新たなる目標
ユウキは悩みながら呟き続け、しばらく経過した。
「お昼の準備ができたわよ?」
マリアが呼びかけるも、ユウキは俯いたままだ。
「……すみません、食欲ないです」
「いいから食べておきなさい。こういう時は食事と睡眠はしっかりしておいた方がいいそうよ」
「……それ、誰が言ってたんですか?」
「ゼフュロスよ」
「それなら無視でいいですよ……」
「ちなみにそれを聞いた団長が、たまにはいいことを言うってほめてたわ」
「……わかりました。今行きます」
ユウキは一人になりたかったのにと、団長を恨んだ。
「おお、来たか」
「ユウキさん、がんばって作ったんです。食べてください」
「……はい、いただきます」
ユウキはとりあえず食べやすそうなスープを一口飲んだ。しかし、彼には何の味もしないように感じた。
「……気持ちはわからんでもない。だが、食べねばもっと弱るぞ。私も何とか戦わずに分かり合う道はないのか考えているところだ」
「戦わずに……?」
ユウキはゆっくりと顔を上げた。
「そうさ、マコトは君の友達なんだろう? だったらさ、話せばわかると思うぜ?」
「ゼフュロス……」
「私もできればネガティブの皆さんを傷付けたくないと思ってました。ですから、私も一緒に考えます」
「スノウさん……」
「これからはネガティブも救わなければいけなくなるんだから、食べておきなさい」
「マリアさん……」
「大丈夫だ、私に任せろ。これでもポジティブを率いる団長だぞ?」
「……そっか、そうですよね。俺がこんなんじゃ、マコトを助けることができない! 俺はネガティブやマコトを倒すんじゃなくて、救わなければいけないんだ! そのためにも、いっぱい食べる!」
ユウキの表情に明るさが戻った。
「うむ。ようやく立ち直ったようだな」
「はい、ご迷惑をおかけしてしまいすみませんでした」
「何言ってるのさ? 俺たち仲間だろ? 困った時は助け合わないとな」
「あんたはもう少し周りの迷惑を考えなさい」
「そりゃないぜハニー!」
「そうだな、いつも勝手にふらふらとどこかへ行ってしまうからな」
「俺は吟遊詩人だからな。旅をする宿命なのさ」
「少しは反省しろ!」
「痛い!」
ゼフュロスは団長にゲンコツをもらった。
「あ、ユウキさんがやっと笑いました!」
「え? 俺、笑いました?」
「その方がよいぞ。向こうが悲観的に捉えるのであれば、こちらは楽観的に行くとしようではないか」
「あ、それいい! 楽観! 楽観!」
「だからあんたはもう少し反省を覚えなさいってば!」
「何を言うハニー! みんなこれからは俺を見習って楽観主義になるんだ! 俺はそのシンボル!」
ゼフュロスは高らかに宣言しながら左手を胸に当て、そしてもう片方の手のひらを天に向けながらどこか遠いところを見ている。
「ま、まあ……ほっときましょうか。あ、そうだ! せっかくネガティブがしばらくの間襲ってこないんですから、ちょっとこの世界を見て回りたいです」
「ふむ、そうか。よいぞ、行ってくるがよい」
「はい、行ってきます」




