目撃
「えー…」
黙って立ち去ろう!と思ってたのに、咄嗟に声が出てしまった。目の前の2人が慌ててこっちをみる。
「ごめんね?見るつもりは無かったんだけど電気ついてなかったから…あ、英和辞書だった。ちょっと待ってね。すぐ出てくから」
「いや、待って待って湊さん!!!」
「冷静すぎて笑うわ〜」
冷静なわけあるか!!と心の中で叫ぶ。
冷静なわけあるか!こっちは絶大なショックを受けてるんだよ!
まさか、クラスメイトの男子同士ができてるなんて想像できないし、(恋愛と性別はあんまり関係ないと思うけどさ。別に私は腐女子じゃないけど)
「湊さん、ごめんね。びっくりしたよね?」
「うん。ものすごく」
「ごめんね」
「あっううん。別に責めてるわけじゃないから」
ふわっと笑う、優しい笑顔とせっけんのいい匂い。いつも見てた真田君の笑顔は何も変わってないけど、
(さっきキスばっちり見ちゃったんだよなぁ…)
つい、まじまじとその顔を見てしまう。
やっぱりショックだ。
きっと、真田君が男子とキスしてたからショックってわけじゃない。
中学の時からずっと好きだったから。
ずっと頭が追いつかない、こんなにショックになるんだ。
「大丈夫?絵麻ちゃんっ」
フリーズしてたら、もう片方に声を掛けられる。
隣のクラスの派手な人。そうだ、豊永航君だ。
「えぇ…?うん…」
「めっちゃ迷惑そうな顔してんじゃん!超おもしろい☆」
「やめて航。俺らのこと、普通の人が見たら誰だって困惑するでしょ」