ゼフュロス対ダーク
三人目の敵が待つフロアへ向かいながら、ユウキたちはスノウの戦いを振り返っていた。
「お嬢ちゃんもハニーも、本当によかった!」
「ああ、俺もすごく安心した……」
珍しくユウキの意見がゼフュロスと一致した。
「大丈夫だと言ったであろう? お主らは心配し過ぎだ」
「そんなこと言ったって団長ー。あれはどう見ても危なかったぜ?」
「団長はわかってたのかもしれませんけど、俺は冷や汗が止まりませんでしたよ」
「全く……」
「まあ、この調子で次の相手も勝とうぜ!」
「ああ、そうだな。さて、次は誰だろう……」
階段を上ると、そこにはダークが待ち構えていた。
「っと。お、次はお前だったか」
「ああん? おい、何でこんなに大勢来ているんだ? ユウキだけを通せと言われてんのに、アイリスたちは何してたんだ?」
ダークは気怠そうに溜め息を吐いた。
「二人はマリアさんとスノウさんが倒した。今度はお前の番だ!」
「美しきハニーたちの勝利だぜ!」
「またまた、つまらねえ冗談を……」
「冗談だと思うなら試してみようか? よし、団長! こいつは俺に任せてくれ!」
ゼフュロスが自ら進み出る。
「うむ。期待せずに見ておこう」
「な!? 勝つってば! ユウキ、お前は信じろよ!?」
「ああ! いつでも助けに行けるように準備しとくぜ!」
「お前まで!」
「そうだな。ゼフュロスの場合、あるいは助けが必要かもしれぬ」
「よっしゃー!」
団長からの免罪符を得て、ユウキは張り切りながら準備運動を始めた。
「団長ー! そりゃないぜ!」
「何を話し合ってんのかわかんねえけどよ、とりあえずユウキだけが通れ。それがマコト様の命令だぜ?」
ダークが顎で指図したのを無視し、ゼフュロスが進み出た。
「悪いけど、ちょっと俺と遊んでくれないかな?」
「ああん? そんなつまらねえことして何になんだ?」
「絶対退屈させないからさ。約束するぜ?」
「言ったな? それなら存分に楽しませてもらうとしようか」
「ああ。In the World……この華やかな世界の中で」
「何だあ? やっぱりお前面白くなさそうだ。他の奴が来いよ」
「始まる前から決め付けてんじゃねえよ!」
敵にまで酷い扱いを受けるゼフュロスにユウキたちは苦笑を漏らした。
「ほら、そっちも価値観ぶつけろよ!」
「ちっ! In the World……この夢のない世界の中で」
「それじゃ、遊ぼうぜ! ウィンド!」
「効かねえよ、ソニックアロー!」
ゼフュロスが撃ち出した風魔法は、ダークの放った見えない矢によってどんどん裂かれてゆく。
だが……。
「さてさて、ショータイムと行こうか。ウォール!」
その矢は半透明の壁に阻まれ、ゼフュロスには届かなかった。
「くっ! それなら今度はこっちからだ! ダークブリング!」
「それっ! アクア!」
闇の衝撃波と水魔法が互いにぶつかり合って消えた。
「ったく、面倒な相手だ。あ、そうだ。今日は誰もいねえから思う存分ロックを奏でられるぜ!」
ダークは背負っていたギターを手に取った。
「オラァ! 俺の音を聞けえ!」
鳴り響く騒音にユウキたちまで巻き込まれる。
「グワァ! ゼフュロス! あいつを止めろー!」
「くっ! 言われなくたって! ソニックアロー!」
「ウォール!」
ゼフュロスの放った矢は半透明の壁に阻まれてしまった。
「止めんじゃねえ! オラァ!」
ダークはシャウトも織り交ぜながらギターを乱暴に弾き鳴らす。
「音には音で対抗だ! フィアーハープ!」
ゼフュロスがハープをめちゃくちゃに弾き鳴らし始めたことにより、余計にユウキたちへの影響が強まる。まだ超必殺技どころか必殺技すら使っていないというのに、すでに周りへの影響が酷い。
「おらおら行くぜえ! ロックンロール!」
「かき消してやる! ウィンド!」
ユウキは耳を塞ぎながらも、団長が何も言わないことを疑問に思った。だが、それがなぜかと視線を向けた先にその答えはあった。団長は耳を塞ぎながらうずくまっており、一喝するために立ち上がることすらできないでいた。
「ちっ! 仕方ねえ、剣を出すか」
ダークは見えない剣を生成した。
「こっちも剣で対抗だ」
ゼフュロスも同様に見えない剣を生成し、ダークへとその切っ先を向ける。
「行くぜ? 連撃!」
「来いよ。剣の舞!」
ダークの放った素早い連続攻撃を、ゼフュロスは踊るような剣捌きで全て受け止めた。
そして……。
「見切った! エレガントダンス!」
「なっ!? グワァ!」
ゼフュロスはダークの剣をつかみ、そのままダークごと投げ飛ばした。
「ふざけやがって! 反撃してやるぜ!」
すぐさま立ち上がったダークがゼフュロスの方へ走り寄る。
「返り討ちだ! 剣の舞!」
「よし! カウンター投げ、ブレイクダンス!」
「しまった! ウワァ!」
今度はゼフュロスが足払いを食らって倒れた。
だが、ゼフュロスもすぐさま立ち上がる。
「そろそろ行くぜ? 風よ、我が心となれ!」
「こっちもだ! 風よ、我が心となれ!」
ダークとゼフュロスは右手で何かをつかみ、それを自らの胸に当てた。
直後、二人の体は宙へと浮く。
「団長! 団長!」
「何だ? どうした? もう終わったのか?」
「まだですよ。一切聞いてなかったんですね……」
「あれをまともに聞いていたら耳が焼けただれる」
ユウキは団長の表現に思わず笑いを漏らした。
「で、どうした?」
「ゼフュロス……思いのほか、しっかり戦えてますよ」
ユウキの指示した先で、ゼフュロスとダークは空中戦を繰り広げていた。
「うむ。実力は確かだからな」
ゼフュロスは自分がスピードで遥かに上回っているのを利用し、ダークを追い詰めていた。
「行くぜ! 好きなだけ楽しませてやる!」
ゼフュロスはダークの背後からつかみかかろうとした。
しかし……。
「甘いぜ!」
「なっ!? ぐふっ!」
ダークは振り向き、右ストレートによる重い一撃を浴びせた。そのままさらに顔面への鉄拳から蹴りへと繋げ、一連の締めとしてつかみかかり地へと投げ落とした。
その光景を見て、ユウキはそろそろ助けに入ろうかと剣を構える。
「いけないいけない! このままでは団長にふられてしまう。反撃だ!」
ユウキはますますゼフュロスがダメそうに思えてきた。
だが……。
「……行くぜ!」
ゼフュロスは勢いよく跳び上がり、さらに宙を舞いながら二度空気を踏みつけた。
そして、一瞬にしてダークの目前に迫り、鉄拳から見えない剣での斬撃と目にも留まらぬ速さで繋げた。
「うぐっ!」
「お返しだー!」
ゼフュロスは連続技を受けて怯んだダークをつかみ、地へと投げ飛ばした。
だが……。
「く……! よくもやってくれたな!」
腕力とタフさではダークが上回っており、すぐさま態勢を立て直された。
「本気出してやるぜ!」
ダークが再びギターを手に取った。
「行くぜ? レクイエム!」
ダークはギターを乱暴に引っ掻き回した。投げ属性の必殺技が、音波となって周囲を引き裂く。
「グワァァ! やめろ! こっちにまで被害が!」
そのあまりの不快な音にユウキが思わず絶叫する。
「こうなったらこっちも! 投げ必殺技、タナトスハープ!」
ゼフュロスもハープを構え、死の音色を奏でる。
それにより、ユウキたちへの被害が悪化する。
「お主らやめろー! ぐぬぬ!」
「団長! すまん、がんばってくれ! こっちも今必死なんだ!」
「全員俺の音を聞けえ!」
ダークの怒号が響く。
ユウキたちはどちらの攻撃も早く終わることをただただ願っていた。




