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1、ナニこの組合せ?ダブルで初詣デート(その3)

 電車で原宿駅まで出る。

駅を出て、すぐ目の前の広大な緑が広がる代々木公園に入る。

明治神宮は代々木公園と隣接している。


 二日の明治神宮はものすごく混雑していた。

まるで満員電車の人が全員で行進しているようだ。

南参道から途中で大鳥居を通って拝殿まで行くが、見えるのは前の人の頭だけ、って感じだ。


 だいぶ時間がかかって拝殿の前までたどり着くが、その時は既に人の波って感じだ。

賽銭箱なんて見えやしない。

みんなが適当に拝殿に向かって、お賽銭を投げている。

どうやら拝殿前に白い布を広げた臨時の巨大賽銭箱が作られているらしい。

 あたしも手に持った十円をとりあえず投げる。

そして二回拍手を打って、急いで願い事をする。

願い事は・・・何にしようか?

・・・いい大学に入れますように?・・・

・・・留年しませんように?・・・

・・・将来、幸せな結婚ができますように?・・・

・・・金持ちになれますように?・・・


いや、やっぱり今は

・・・兵太と一緒にいられますように・・・


 だが祈っている間も、人の流れは止まらない。

まるで流れるプールのように、一瞬も止まることなく押し出されていく。

こんな落ち着かないお祈りで、神様は本当に願いを聞いてくれるんだろうか?

しかもこの大量の人の流れ!

この人達の願いをSNSにしたら、アクセス過多でサーバーが落ちるんじゃないか?

神様も全員分のお願いを見ているとは、とても思えない。


 そのまま拝殿前を通り過ぎ、西参道の方に出てしまった。

本当にこんなので、ご利益はあるんだろうか?


「ねぇ、明治神宮の中にも御苑があって散歩コースになってるみたいです。せっかくだから回ってみませんか?」


途中にあったパンフレットの地図を見ながら、川上さんがそう言った。


・・・まだコイツラ、一緒なのかよ。だったらもう、帰りたいよ・・・


あたしがそう思った時だ。

川上さんが微妙な提案を持ち出した。


「せっかくだから二組に分かれて、散歩してみません?」


あたしは悩んだ。

ここで言う二組が「あたしと兵太」「川上さんと新川君」なら何の問題もない。

あたし達は即効でトンズラするだけだ。

だが川上さんが、そんな提案をするだろうか?


「いいね、せっかくだからそうしよう。僕も色んな所を見ておきたいから」


新川君がすかさず賛成した。

この状況、どうすべきなのか?

チャンスである事は確かなんだが・・・。


「じゃあグーパーでペアを決めましょう」


やはり・・・

ここで大人しく引き下がる川上さんじゃないと思った。


「なんでグーパーでペアを決めるの!」


さすがにこんな理不尽は認めらない。


だが川上さんは悲しそうな顔をして、こう言ったのだ。


「これが一番公平だと思うんですけど。わたしだって知っている人とペアの方が、話し易くていいです。でもそんなワガママだけ言うのも良くないですよね」


そして一歩あたしの方に詰め寄る。


「天辺さんは誰にしろ知り合いなんですから、一番気兼ねしないと思うんです。それなのに『自分はこの人じゃなきゃイヤだ!』って言い張るんですか?」


そして兵太の方を振り返る。


「どう思いますか?中上君。あなたは『誰か特定の人じゃなきゃ嫌だ』って言い張りますか?」


「い、いや、俺は、そこまでは・・・」


川上さんはあたしの方を振り返ると「してやったり」という顔をした。

兵太がこういう「女の子が絡むことには、自己主張できない性格」を知っているのだ。


「わかったよ」


あたしも渋々同意した。

四人が輪になる。


「それじゃあ」


川上さんが合図した。


「「「「グー、パー、ジャン!」」」」


*****


ハァ・・・


最悪の予想が当ってしまった。


 今、あたしの隣にいるのは新川君だ。

つまり兵太と川上さんがペアになったということ・・・

 勝負は一発でついた。

あたしと新川君がグー、兵太と川上さんがパーだ。


新川君が言った。


「菖蒲で有名な御苑の池の方に行ってみない?」


「え~、有料なんでしょ。別にいいよ」


「清正井って言うパワースポットがあるんだって」


「井戸に興味ないし」


こんな初詣デートってないよ。

なんであたしが正月早々、好きでもない人と神社を巡ってるの?

しかもその間、あの川上さんは兵太と一緒にいるんだし。

さっさとゴールの大鳥居の所に行きたい。


 不機嫌そうにしているあたしに、新川君が元気なく言った。


「もしかして、僕と一緒にいるのは嫌だったかな」


う・・・


あたしの中で、ちょっと彼に対して申し訳ない気持ちが生まれた。

確かに、あたしが不機嫌そうにしていたら、彼も気まずいだろう。


「別に、嫌って訳じゃないけど」


「だったら、もう少し楽しもうよ。せっかく来たんだから」


でもさ新川君、本当なら君がここにいる事がおかしいんだよ。

あたしは兵太と初詣に来たんだから。

そもそも、君はなんでついて来たの?


あたしは内心の不満を隠せないまま、歩き続けた。


*****


 やっと大鳥居についた。

途中、新川君の強い希望で『清正井』だけ行ったが、あたしは大して興味を引かれなかった。

だってただの湧き水でしょ。

東京にしてはキレイな水だと思うけど。

それに混雑してたし。


 しかしそれでもあたし達が大鳥居に付いた時、兵太と川上さんはまだ到着していなかった。


・・・なにやってんだ、アイツラ!・・・


あたしはジリジリしていた。

まさか『二人でのんびりと明治神宮をお散歩』してるんじゃないだろうな?


「やっぱり、まだ早かったみたいだね」


そう言う新川君の言葉にも、あたしは返事をしかなかった。


 十分後、やっと兵太と川上さんが戻ってきた。


「遅いよ!」


あたしは二人に会うなり、そう口にした。


「悪い。川上さんがどうしても御苑の池とか見たいって言うから・・・」


兵太はそう誤ったが、川上さんはまったく悪びれた様子が無い。


「そんなに遅くないですよ、普通に見て歩いていたら、このくらいの時間は当然じゃないんですか?」


さすがにあたしは彼女を睨んだ。

コイツ、完全にわざとやっているな。

この続きは、本日午後2時くらいに投稿予定です。

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