにに描かれ。腕上部のは太陽のような魔法陣らしきものが描かれている。これで意味が無い柄だったら逆にビビるようななんだか意味あり気な柄である。



「なんていうか。強さのおまじないかな。強くなる。頼らない。生き抜く。そういうニュアンスの。この左腕はアタイの誇りそのものだからね。」


 そういえば、ハクスイは歩の圧倒的な強さに関してサウスポーであることを指摘していた。一対一の格闘技において、普段が右利き同士の戦いに慣れているので、突然の左利きが現れると完全にペースを乱されるそう。逆に左利きの人は圧倒的に右利きと戦うことの方が多いから俄然有利な勝負の運び方が出来るらしい。


「へえ。カッコイイな。おれもいつか入れたいんだ。なんかこう強さへの憧れと象徴的なものを。」

「入れる柄が決まってるなら腕の良い彫り師紹介するぜ。」

「うわマジで助かる!おれライオン掘りたいんだ!獅子ってなんかこー強くて優しくてカッコイイじゃん!」


 え?ライオン?キャラじゃなくない?

 あたしの突っ込みの前にハクスイは大笑い。


「ヒカミがライオンってイメージ無さすぎてウケるんだけど。ヒカミといえば、猿じゃん。」

「確かに。ヒカミは猿だな。身体も小せえし。お前身長いくつだ。」


 そうそう。ヒカミは猿の印象が強い。あの身のこなしと跳躍力。ライオンには程遠い。


「153センチだ。」

「今平均ってどんくらいだっけ?163ぐらいだっけ。シラミズ。お前いくつだ?」

「180だったけど、多分伸びたと思う。」

「って考えたら、おれそこまで小さくなくない?平均が163なら、ハクスイみたいな異常なやつが引き上げてるだけで、実際の平均って160いかねえんじゃねえの。そしたらわりかし普通じゃん。」

「平成、令和時代含めてその数字ですよ。ヒカミさん。多分更栄時代生まれだけで平均出したら167ぐらいになりますよ。よって、かなり小さいですよ。」


 と博識キアラの豆知識。あたしの身長が165なので、更栄時代だけの平均だとあたしも平均無いのか。ってもまだ伸びてるから平均まではいきそうな感じはするけど。


『そうだよ。ヒカミは本当に小さいよ。あたし前ヒカミに服借りた時、すごいキツイなって思ってタグ見たら、アルファベットじゃなくて、150って書いてあって、ちょっと引いたもん。』

「おいおい。引くぐらい小さいって酷くねえか。」

「私は、たまにヒカミが視界に入らない時あるし。」

「そりゃ、君はデカすぎるだろ。」

「とりあえず、向こうの世界戻ったら、猿彫るの上手い奴を紹介するぜ。」

「だから、おれは猿じゃなくってライオンになりたいんだって!」





 そんな感じで。

 あたしたちはずっと、戻ったら何をしようという話題を話しながら、塔へ向かっていた。

 このまま問題なくクリア出来ると信じて疑わなかった。

 そう考えても当然。拳銃を持ったボクサーしかも医療知識持ちと、基本下ネタしか喋れないのは些か問題だけど、実力に至っては申し分のないエロ侍。そして、火山流忍者業火丸と俊足オタクと、おなじみチートキャラの人狼のあたしである。



 そして本来、倒せないという設定であったミノタウルスまで倒してしまったのだ。こんな運営側の誤算というべき強さを手に入れたあたしたちに向かう所敵無しである。

 その強さを自信というのか。傲慢というのか。

 あたしたちは今、人間の傲慢の象徴である塔に向かっていることを忘れてはならない。

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