食い違う意見
「わっ! 危ないよ! ユウキ君!」
「グァァ!」
ユウキは団長たちを庇い、背中を切り裂かれた。
「相変わらず無茶ばっかりするんだから。僕が一瞬で止められたから、傷が浅くて済んだんだよ?」
「……マコト、もうやめてくれ! お前はこんな悪いことをする人間じゃないはずだ!」
「悪いことなんて何もしてないよ。ただ、この世界をよくしようとする僕らの邪魔をする悪党を懲らしめているだけだよ? 何でわかってくれないのかな……」
「違う! そいつらネガティブは世界の破壊をしているだけだ!」
「もう! ネガティブなんて名前じゃないって言ってるでしょ!? ユウキ君に邪悪な幻惑魔法をかけたそいつらを、僕は許さないよ!」
マコトは再び戦闘態勢に入った。
「やめろって言ってるだろう! いくらお前でも許さないぞ! シューティングスター!」
ユウキは星形の岩を放った。
だが……。
「わあ……綺麗な技だね」
マコトは余裕そうにそれを眺めるだけで、避けようとしなかった。
「それもらうよ」
「何っ!?」
「アクワイアー!」
マコトが左手をかざすと、星形の岩は彼に当たる直前に消えた。
「よし、これで一回だけ使えるよ!」
マコトの使用したカウンター技はイミテーションと同じ効果だった。それだけでも厄介なのに、さらにはアイリスのシャドウやブラックパピヨン、そしてネクロマンシーといった数々の技を駆使し、あまつさえ守りや投げ属性の技まで完璧に使いこなしている。
「ねえ、ユウキ君。目を覚ましてよ」
「それはこっちのセリフだ! お前、何でこんなことをするんだよ!」
「……僕ね、ユウキ君があの時助けてくれたこと、ずっと忘れていないんだよ? 僕を助けたせいで、今度はユウキ君がいじめられちゃったじゃん」
「それは……」
「僕、あんなの絶対におかしいと思うんだ。ユウキ君は何も間違ったことをしていないのに、それどころかとても立派なことをしたはずなのに、何であんな目に遭わないといけないのかなってずっと……ずっと考えていたんだ。そしてようやく僕は答えを見付けたよ。世界中に悪が存在する限り、僕らに居場所はないんだよ!」
「……だから、罪のない人の命まで奪っても、森を焼いてもいいと言うのか!?」
「僕だって辛いんだよ!? だからみんなに、僕ら騎士団側へ着くように言ったんだよ!? もちろん戦闘させたりするんじゃなくて、お互いに共存する道を提示したんだ! なのに……なのに!」
「どうして……。どうしてそんな考え方になっちゃったんだよ!? マコトー!」
ユウキの叫びは虚しくも彼の心に響くことはなかった。
「……どうやら少し考える時間をあげないといけないみたいだね。シェイドムーン!」
「なっ!? 何をする!?」
マコトの手から黒い靄が放たれ、ユウキを包んだ。
「何だこれは!? 毒か!? 呪いか!?」
「心配しなくても大丈夫だよ。ただの回復技だよ」
「回復!? ……本当だ、傷が治ってゆく」
「どうしても理解できないみたいだから、その人たちが醜態を晒すところをその目で見るといいよ。少し不安だけど、ユウキ君なら大丈夫だと信じることにするよ」
「お、おい! 待て!」
「それじゃまたね。ネザーワープ!」
マコトはアイリスたちを連れて闇の中へと消えた。
「……何でだよ? ……何でだよおお!」
「……うっ!」
ユウキの叫ぶ声で団長が意識を取り戻した。
「どうなったのだ? ネガティブはどこへ行ったのだ!?」
団長の問いかけにユウキは答えず、ただ俯いている。
「……ユウキ?」
「ウアアア! 何でだよおお! マコトおお!」
「痛て……。ありゃりゃ、逃げちゃったのか。ん? どうしたんだ? 泣いてるのか?」
「おい、ゼフュロス! そっとしておけ!」
ユウキは涙を拳で拭った。
「……大丈夫です、団長。それより、みんなを回復させましょう」
「そうだな。頼む」
ユウキはヒールを仲間たちにかけた。
「……うーん。ユウキさん? あ、ネガティブはどうなったのですか!?」
「後で説明します。スノウさんも回復をお願いします」
「あ、了解です。ヒール!」
マコトがネガティブのリーダーだったということを、ユウキはまだ受け入れられずにいた。




