1、ナニこの組合せ?ダブルで初詣デート(その2)
あたしを見つけた兵太は、ちょっと挙動不審だった。
だがすぐに横に新川君がいるのを見て、疑問気な目に変わる。
「あけましておめでとう。って、なんで新川が一緒にいるんだ?」
「あけましておめでとう。来る途中で偶然会ったんだよ。それで一緒に来たいって」
「あけましておめでとう。久しぶりだね、中上君」
「あ、ああ」
兵太が「美園、ちょっと」と言って、あたしの腕を取って、新川君から離れた。
「どういう事だよ。なんでココに新川がいるんだよ?」
「あたしが聞きたいくらいだよ。途中のコンビニにいたみたいでさ。ここまで付いてきちゃって。一緒に明治神宮に行きたいんだって」
「本当に偶然か?」
「どういう意味よ?」
「いや・・・」
そこにまた、二つ目のトンデモない声が聞こえた。
「あけましておめでとうございます。天辺さん!」
その声は・・・
あたしは恐る恐る後ろを振り向いた。
そこに居たのは、なんと・・・川上純子ちゃんだ!
な、なぜ彼女が、ここに?
彼女に背を向けると、今度はあたしが兵太に詰問した。
「なんで川上さんがココに居るのよ!」
兵太の目が再びキョドる。
「いや、今朝、家を出る時、彼女が俺の家の前で待っていてさ。ここまで付いて来たんだよ。『一緒に初詣に行く』って」
「ハァ?」
あたしは思わずそんな声を出した。
「それで『OK』って、ここまで川上さんを連れて来たの?」
「いや、OKなんて言ってないよ。でも彼女に『美園にも会いたいから』って言われたら、その場では断れないだろ」
ん、ん、ん、マジかよぉ。
あたしは振り返って後ろを見た。
「へぇ~、中上君と天辺さんの中学の同級生ですかぁ」
「うん、二人とは中二の時に同じクラスでね」
川上さんと新川君が楽しそうに話している。
だが川上さんは、あたしの視線に気が付いた。
彼女は会話を中断すると、トコトコとあたしの前にやってきた。
「改めて『あけましておめでとうございます』天辺さん。昨年は『大変お世話になりました』!今年もよろしく!」
な、なぜ『大変お世話になりました』を強調する?
しかもあたしを明らかに睨み据えて・・・
身長は川上さんの方があたしよりかなり低いが、彼女のこの上目遣いで下から睨まれると、あたしはどうしても怯んでしまう。
はぁ~、『良心の呵責』って、けっこう重いんだなぁ。
「じゃあ、出発しましょうか?」
川上さんがワザとらしいほど明るい声を上げた。
「えっ?行くってドコへ?」
あたしも思わずマヌケな反応をしてしまった。
「もちろん初詣でです。明治神宮に行くんでしょ?わたしも行くし、ここにいる新川さんも行くって言ってますから」
さらに一歩踏み込むと、彼女はまるで魔法でも掛けるように目を大きくして、あたしに迫った。
「それとも何ですか?『絶対に二人きりで行かなければならない』理由でもあるんですか?ダメですよ、高校生でそんな事を考えちゃ」
あたしはタジタジとなる。
はぁ~、正月早々コレかぁ。
今年も思いやられるよ。
・・・
なぜか四人揃って電車に乗る。
電車はかなり混んでいた。
並びは、川上さん、兵太、あたし、新川君だ。
電車の中、川上さんは兵太に甘えていた。
「わたし、背が低いから吊り革につかまるの大変なんですよ。悪いんですけど、中上君の腕に掴らせて下さい」
ハッ?
吊り革に掴れないなら、離れてシート横の鉄棒に掴ればいいだろ。
なんで兵太の腕に掴るんだよ?
「え、あ、ああ」
しかし兵太はあいまいながらも承諾の返事を返した。
あたしは兵太を睨みつける。
だが兵太はあたしと目を合わせようとしない。
「天辺さんは、今クールの冬アニメは何を見てるの?」
新川君が話しかけてくる。
「え、あ、えーと、何かな?」
あたしは生返事をした。
兵太と川上さんの距離の近さが気になって、それどころじゃない。
新川君は何かと話しかけて来てくれが、あたしは何を話したか覚えていない。
この続きは、明日の朝9時くらいに投稿予定です。