表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
~In the World~ この世界の中で……  作者: 愛守
第一編 それぞれの価値観
53/55

絶望的闇

「さあ行くよ? デスブリング!」

「レイジ!」


 ダークブリングよりも巨大な黒い衝撃波がユウキを襲う。その猛スピードに、ユウキはやっとの思いでカウンターのタイミングを合わせた。


「まだまだ行くよ? ハデスゲート!」

「なっ!?」


 ネザーワープ同様、闇の中へとネロは姿を消した。


「逃げるな!」

「ディスペル!」

「ぐああ!」


 ユウキは不意を突かれ、爪による斬撃を受けた。咄嗟にガードをしたにもかかわらず攻撃が通ったことから、その技をスラッシュと同等の技とユウキは推測した。


「逃げるだなんて人聞きが悪いなあ。僕が君なんかから逃げるわけないでしょ? 少しくらい考えてから発言してよ」

「く……! このっ!」

「ハデスゲート!」

「あ、また!」


 ユウキはネロが姿を消した地点を睨んだ。


「ヘルストーム!」

「なっ!?」


 再び背後に姿を現したネロは、淀んだ灰色の風魔法を放った。


「く……!」


 ユウキはカウンターのタイミングを合わせられないと判断し、斬撃で対抗した。投げ属性の風魔法は、それによって消え去った。


「さあて、いつまでそうしていられるかなー? スカイイズマイン!」


 その技名の詠唱と共にネロは巨大な翼を生やした。


「あ~あ、退屈。代わりに戦ってもらおうっと。ソウルドミネーター!」


 ネロが右手を真正面へとかざした途端、空間が歪み骸骨が三体現れた。


「ネクロマンシーまで!? こいつ……!」

「ああ、そういう風に呼んでる人もいたね。何かちょっとそそのかしたらさ、簡単に僕のおもちゃになってくれたんだよねー」

「アイリスを……よくも!」


 ユウキは怒りを込め、骸骨たちを切り払った。


「あれ? 怒った? あはは、何で? ねえ、何で?」

「お前みたいな腐った奴は、俺が絶対に倒す!」

「できもしないこと言うのやめなよー。それじゃ、面白いのあげるよ。トラップ、ネロヴェール!」


 ネロは高速で回転しながら赤紫色のオーラを纏った右手を周囲にかざした。


「何っ!?」

「説明は要らないよね? 君たちがさっき使ってた技だよ。これね、元々僕の技なんだけど、何勝手にいろいろな名前付けて遊んでるのかな?」

「く……! 技の生みの親か!」

「さあて、どこに設置したでしょうか? あははは!」


 ユウキもネロが油断している隙を突き、静かにトラップを設置した。


「さて、もう一回骸骨たちにがんばってもらおうか」


 ネロは右手をかざし、ソウルドミネーターを再び発動した。


「く……! これじゃ本体に攻撃する余裕がない!」


 ユウキはウィンドやライトブリングで骸骨たちを倒してゆく。


「必死だねー。もう少し余裕を持って戦えないの?」

「黙れ! シューティングスター!」

「その技綺麗だからもらうよ! カウンター、デザイアー!」


 ネロが右手をかざすと、星形の岩はぶつかる直前に消え去った。


「なっ!? コピー技か!?」

「これいいね。僕こういうの好きだよ? それっ! シューティングスター!」


 ネロはすぐさま習得した技を使用し、星形の岩を放った。その速度はユウキが扱うものより格段に速い。


「ウィンド!」

「おおっと、返ってきた。カウンター、カオス!」


 風魔法で返したそれを、ネロは黒いオーラを纏って受け止めた。


「これで腕力アップ。すごいでしょ? ねえ、すごいでしょ? 僕何でもできるんだよ?」

「お前は、確かに何でもできるかもしれない……」

「おお、認めたねー」

「だけど、何もわかっちゃいない!」

「……は? 君はさ、僕を怒らせたいのかな? いいよ、戦ってあげるよ」


 ネロは一瞬にしてユウキへと接近した。


「行くよ! それっ!」

「レイジ! ……何!?」


 ユウキは驚愕した。その目に映った攻撃モーションは煙のように消え、カウンターが不発に終わる。


「それっ! ディスペル!」

「ぐああ!」

「この技もいろんな名前付けてくれていたみたいだけれど、本当はミラージュって言うんだ。どう? 綺麗な名前でしょー!」

「……この!」


 ユウキは反撃を試みるも、その斬撃はひらりとかわされてしまう。そして、そのままネロは後方へと跳び上がり再度空気を踏みつけた。そして、その頂点でさらに空気を踏みつけ、より高くまで舞い上がった。

 遥か上空まで達したネロは、再び翼を生やしその場へ留まる。


「そうだ。さっきの戦いで少しダメージを受けたままだったね。イモータルパワー!」


 ネロの周囲をドクロ型のオーラが漂い、傷を塞いでゆく。


「これで元通りだよ。ますます僕の思い通りだね!」


 複数の技とその完成度。マコト同様のレパートリーの豊富さに加え、圧倒的な身体能力。その余りの戦闘力にユウキは戦慄した。


「く……! お前がどれだけ強くても、俺はお前を倒さなければならないんだ!」


 ユウキは上空へとライトブリングを放った。


「へえ、じゃあこれどうする? カウンター必殺、イーヴルマインド!」

「なっ!?」


 光の衝撃波はネロの纏った闇へと吸収されてゆく。


「あははー。これでしばらく痛みなんかに負けないよー!」

「……だから何だ! 俺はお前を倒す!」

「あーはいはい。それじゃ現実を突きつけてあげようねー。デスブリング!」

「そう何度もやられるか! シューティングスター!」


 空から降り注いだ巨大な黒い衝撃波に対抗し、ユウキは星形の岩を放った。それは衝撃波を打ち消しながらネロへと迫ってゆく。

 だが……。


「遅いよ」

「なっ!?」


 ユウキの背後へ瞬間移動したネロは、一瞬で生成した剣を振り被り、勢いよく切り払った。


「ぐああ!」


 ユウキはその技を受け止め損ね、重たい一撃を受けた。

 直後、ネロは邪悪でどろどろしたオーラを左手に纏った。


「インフィニティデザイアー!」


 その技名と共に、ネロはそのオーラを放った。ユウキはそれを浴び、悲鳴を上げることすらできずに倒れた。


「ユウキ君!」


 マコトがユウキに駆け寄る。


「よくも……! ユウキ君から離れろ!」


 マコトは剣を振り回し、ネロを一度退けた。


「……う、うう」

「もう終わり? 思ったより情けないんだねー」


 マコトとユウキが敗北を覚悟したその時。


「待たせたな、ユウキ! な、こいつは何だ!?」


 団長が全員を引き連れ到着した。


「おやあ? 仲間のお出ましかな?」

「ユウキさん! こんなになるまで……!」


 スノウが駆け寄り、ユウキを回復した。


「ああ……みんな、遅いですよ……」

「見たところ、あいつが真の悪と言ったところか」


 団長は鋭い視線をネロへと向けた。


「そうだな……。なあ、元ネガティブたち、あいつに見覚えあるかい?」

「い、いえ……。誰でしょうか」

「俺様、あんな奴初めて見たぞ」


 ゼフュロスの問いに、アイリスとワイルドが答えた。


「あーあ、僕のおもちゃ勝手に取っちゃったんだねー? せっかくみんな面白かったのに、何てことをしてくれたのさ?」

「人をおもちゃだと!? お主、何てことを!」


 団長はネロへと剣を向けた。


「団長……何を言っても無駄です。あいつ、人間じゃありません。黒い塊が、化けたんです」

「うむ。こんな奴、人間であろうはずがない! 皆の者、遠慮はいらない! あやつを倒せ!」


 団長の指令を受け、全員が戦闘態勢に入った。


「君たちが何人に増えたって、この僕を倒すことなんか不可能さ!」

「そんなことない……! みんなが来てくれたから、今度こそ勝てる!」

「十二人くらい、僕にとっては少ない方だよ。愚かだね」


 ユウキたちは最後の戦いへと思いを一つにした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ