星の涙
それからしばらくの後。
「ごちそうさま!」
「本当に食べるの早いわね」
「いやあ、楽しみで楽しみで、早く行きたいです!」
「まあそう慌てるな。すぐに見せてやる」
ユウキは楽しみなあまり待っていられないでいた。
「さてと、それじゃ私もごちそうさま」
「うむ。マリアとスノウも食べ終わったようだな」
「はい。ごちそうさまです」
「私もだ。スノウ嬢、ごちそうさま」
「ハイドも食べ終わったか。私もこれで終わりだ」
団長が最後の一口を食べ終え、夕食が終わった。一同は食器を片付け、ついに待ち侘びた瞬間が来た。
「それでは行くとしよう。マリア、頼むぞ」
「はい。テレポート!」
マリアの詠唱により、五人は瞬間移動した。
「さ、着いたわよ」
「すごい……。俺のテレポートとは比べ物にならない」
ユウキは驚いた。まさか全員を一度に運べるとは思っていなかったからだ。
「そんなことより、見てみなさい」
「どれどれ? うわあ……」
ユウキが振り返った先には、大きな湖が広がっていた。夜空の星が一面に映っており、まるで湖面に浮いているように見える。それは手を伸ばせば拾えそうにさえ思える程くっきりと映っている。
「やっぱり何度見ても綺麗です」
「そうだな」
ユウキがあまりの美しさに見惚れていると……。
「そのランプ、貸してもらえるかしら?」
「あ、はい。どうぞ」
「アクア!」
マリアは一滴だけ水を生成し、ランプに入れた。
「はい、どうぞ」
「おお! ぼんやり光っている!」
「普通の水だとその程度だけれど、ここの水を使えばもっと綺麗に光るわよ」
「もっと綺麗に!? 早速湖の水を入れてみます!」
ユウキは湖面に駆け寄り、その水を手ですくってランプに入れた。
「わあ……!」
ランプの中で星のような小さな光が無数に瞬き始めた。
「ね、綺麗でしょ。ここの水には不思議な魔力があるの。だからこうして、ランプに反応するのよ」
ユウキはマコトにも見せてやりたいと思った。
「ユウキ、これでどうかしら? テレポート、使えるようになったんじゃない?」
「あ、そういえばそうでしたね」
「大丈夫か? ここで失敗したら湖へ落ちるぞ」
「少しくらい緊張感があった方が今まで上手く行ってましたから! 大丈夫です!」
「ふむ、それならよい」
ユウキは目を閉じて集中した。
「テレポート! ……お、おお!?」
瞬間移動したユウキの表情が弾けんばかりの喜びに染まった。
「……どうだ?」
「思った方向に飛びました! 今そっちに戻ります! テレポート!」
ユウキは宣言通り、元いた場所まで戻った。
「……うむ、確かに丁度ここへ戻ってきたな」
「よし! これで実戦でも使えますよー!」
「よかったわね、マスターできて」
「マリアさんのおかげです! ありがとうございます!」
「これで目的も達成できました! 後は……」
もう一つの目的が、目前まで迫っていた。
「来るわよ。ポジティブ一勝手な人が」
「うむ。捕まえて引きずってでも連れ帰ろう」
引きずってでもと聞き、ユウキは苦笑した。
「……来たわ!」
「え!? 何だ!? ウワァ!」
「あんたはまた勝手にいなくなって!」
「痛い痛い! 殴らないで!」
マリアがゲンコツを振りかざしている。
「お主、帰ってきたばかりであろう! なぜまた旅になど出たのだ!」
「え? それは……」
「それは何だ!?」
「風が俺を呼んでいたからさ……」
「帰ったら町中を掃除しろ!」
団長の怒鳴り声が辺りに響いた。
「そんな! 団長、そりゃないぜ。せっかく手土産も持ってきたのにさ。ほら、綺麗な貝だろう?」
ゼフュロスは虹色の貝をポケットから取り出した。
「う、うむ。綺麗だが……」
「貝は外からの攻撃に対し身を守るあまり閉じこもる。そうしてやがて、自らの美しさも忘れてしまう。その結果として、世界の悪い部分しか見えなくなるのだ」
「それはもしや……」
「そう、それがネガティブの実態だと俺は思う。だから、団長がこの綺麗な貝たちを救ってやってはくれないだろうか?」
「……そうだな。たまにはいいことを言う」
「だろう?」
「だが掃除はさせる」
「厳しいなあ……」
ユウキは呆れて声も出せなかった。
「あ、そうそう。マコトから伝言だぜ」
「何!? お主、よく無事だったな!」
「何でか知らないけれど、襲ってくる様子はなかったぜ。それで、伝言なんだけどさ、出会った山の頂点で待つからきてほしいってさ」
「……きっと、ネガティブもみんなそこで待っているはずだ。団長、みんな、今こそネガティブを全員救いに行きましょう!」
ユウキの声には決意がこもっていた。
「うむ。そうだな。いつまでもこうして殻に閉じこもらせていてはかわいそうだ。私たちがその哀れな者たちを外の世界へと連れ出してやろう」
「そうですね。きっとネガティブのみなさんも苦しんでいるはずです。私も早く救ってあげたいです」
「よし、日頃の鍛練の成果を見せる時が来たな!」
ゼフュロスが右手を握りしめた。
「あんたはそんなに鍛練してないでしょうが!」
「そりゃないぜハニー!」
一同はゼフュロスの不甲斐なさに苦笑した。
「私もネガティブに潜伏してみて、思ったところがある。確かに、あやつらも何かを抱え込むあまりそうなったのかもしれぬな。その話、協力させてもらおう」
「ハイドさん、ありがとうございます!」
「それでは、明日ネガティブとの決戦に向かうとしよう! 各自、今日はゆっくり休んでおくように!」
「はい! 明日はがんばりましょう!」
「それじゃ戻りましょう。テレポート!」




