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~In the World~ この世界の中で……  作者: 愛守
第一編 それぞれの価値観
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ユウキ対マコト

 団長の激励を受け、ユウキは次のフロアへと進む。階段を一歩ずつ踏みしめながら、これまでの出来事を一つ一つ振り返る。

 マリアたちの激戦、それによるネガティブたちの改心。そこに至るまでの鍛錬や数日とは思えない程の充実した毎日。

 そして、ユウキの思いはこの世界へ来る前にまでさかのぼり、トラウマへと辿り着いた。頭の中であの日の声がよみがえるのを必死に振り払い、今自分の目の前にある戦いへと精神を集中させる。

 そして、登りきった先は山の頂上だった。


「……あ、ユウキ君! やっぱり来てくれた。ずっと待ってたんだよ!」

「マコト!」

「さあ、僕の騎士団に招待するよ! みんなで一緒に世界を平和へ導こうね!」


 マコトは手を差し伸べた。


「……悪いけど、俺はネガティブに入りに来たわけじゃない!」

「なっ!? それはどういうこと!? というか、ネガティブなんていう名前じゃないって僕は何回も何回も言ったはずだよ!?」

「なあ、マコト! 何で道を踏み外したんだよ! 俺はお前とできれば戦いたくないんだ!」

「僕だってユウキ君と戦うつもりはないよ? なのに……なのに! 何でわかってくれないのさ!?」


 マコトは悲痛な声を上げた。


「いい加減に目を覚ましてくれよ! 確かにお前はいじめられていたし、それを助けた俺が今度は次のいじめのターゲットにされた! だけど、だからって人間全員を悪だと決め付けるなんて絶対に間違っているだろう!」

「……ユウキ君はあいつらに何を吹き込まれてしまったんだい? できればこんなことしたくはなかったんだけれどなあ……」


 マコトは背負っていた剣を右手に持ち、戦闘態勢に入った。


「マコト! ……戦うしかないのか!?」

「それしかユウキ君の目を覚ます方法がないみたいだからね。さあ、構えなよ」


 ユウキは沸き起こる幾つもの感情を抑え、そして……。


「In the World……この広大な世界の中で」


 剣を向け、宣言した。


「In the World……この狭苦しい世界の中で。さあ、行くよ? ネザーワープ!」


 一瞬にしてマコトは黒い円を生成し、その中へと姿を消した。

 ユウキがハッとして振り返ると、目の前まで黒い衝撃波が迫っていた。


「くっ! テレポート!」


 間一髪、ユウキは瞬間移動を使用し攻撃を避けた。


「ルシフェルウィング!」


 マコトは悪魔の羽を生やし、宙へと浮いた。


「さあ、勝負だよ!」


 直後、上空からユウキへと向かって襲いかかる。

 ユウキはそれを避けるべく再びテレポートで間合いを取り、マコトの隙を作った。


「……ライトブリング!」


 態勢を立て直される前に、ユウキは光の衝撃波を放った。

 だが……。


「シューティングスター!」

「なっ!?」


 マコトは星形の岩を放ち、応じた。ガード属性のその技は、ユウキの打撃属性のライトブリングを一方的に打ち負かしながら迫り来る。


「ウィンド!」


 ユウキは慌てそうになる自分の心を落ち着け、ガード属性に有利な投げ属性の魔法で対抗した。

 星形の岩は強風に押し返され、マコトへと襲いかかる。


「おお、すごい! シュバルツウィンド!」


 だが、マコトも的確な対応により事なきを得た。発生させた黒い強風によって吹き飛ばされた岩は、後方の壁へとぶつかり消えた。


「いきなりで焦ったけど、あの時俺が不用意に打ったシューティングスターのコピーか」

「その通り」


 マコトはにこやかにそう返した。


「やっぱりユウキ君は強いなあ。でも、僕だって今日は負けるわけに行かないんだよ!」

「俺だって、お前のためにも負けられない!」

「僕だってユウキ君のために戦っているんだよ!」


 言葉だけではもう伝わらなかった。ユウキがマコトを連れ戻すには、戦うしかない。


「ファントムダンス!」


 マコトが指を鳴らすと骸骨が三体現れ、一斉にユウキへと向かって飛びかかった。


「これくらい……!」


 ユウキはシューティングスターやウィンドを駆使し、骸骨たちが接近しきる前に処理してゆく。


「おー、すごいすごい! 僕の作った骸骨を一気に全部やっつけちゃうなんてさすがだね。それならこの技はどうかな? トラップ、ナイトメア!」

「な、何だ!?」

「どこに設置したと思う? 踏んじゃうと周りが見えなくなっちゃうよ!」


 マコトの使った技は、ハイドから教わったものと同じだった。


「トラップ、暗雲! これで状況は五分だ!」

「そんな技まで習得していたんだね……」

「これでお前も下手に動くことはできない」

「でも、それならこうするだけだよ? アウェイクン!」


 マコトは左手を空高く掲げ、強く握り締めながら引き戻した。すると、彼の体は青いオーラに包まれた。


「今度は何だ!?」

「これはね……僕のパワーを上げる技だよ!」

「何っ!?」

「さあて、こっちは暇な間ずっとこれを使っているだけで有利になるよ! どうするのかな?」

「それならその余裕を与えない! ライトブリング!」

「カウンター、サタンズマインド!」


 マコトはどす黒いオーラに身を包み、光の衝撃波を受けた。


「これも僕のパワーを上げる技だよ!」


 余裕を与えるとアウェイクンを発動され、攻撃を仕掛けるとカウンターで吸収される。どっちにしろ、マコトのパワーが上がってしまうことに変わりはなかった。


「それにほら、僕はこの子たちがいるから。ファントムダンス!」


 マコトは再び骸骨を召喚し、ユウキは対応を迫られる。


「く……! 強い。昔のお前からは全然想像もつかない強さだ。だけど、人間として弱くなった! 俺は、お前を元に戻したい!」

「言っていることがよくわからないよ。とりあえず、今の内に……」


 マコトはここぞとばかりに再びアウェイクンを使用した。

 だが……。


「今だ!」


 その一瞬の隙を突き、ユウキテレポートでマコトの背後へと回った。


「なっ!?」

「行くぞマコト!」


 マコトは慌てて振り向き、拳を突き出した。だが、ユウキの放った技はガード属性のスラッシュだった。


「痛い!」


 ユウキの斬撃が命中した。


「やっと一発当てたか」

「……痛いよお。回復しないとだね、シェイドムーン!」


 マコトは自身の傷へ手をかざし、黒い靄で包んだ。


「せっかく与えたダメージが!」

「ねえ、ユウキ君。僕に勝つことはできないよ? お願いだからさあ、そろそろ目を覚ましてくれないかな?」

「目を覚ますのはお前の方だ!」


 ユウキは左手をかざし、光の衝撃波を放った。

 だが……。


「それじゃあ僕ももっとがんばるしかないかな? カウンター必殺、ロストハート!」

「何っ!?」


 それはあえなくしてマコトのカウンターに吸収された。

 そして、マコトは攻撃態勢に戻り黒い衝撃波を放った。


「なっ!? レイジ!」


 カウンターで受け止めたその時、ユウキは見てしまった。マコトから表情がなくなっているのを。


「……」


 うつろな目をしたマコトは、無言のまま技を繰り出す。ルシフェルウィングにより悪魔の羽を生やし、すぐさまネザーワープで姿をくらませた。


「な!? おい、出て来い!」

「……はあ!」

「ぐわあ!」


 突如、背後から現れたマコトはスラッシュを浴びせた。


「……このっ!」


 ユウキは即座に振り返り、シューティングスターを放った。

 だが……。


「……はあ!」


 確かにその攻撃は命中したというのに、マコトは怯まず攻めかかってきた。


「く……! メディテーションと同じ効果!?」


 団長の使用するカウンター必殺技、メディテーション。自身の痛覚を排除するその技と、同等の効果のものをマコトは使用していた。

 接近戦は危険と判断したユウキは一旦距離を取るべくテレポートした。


「……あ、効果が切れちゃった。あれ? 思ったより状況変わってないねえ」


 マコトは痛覚どころか理性まで一時的に欠落させていた。その技の効果に気付いたユウキは戦慄を覚える。

 だが、すぐさま闘志を取り戻し、剣を構えた。


「当たり前だ! そんな簡単に負けてたまるか!」

「そっか、それじゃ行くよ!」


 マコトはネザーワープにより一気にユウキの元へと迫った。


「レイジ!」


 ユウキは自分の目に映ったマコトの斬撃に合わせ、カウンターを使用した。

 だが……。


「……何っ!? グアア!」


 その攻撃モーションは煙のように消え、カウンターは不発に終わった。

 その隙を突いてマコトが斬撃をクリーンヒットさせる。


「すごいでしょー! イリュージョンって技でね、攻撃の幻を見せるんだよ!」

「ハイドさんのフェイントまで……」


 その豊富な技のレパートリーにユウキは怯み、飛び退いた。


「逃がさないよ。おっと! あれえ? 周りが見えないよ?」


 一歩踏み込んだマコトは、先程ユウキが仕掛けた暗雲にかかった。

 それをチャンスと見たユウキは、マコトへと剣を振りかざしながら駆け寄る。


「よし、行くぞ! ……うわっ!」


 ユウキはマコトへと辿り着く前に、声を上げて立ち止まった。


「あれえ? どうしたのかな? もしかしてユウキ君も僕のナイトメア、引っかかっちゃった? それなら……」


 マコトは視界を奪われる前の情報を頼りに黒い衝撃波を放った。

 だが……。


「く……! テレポート!」


 迫る攻撃の気配に気付き、瞬間移動で避けた。


「あ、ずるい! それじゃ僕も、ネザーワープ!」


 お互いに元いた位置から離れたことにより、敵の位置がわからなくなった。

 その硬直状態の最中、二人は決着の時へ向けて神経を研ぎ澄ませる。

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