ローズ対ジャスティス
「団長……後は俺たちだけですね」
「ああ。私は必ず勝つぞ? お主は勝てるか不安なのか?」
「いえいえ! そんな! 絶対勝ってみせますよ!」
「そうか、それならよいのだが……」
「……さて、頂上にマコトがいるということは」
「うむ、私と同じ技を使うという者が、最後の門番であろうな」
「……団長、絶対に死なないでくださいね?」
「お主は誰に言っておるのだ? 私が死ぬわけなかろう」
ユウキは心の中で呟いた。確かに殺しても死なないと思うけれど、と。
「……着いたな」
階段を登った団長は、そのまま扉を開け放つ。
「ふむ、あやつか」
ジャスティスが団長たちを待ち構えていた。その金色の鎧は、光を浴びて煌めいている。
「ほう、付き添いを許可されたのだな。ユウキ殿、マコト殿がこの奥で待っておられる。ささ、向かわれるがよい」
「ああ、もちろんそのつもりだ。けど、その前に見届けなければならない戦いがあるからな!」
「ふむ。それは一体誰と誰の戦いなのかな?」
ジャスティスはあごを撫でた。
団長はそんな彼へと向かって歩み出る。
「お主と私の戦いだ!」
「何と!? 一体どういうことだ!?」
「お前とマコト以外は俺たちで全員改心させた。次はお前だ! ジャスティス!」
慌てるジャスティスへとユウキが言い放った。
「ふむ。何かの間違いではないのかな? それはまるでアイリス殿やネメシス殿が負けたと言っているようなものではないか」
「ああ、俺たちが全員倒したぜ! みんな無事だし、今日からポジティブの仲間だ!」
「何と言うことだ! 聖騎士団をやめ、邪教へ寝返ったと言うのか!?」
「邪教なんかじゃない! 俺たちは、お互いにわかり合おうとしているだけだ!」
「……そうであったか」
ユウキの真っ直ぐな視線を見て、ジャスティスもそれ以上追及することができなかった。
「して、お主が私の相手をするのか?」
ジャスティスはゆっくりと団長へ向き直った。
「うむ。私はポジティブ団長のローズと申す!」
「お主が団長か。私はジャスティス、お主と違いただの一員だ」
「地位など関係がない。お主の誇りと騎士道を見させてもらう、ただそれだけだ」
「ふむ。お主も騎士道精神に満ちた者なのだな?」
ユウキは心の中で叫んだ。そりゃあもう、一対一に横槍を許さない徹底した騎士道精神だよ! 全員無事で本当によかったよ! と、このフロアに来るまで溜め込んだ思いを密かに爆発させた。
「では始めるとしよう。In the World……この完全なる世界の中で」
「ふむ。行くとしよう。In the World……この不完全な世界の中で」
二人はお互いに堂々と対峙し、宣言した。
そこに、不意を突こうなどという考えは微塵も存在しない。
「手加減はせぬぞ!? 来い!」
「もちろんだ。そちらから参れ!」
「……そちらから来い!」
「いや、そちらからだ!」
妙な雰囲気が漂い、戦闘を見守るユウキの緊張が解けた。
「ふむ。お主も同じ技を使うというだけあるな」
「何!? お主もか!」
奇妙な硬直状態が生まれ、ユウキはがっくりとうなだれた。
「……お主、なぜ道を違えたのだ?」
「私は私の信じる正義に従ったまでだ。お主も、目を覚ましてこちらへ来ないか?」
「誰が行くか!」
「ふむ。残念だ……」
あまりの前置きの長さに、ユウキが気を抜いていたその時。
「さて、とりあえずこれを出しておこう」
団長が盾を生成し、左手に持った。
「今までは動きが鈍くなるため使用してこなかったが、この一戦においては大いに役立ってくれるであろうからな」
「ふむ、そうか。それならこちらも盾を使うとしよう」
「何!?」
ジャスティスも同様に盾を生成し装備する。
「そして、そちらが来ないのなら仕方があるまい。私から参ろう。ダークブリング!」
ジャスティスは剣先から黒い衝撃波を放った。
「規律、シヴァルリー!」
団長はそれをカウンターで防ぎ、自身の防御力へと変換する。
「おお、確かに同じ技だ!」
「こちらも行くぞ! ライトブリング!」
感動しているジャスティスへと、団長も攻撃を仕掛ける。真っ直ぐに向けたその剣先からは、先程ジャスティスが行ったのと同様に衝撃波が放たれた。
「天則、シヴァルリー!」
ジャスティスもそれをカウンターで受け止め、自身の防御力へと変換した。
「……やるな」
「お主もな。行くぞ!」
二人は同時に走り出した。だが、その動きは武装のせいで恐ろしく鈍い。だが、一度接近してからは目が追いつかない程の剣捌きを見せる。
どちらの実力も確かだった。
「く! 団長である私と、互角に戦えるとは!」
「まだまだ年ではない! 行くぞ! シールドスラム!」
「ぐ……!」
ジャスティスは盾で叩きつけた。それにより団長の剣は押し返される。
「やるではないか! それならば……!」
団長はジャスティスへとつかみかかった。守りを固めることに専念していたジャスティスは、かえって隙が生まれていたのだ。
「ぐふっ! うぬぬ!」
ジャスティスは即座に起き上がり、今度は投げ飛ばされないように迎撃態勢を取った。素早く的確に剣を振るうことにより、団長の投げをけん制している。
だが……。
「それならこちらも!」
団長は盾を勢いよく突き出した。先程ジャスティスが使った技、シールドスラムだ。そのあまりの威力にジャスティスは吹き飛ばされ、再び一定の間合いが生じた。
「立つのだ! かかって来い!」
「ぐぬぬ……私も負けてはおらぬぞ! ダークブリング!」
「規律、ペイシェンス!」
ジャスティスの放った黒い衝撃波は、団長のカウンターによって魔力へと変換された。
「これは……私のヘイトレッドと同じ技か!?」
ジャスティスは団長も自分と同等のスキルを持っていることを認識し、改めて気を引き締めなおした。
「来ないのであればこちらから行くぞ!」
団長はジャスティスへと剣を向けつつ宣言した。
「うむ! 来るがよい!」
ジャスティスが堂々と受けて立ったのを確認し、団長は剣を構えて突進した。
「ヤアアア!」
団長はジャスティスへと緩急自在に切り込んだ。守りに徹しようものならいつでも投げ飛ばそうという気迫のこもったいい攻めだ。しかし、ジャスティスはその複雑な剣捌きを的確に受けてゆく。
そして……。
「天則、ヘイトレッド!」
「く……!」
ジャスティスは仕上げにカウンターを発動させた。それにより団長の攻撃は吸収され、魔力へと変換される。
それを見て団長は咄嗟に距離を取った。
「さて、では今度はこちらから参る! うおお!」
勢いに乗るべくジャスティスは剣を構えて襲いかかる。
だが……。
「……隙あり! スリープ!」
「な!? 意識が……」
団長が突然使用した魔法に、ジャスティスのみならずユウキまでもが驚く。
少しして、ユウキはようやく理解した。鍛錬の時にマリアからコピーしていたものを使用したということに。
「ぐぬぬ……こんな技を……」
ジャスティスはよろめき、剣を地へと突き立てた。
「さあ、行くぞ!」
団長は剣を構えジャスティスへと駆け寄った。
ユウキの目に、完全に団長が有利と見えたその時。
「そうはさせるか!」
ジャスティスは団長へと剣先を向け、魔力を放った。
「ぐ……! 体が……」
途端に団長は動きを止め、膝から崩れ落ちた。
「うっ! アイリス殿から……もらっておいてよかった」
「何だと……!?」
「天則、リタリエイション。技をコピーすることが……できる、のだ……! それにより、アイリス殿の金縛りを……」
ジャスティスは薄れゆく意識を必死で繋ぎ止めつつ、途切れ途切れに種を明かした。
「厄介なことを!」
「お主とて……」
お互いに動きが鈍る中、再び剣が振りかざされた。




