空箱にご用心(箱物語11)
一週間前。
近所に住む女の子がとつぜん姿を消した。
まるでカミカクシにあったように……。
友達と別れたのを最後に、それからの足取りがまったくわからない。だれひとり、その子の姿を見かけていない。
警察や地区の人が、公園、学校のまわりとあちこちを探した。
それでも女の子は見つからなかった。
誘拐だってこともある。
警察はその捜査もしていた。けれど今も、なんの手がかりさえつかめていないらしい。
そして昨日の夕方、友だちで仲良しのリョウ君が消えた。
それもボクの目の前で……。
昨日の日暮れ前。
場所は近くの児童公園だった。
奇妙な事件があったあとだけに、ほかのみんなは早めに帰ったらしい。公園には、いつのまにかボクらだけが残っていた。
「ねえ、あんな箱あったかなあ?」
リョウ君が指さす先、そこには大きなダンボール箱があった。
洗濯機が入るぐらいのでっかいヤツだ。
「いや、さっきまでは見なかったけど」
あれば気がついていたはずだ。いくらタソガレどきでも、まわりが見とおせる明るさなのだから。
ダンボール箱は閉じられていた。
リョウ君が両手で持ち上げると、箱はたやすく地面から浮いた。
ボクもかかえてみた。
とても軽く、斜めにしてみたら中で音がした。小さなものが底をすべる、そんな音だ。
「なんか入ってるよ」
リョウ君はさっそくフタを開けにかかった。
ボクも手伝う。
箱の底に小さなポーチが見えた。
ピンク色で、かわいいヒモのついたものだ。
リョウ君がポーチに手を伸ばす。
と、次の瞬間。
頭から吸いこまれるように中に落ちこんだ。
フタがパタンと閉じる。
ボクはすぐにフタを開けてやった。
――なんで?
リョウ君がいない。
箱の中で消えてしまった。
ボクは箱をかかえてさかさにしてみた。
ポーチといっしょに、さっきは見なかったボールが転がり出てくる。
――このボールって……。
リョウ君のものだった。箱の中に落ちたとき、ポケットからこぼれ落ちたにちがいない。
――こんなの、いつかテレビで見たことがあるぞ。そうだ、マジックだ。
だからしばらく……。
ボクは箱の中をじっと見ていた。そのまま待ってたら、ポンって、リョウ君がまたあらわれるんじゃないかってね。
だけど、いくら待ってもあらわれなかった。
リョウ君が消えた。
マジックみたいに消えた。
まる一日たった。
今朝になって知ったんだけど、ピンクのポーチは行方不明になった女の子のものだった。だからポーチのこともくわしく聞かれた。
だけど、ボクはなにも知らない。
警察の人には何度も同じことを聞かれた。
ボクも同じことを何度もくり返し答えた。リョウ君が消えたときのことを……。
警察の人、ボクの話を信じてないみたい。
だって、あのダンボール箱。
警察の人と引き返したとき、事件のあった公園から消えていたんだもの。
夕方。
行方不明の女の子が見つかった。それも自分の部屋にいたという。
その女の子。
空白の一週間のことはなにも覚えていないらしい。
「不思議、ほんとに不思議だわ。リョウ君も早く見つかるといいのにね」
お母さんは何度も不思議だと言った。
でもボクは、ちっとも不思議じゃない気がした。だってリョウ君、マジックみたいに消えたんだもの。
ボールを手に取ってみる。
そばにリョウ君がいるような気がした。
その晩。
リョウ君が帰ってきた。
女の子のときと同じで、気がついたらなぜか自分の部屋にいたそうだ。
今、ここに破れたボールがある。
女の子が帰ってきたのは、警察の人がポーチを開けたから。それで同じように、ボクもボールを切って開けたんだ。
それしかない。
ボクはそう思ったんだ。
だって、今度のこと。
不思議が、ちっとも不思議じゃないからね。
もし君が大きな空箱に出あったら、ぜったい中をのぞかないことだよ。
あのダンボール箱。
今も行方不明のままなんだって。




