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5、昨日の敵は、今日も敵?(その1)

ある意味、この一連の話はかなり核心的なお話です。

 その日、あたしは姉と姉の男友達と一緒に、秋葉原に来ていた。

姉がノートパソコンを買うために付き合っているのだ。


 当然の事だが、あたしが自発的に一緒に来ているのではない。

姉に強引に連れて来られたのだ。


 昨夜の事だ。


「イヤだよぉ、パソコン買うのに付き合うなんてぇ。しかも知らない男の人も一緒に行くって言うのに」


あたしはお姉ちゃんに頼まれた瞬間から断った。


「そんなこと言わないでよ。ね、お願い、明日の昼過ぎまででいいからさ。二人だけ行くのは嫌なんだよ」


あたしの姉・美郷は拝むようにして、そう頼みこんだ。


「そんな嫌な人と、なんで一緒に行く事にしたのよ。断れば良かったじゃん」


「金田君がウチのゼミで一番パソコンに詳しいんだよ。それに彼が知っている店だと、かなり安くしてくれるって言うからさ」


 姉は就職活動に向けて、新しくノートパソコンを購入する事にしたのだ。

だがその資金は父親から出るはずだ。


「お父さんがお金出すのに、そこまで気にする必要ないんじゃない?」


「そうも行かないんだって。お父さんが出すのはパソコン代だけ。モバイル・Wi-Fiルータとかは、自分で出さないとならないんだから。そういうのも含めて、一番お徳なセットを買わないとならないんだよ」


「それにしても、そんな嫌な相手と二人っきりで買い物なんて、あたしには考えられない」


「最初は同じゼミの子が一緒に行く予定だったんだよ。でも今日になって『行けない』って連絡があって。だから美園に頼んでるのよ」


あたしはそれでも首を縦に振らなかった。

当然だ、あたしには何のメリットも無い。

姉はさらに頼み込んで来た。


「お願い、美園。金田君は前からあたしに言い寄って来ていてさ、けっこうシツコイんだよ。だけど同じゼミだし、それなりに使えるヤツだから邪険には出来ないんだよ。ね、姉を助けると思って。昼過ぎまででいいよ。そうすれば『妹と食事して買い物に行く』って断れるからさ」


だがあたしは横を向いたままだ。

これは姉が招いた問題であり、いわゆる『自業自得』だ。

あたしの貴重な時間を拘束されるいわれはない。


 すると姉は急に態度を変えてきた。


「あっそ、そこまであたしの頼みを断るって訳?じゃ、あたしも美園の頼みを断るのが道理だよね。前に貸した五千円、今すぐ返して」


「ええーーっ?」


今度はあたしが悲鳴を上げる番だった。

姉は憮然とした表情で腕組みをする。


「あんたが『お弁当を作る資金が無い』って言って、前に五千円を貸したよね。あれ期限が来たけど、まだ返して貰ってない。今すぐ返してよ!」


マズイ・・・


 途端にあたしは劣勢に追い込まれた。

高校に入ってからコッチ、赤御門様へのゴージャス弁当、紫光院様へのお礼弁当&思い出の料理対決、そして兵太への交際確定のための弁当。

お金はけっこうかかっているのだ。

あたしの小遣いだけでは足りず、母親、父親と借りられそうな所には全て借りた。

 だが所詮は核家族。

すぐにお小遣いをくれそうな『孫に優しいおじいちゃん、おばあちゃん』も『子供がいない金持ちの伯父伯母』も、近くには存在しない。

よって最後の手段としては、強欲な姉を頼るしかなかったのだ。


「う、ずるい・・・」


「さあ、どうするの?」


姉は勝ち誇ったような表情だ。

仕方ない。

あたしは今、金がない。

あったとしても、もうすぐ春休みだ。

使えるお金は出来るだけ温存しておきたい。


「わかった。一緒に行くよ。だけど付き合うのは昼過ぎまでからね!どんなに遅くなっても、午後二時には帰るから」


別に午後に予定がある訳じゃなかったが、時間を指定しておかないと、いつもでもズルズルと付き合わされる可能性がある。


「オッケー、オッケー。まあ二時間もあれば終わるからさ」


姉の満足げな顔と同時に、あたしはタメ息をついていた。


・・・


 と言う訳で次の日曜日、あたしはお姉ちゃんとそのゼミ仲間の金田さんと一緒に秋葉原に来ていた。

金田さん、おそらく悪い人ではないんだろうけど、ちょっと粘着質っぽい感じがする。

顔もブサイクではないが、決してイケメンではない。

一般社会では普通だろう。慈円多学園だったらランク外だが。

ついでに言うと、あたしの好みではない。

おそらくお姉ちゃんの好みでもないだろう。

(あたしとお姉ちゃんの男の好みは、けっこう似ている。こういう所で姉妹の血の繋がりを感じる)


「これはCPUがさぁ・・・、こいつはGPUがオンボードで・・・今はハードディスクよりSSDを・・・」


お姉ちゃん相手に、一生懸命にうんちくをひけらかしている。

だが女の子相手に、そんな知識を披露してもウケないと思うぞ。

あたしはメッチャ退屈していた。

まあこの退屈な三時間を乗り切れば、借金が無利子で延長されるんだから、仕方が無いが。


 やっと購入するノートパソコンが決まり、お姉ちゃんがモバイルWi-Fiの契約をしている時だ。

金田さんはあたしのそばに寄って来た。


「美園ちゃんはさ、いま高校生なんだって?」


「あ、ハイ」


「あの有名な慈円多学園に通っているんだってね」


「・・・ハイ」


「モデルとか雑誌で紹介されている女の子が多いよね。セブン・シスターズとか」


「え、ええ」


「美園ちゃんもさ、そのセブン・シスターズの候補なんだって?」


「え、いや、それは違うんですけど」


「でもネットで紹介されてたよ。慈円多学園の新ベスト7の一人だって」


大学生にもなって、高校生の学園祭の人気ランキングなんて見てるなよ。


「こうやって実際に会うとさ、美園ちゃんも可愛いよね」


な、なんだ、コイツ。


「今度さ、どっか遊びに行こうか?ディズニーランドとか、車も出せるからさ」


オイ、なに言ってんだ、オマエ。

アンタはお姉ちゃんを狙ってるんじゃなかったのか?

それで今日も「パソコン選びに付き合う」って名目で、付きまとってんだろーが?

『姉がダメなら妹で』って、そりゃオマエ、お手軽すぎるだろ。


「いえ、けっこうです」


あたしはキッパリと断った。

そもそも『女子校生なら、ディズニーランドを持ち出せば誘い出せる』って安易な発想が気に入らない。

プラス高校生は持ってない『車』を話に出せば、簡単に釣れるってか?


「冷たいなぁ。美園ちゃんは可愛いから、俺が入園料も食事代も全部出すつもりなのに。もしかして、彼氏とかいるの?」


「ハイ、います」


あたしは間髪入れずに答えた。

もしかしなくても、彼氏いるよ。

この手のアホには、勘違いさせずにハッキリ言った方がいい。


「そっか、彼氏がいるのか。残念だなぁ。じゃあ彼氏がいなかったらOKだった?」


「いえ、金田さんはあたしの好みじゃないんでー」


あたしは明るい笑顔で答えた。


『絶対に勘違いしないように』


バカが。

アンタなんか、慈円多学園男子に比べれば『ジャガイモかカボチャかサトイモか』って、レベルなんだよ。

誰がベジタブルと一緒にディズニーランドに行って喜ぶんだ?

さっさと帰って、イモでも煮てろや。

この続きは、明日朝9時過ぎに投稿予定です。


【訂正】

申し訳ありません、この続きの投稿は明日12時過ぎになります。

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