表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
~In the World~ この世界の中で……  作者: 愛守
第一編 それぞれの価値観
33/55

テレポート

 ハイドが鍛練場を出ようと入り口へ向かう。

 すると……。


「がんばっているみたいね」

「あ、マリアさん、スノウさん」


 二人が顔を覗かせた。


「団長から聞きました。お帰りなさい、ハイドさん」

「ただいま戻った、スノウ嬢」

「で、ユウキはまた鍛練していたのかしら?」

「はい、トラップとフェイントを覚えました!」

「わあ、さすがユウキさんです!」


 スノウにほめられて、ユウキは照れるあまり少しニヤけた。


「後のことは二人に任せるとしよう。私は掃除に戻る。それと、フェイントのことも団長に話しておかねばな」

「あ、はい。ありがとうございました!」


 ハイドは影のように消えた。


「ユウキはどうするのかしら?」

「俺はもう少し鍛練しようと思います」

「それなら私も手伝うわ。丁度新しい魔法を覚えたから」

「ええ!? それ、見たいです!」

「見せてあげるわ。テレポート!」


 マリアが左手をかざし詠唱すると、その姿が消えた。


「おお!」

「どう? これなら敵の技を避けることができるわ」


 マリアは少し離れた場所に再び姿を現した。


「いいなあ……」

「かなり難しい魔法だから、さすがに使えないかもしれないわね」

「確かに……。マリアさんでもやっと覚えた魔法だしなあ」


 ユウキはテレポートを発動させる自信がなかった。つい先程も、同じ効果の雲隠れを成功できず仕舞いだったからだ。


「まあ、今の内から練習しておけばいつか使えるようになるかもね」

「はい! やってみます! ……テレポート!」


 ユウキはマリアの動作をまねてみた。


「ああ、やっぱりダメか……」


 ユウキは自分が同じ位置に立っていたことから、失敗したと思い込み落胆した。

 だが……。


「なっ!? 今、一瞬だけ消えなかった!?」

「私も、本の少しだけ消えた気がしました!」

「ほ、本当ですか!? もう一度! テレポート!」


 一瞬だけ、ユウキの姿が消えかかった。


「……やっぱりだわ。少しだけ、発動しているわよ!」

「ええ!? 俺が!? 俺がこんな難しそうな魔法を!?」

「もう一回! ほら!」

「はい! 今度はちゃんと発動するようにがんばりますよ!」


 ユウキは目を閉じつつ全神経を集中させた。


「テレポート! おお!」

「成功した!? ……五センチだけ」

「でもすごいですよ! さすがユウキさんです!」

「す、すごい! 俺にもテレポートが使えるなんて! ……あ、でもこれ実戦で使えるレベルではなさそうですよね……」

「もう少し練習すれば距離を伸ばせるはずよ! やってみましょう!」

「そうですね! よおし……!」

「がんばってください」

「はい! ……テレポート!」


 再びユウキは瞬間移動を成功させた。


「また距離が伸びた!」

「あれ? でも、俺が行こうとした方向と逆に飛んでしまいましたよ?」

「……コントロールも、必要そうね」

「そうですね。テレポート!」


 ユウキの瞬間移動が発動し、その結果……。


「何をしておるのだ?」

「わっわっわっ! わー! 痛い!」


 入口にいた団長とご対面し、転んだ。


「お主もハイドの真似か?」

「いえ、団長、マリアさんにテレポートを習っているんです……」

「そうか。入り口へ飛ぶのは危ないから、あちらに向かって使え」

「それが、まだコントロールができないんですよ……」

「ふむ、難しい魔法だからな。使えるだけでも大したものだ。だが、それでは無闇に使うわけにもいかないであろうな……」

「そう思って練習してまーす。テレポート! あれ?」


 今度は鍛練場から出てしまった。


「これは時間がかかりそうだな……。スノウは何をしておる?」

「見学です。お夕食まではまだまだ時間がありますので、お料理は後で作りますよ?」

「いや、そうではなく……。ゼフュロスが階段から落ちてな、回復を頼みたいのだ」

「あら、それは大変ですね……。今行きます」

「どうせまたハイドと張り合って調子に乗ってただけよ。そうですよね、団長」

「うむ……その通りだ。全く、情けない奴だ」


 なぜ掃除しているだけでそんなことになるのかと、ユウキは不思議がった。


「さて、私はお主らの鍛練をしてやろうか?」

「はい、私も魔法の精度を上げたいので、よろしくお願いします」

「うむ。ユウキはテレポートは後だ。今使ったら危険だ」

「あ、はい。わかりました」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ