不条識な狼の理18
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「ってことは、その話のオチは孫娘が元通りになった訳ではなく、罪を代わりにかぶって人食い人狼となった孫娘が罪と向き合うって話か。向き合うってのも意味わからないんだけどな。」
「二場さんの作風って全体的にそういうのが多いんですよ。絶対に本の中で正解を明かさないで、あとは自分で考えろ系の思想本ばかりで。でも、投げっぱなしって訳じゃなくて絶対答えは存在するものなんですよね。正答率が一パーセントに満たないだけで。少なくとも二場さんと同じ次元に立たないと正解のかけらすら見えない。二場さんってヒトなんじゃなくて神の化身か何かじゃないかと思ってしまいますよ。」
「向き合う……ね。」
ヒカミが意味深にあたしの半身を見てきた。何かを考えているようで、いやこんだけ突拍子もない難しい話、掴み所のこの話を、真剣に考えるのは、ヒカミが十三回目の赤い魂と言われたからなのか。
「何だが。今はまだ見えないけど、何となくいつかヒントぐらいは見えそうな、妙な手応えはあるんだよぁ。クモを掴むような話。
いや勿論、クラウド的な意味で、実体の無いって意味もあるけど、スパイダー的な意味で。実際掴んだら気持ち悪い的な意味も含めてさ。」
「ヒカミさん。あなたがこのように、二場マニアにしかわからないような考察をするあたり。もしかしたらわたしたちは意味あってここに集められたのかもしれません。
二場さんのスタイルはいつだって、最低限のヒントです。その人にそれ以上必要の無い情報は与えないのです。それは、後々出会う因子が事前に分かっていたなら、半分ずつしか情報を渡さないというのも、あの方のやることです。
【一筋縄では真実に辿り着かせない。答えを教えるのが優秀な指導者ではない。答えへと導く程度でもまだ二流。本当の意味での優秀な指導者というのは、自らの力だけで答えを探しあてる環境を整備してやれる人のことだ。】
二場さんの考察本シリーズ【ワールド】からの引用です。
そう考えると。わたしがここに来る際に二場さんに会えなかった事は納得がいきます。だいたいわたしは、二場さんを元々知っていたのです。なのでわざわざ現れる必要も無いでしょう。」
マニアとはいえ、本の一説を引用出来る程の記憶力って相当なものだと思う。といってもあたしがその原本を読んだ事があるわけではないので、正解か不正解かなんて本当は分からないもんなんだけど、これだけ迷わずにさらりと言えてしまうのは多分正解なんだろう。
「その論理でいくと、」
意外にも口を開いたのは歩であった。予想外の人が喋り出したもんだから、注目の的となる。
「アタイは現実世界で、佐竹の存在を知っていた。こっちの世界に来てからは、二場に解説を受け。狼を仲間にしろと言われた。三人は二場に解説を受け、この迷路内で佐竹に会い、狼にされた。そのおかげでアタイらは、二場と佐竹という二人のキーマンの存在を知った上で、ここで出会っている。気持ち悪いぐらい出来すぎているな。」
「ちょっと待て。歩。君と佐竹は現実世界でどんな関係だったんだ?」
今の質問はヒカミ。
「そうだな。とりあえず。二場と佐竹だけの話でなく、アタイらが、こっちの世界に来るに至るまでの話をもお互い出し合わないとだな。」
歩が話し出そうとした、空気のところで、ハクスイがふと立ち上がった。
「ちょっと、ややこしくなってきたから、一旦CMにしよう。」
なんで、広告入れるんだよ。
まあ実質、ハクスイはお湯を沸かして全員分のコーヒーと紅茶を用意しただけであったが。




