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~In the World~ この世界の中で……  作者: 愛守
第一編 それぞれの価値観
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実践トレーニング

「……さて、それでは行くぞ? 準備はよいか?」


 ユウキは深く息をし、精神を整える。練習とはいえ団長が相手だ。気を抜いたら怪我をしてしまう。


「……大丈夫です! よろしくお願いします!」

「よろしい。では始めよう!」


 団長はユウキへと手をかざした。


「ライトブリング!」


 ユウキは心を落ち着かせる。そして、向かってくる光の衝撃波へとカウンターで対抗した。


「レイジ!」


 ユウキは団長の攻撃を無効化し、それを自らのパワーへと変えた。


「うむ、ではこれはどうする? はっ! えいっ!」

「痛っ! 痛い!」


 団長は技ではなく直接剣で攻撃してきた。その動きの速さに翻弄ほんろうされ、カウンター技のタイミングを合わせることができない。


「どうした! 先程覚えた技を忘れたのか!」


 その言葉にユウキはハッとした。カウンター技が間に合わないのなら、自分から先に守りの技を放てばいい。


「シューティングスター!」

「規律、シヴァルリー!」


 ユウキの攻撃は団長のカウンター技により無効化されてしまう。ユウキがカウンターを狙えば素早い斬撃で隙を突き、守りの技で対抗してくればカウンターで受け流される。団長は好守のバランスに優れ、ユウキは大いに苦戦する。


「行くぞ! それっ!」

「痛たた! くっ!」


 一方的に押され続けるユウキだが、基本的に攻撃はそのまま剣で仕掛けてくるということに気付いた。

 そして……。


「スラッシュ!」

「うっ! ……やるではないか!」


 不意を突いたユウキの一撃が団長に命中した。守りの技なので団長の攻撃に一方的に勝つことができ、なおかつカウンターの余裕を与えない素早い技だ。


「団長が鍛えてくれたおかげです!」

「それならこちらも……! スラッシュ!」

「痛い!」


 今度は団長も守りの技で対抗してくる。今度は同じ守りの技なので、先程と同様にスラッシュを放つだけでは相殺されてしまうことになる。そうなれば、合間を縫っての斬撃が的確で速い団長の方が有利だ。

 ユウキは接近戦では自分が不利だと判断し、一度距離を置いた。


「……ほう、なるほどな。いい判断だ」

「俺だって一応考えてますよ!」

「そうか……。それならこれはどうだ? ライトブリング!」

「こっちには遠距離の守りがあります! シューティングスター!」


 団長の放った光の衝撃波は打撃属性、ユウキの放った星形の岩は属性だ。これなら一方的に勝てると思ったユウキだが……。


「規律、イミテーション!」

「な!? それは!」

「……コピーさせてもらったぞ、お主の技!」


 思惑通りにはならなかった。団長の適応力と技の豊富さに、ユウキは改めてその強さを痛感する。


「行くぞ! シューティングスター!」


 迫る星形の岩を前にし、ユウキは慌てる様子がなかった。彼は冷静にこれまで学んだ内容を思い返し、答えを導き出した。


「ウィンド!」


 ユウキの放った風魔法に岩が吹き飛ばされ、そのまま団長へと向かう。


「ほう、やるではないか。規律、ペイシェンス!」


 ユウキには自信が芽生えていた。今や彼は団長と互角に渡り合えている。


「合格だ。そこまでできるのであれば、もう心配要らぬであろう」

「ほ、本当ですか!? やったー!」


 うれしさのあまり拳を天へ突き出しながら飛び跳ねるユウキ。


「団長ー! 俺もウォール覚えたぜー!」


 ゼフュロスの声が遠くから響いた。


「おお、ついに覚えたか! こちらへ来い!」

「今行くぜー!」


 ゼフュロスがマリアたちと共にこちらへ戻ってくる。


「……ん?」


 途中、ゼフュロスが何やら明後日の方を見て立ち止まった。


「……まずい!」

「どうかしたのか? ゼフュロス」

「ネガティブが町の外で暴れているって、騒いでいる声が!」

「何!?」


 マリアや団長の考えでは、撤退を喫した彼らはしばらく来ないはずだった。ユウキは疑問に思う。よっぽど好戦的なのか、それとも準備がもう整ったのかと。


ただちに全員向かえ!」

「はい!」


 マリアはユウキの手をつかみ全力で外へ向かう。ユウキはその速さに何度も転びそうになるが、そんなことを気にしている余裕はない。引きずられてでも急いで向かう必要があるからだ。

 スノウもゼフュロスに抱きかかえられているため、団長を除いた四人全員が迅速じんそくに町の外へと向かっている。


「……見えた! 敵は三人よ!」

「あいつら……また火を放とうとしている!」

「そんなことさせません! 森も人々も守ります!」

「そうだな、お嬢ちゃんの言う通りだ」


 ユウキたちは前方の敵を睨み、気を引き締めた。

 と、その時……。


「ああ! 森の方を向いたわ!」

「させるかー! おい待てこらー!」


 ユウキの声に、ネガティブたちは反応を示した。


「ライトブリング!」

「私も! アクア!」

「止めてみせます! シューティングスター!」


 今やっと町を抜けたところのユウキたちは、何とか間に合わせるために遠距離技を放つ。だが、その技を防ぐのに敵は二人しか要していない。

 事態は急を要している。そのためゼフュロスはスノウを降ろし、猛スピードで敵へと切り込んだ。何とか森の破壊は止められたみたいだが、三人が相手なので劣勢に立たされている。


「もう一度……。アクア!」


 マリアの攻撃もやはり防がれてしまうが、今の間にやっとユウキたちは敵の前へと着いた。


「おうおう、お疲れさん。待ってたぜえ?」

「この前はよくもやってくれたわね? 覚悟しなさい」

「お前ら全員叩きのめしてやるぜ!」

「五対三で勝てると思うなよ! ……あれ? 団長は?」


 ユウキは周囲を見回したが、どこにも団長の姿はない。


「団長は走るのが遅いわ。来るまでに私たちで何とか凌ぎましょう!」

「ああ……そんな弱点が……」


 攻防に優れる団長だが、鎧で武装しているため走るのは苦手だった。


「お前らこそ、そんな息切れしていて勝てると思ってるのかよ? 今度こそ俺のロックをたっぷりと聞かせてやるよ!」

「それは私たちにも被害が出るからやめなさい」


 好き勝手言う敵にユウキは怒りを募らせる。


「行くぞ! ライトブリング!」

「もらった! アヴェンジ!」

「なっ!? こいつ!」


 ワイルドが盾になりつつ、ユウキの攻撃を利用して自身を強化した。


「今度は油断したりしねえぜ! 行くぞ!」

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