表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
~In the World~ この世界の中で……  作者: 愛守
第一編 それぞれの価値観
19/55

マコト

 技を覚えたところで、団長は一度休息を取るように命じた。

 先程の興奮が冷めない様子で、三人は鍛錬場を後にしつつそのことについて話し続けていた。


「この調子で他の技も覚えてきますよー!」

「うむ、期待しておるぞ」

「いやあ、まさか伝説の勇者だったなんてね。これは手強い恋敵になりそうだ!」


 ゼフュロスがまたおかしなことを言っているが、ユウキはそれを無視して問題ないと判断した。


「さて、そろそろ夕食だな。今日はいろいろあったので疲れておろう? たくさん食べて休むがよい」

「はい!」


 団長もゼフュロスのおかしな発言には触れなかったことから、ユウキは自分の判断が正しいことを確信する。


「団長ー! 俺も! 俺もがんばったって! ねえ!」

「わかったわかった。ご苦労であった」

「よしっ! 団長が認めてくれた!」


 ユウキは呆れるあまり、深く溜め息を吐いた。


「……おお、待たせてしまったか」

「いえいえ。今丁度用意したところです」


 スノウとマリアが席に着いていた。料理もすでに並べられている。


「団長、ユウキさん、お疲れさまです。たくさん召し上がってくださいね」

「それではいただくとしよう」

「いただきまーす!」


 自分の名も呼んでくれなかったことに、ゼフュロスが不服を顔に浮かべた。


「なあお嬢ちゃん、俺も鍛練を手伝ったんだぜ?」

「まあ! そうだったんですね。お疲れさまです」


 ユウキは思った。スノウくらい純粋だと、ちゃんとゼフュロスにも応対するのかと。

 と、そんなどうでもいいことを考えていた時、ユウキは思い出した。団長たちに話すことがあったのを。


「みんな、聞いてください。俺、山岳地帯で昔の友達に会ったんです!」

「ほう。ということは、その者もこの世界に元からいるわけではないのだな」

「そうですね、俺の世界にいた人です。マコトって名前で、今はあいつも騎士団を率いてネガティブに対抗してるみたいです!」

「私たち以外にも騎士団が? 聞いたことないが……」

「今度会わせますよ! 目的が一緒なんですから、きっと協力してくれるはずです!」

「またまた俺の恋敵が増えるのか!? これは俺もがんばらないとだな」

「私も仲間は多い方がうれしいです。ユウキさんのお友達なら、きっといい人ですよね」

「もちろんですよ、スノウさん。マリアさんも賛成ですよね!」


 マリアは一人だけ深刻そうな表情を浮かべていた。


「……マリアさん?」

「……何か、怪しい気がするわ。団長の言った通り、私たち以外の騎士団なんて聞いたことがない。本当に存在するのなら、一度くらい耳にしていてもおかしくないはずよ」

「う~ん……。そういえば仲間が怪我したって言ってたし、あまり強くない団体なのかも?」

「それは危険だ。次に会ったら私たちに任せるように伝えてくれ」

「そ、そうですか。わかりました」


 ユウキはマコトたちの身を案じた。もしかしたら、無茶をしていたのではないかと。悪と戦おうという気持ちは素晴らしいが、もし充分な力がないとすれば確かに危ない。


「明日、すぐにでも伝えに……。あ、でももういないかも? マリアさん、ヴィジョンで山岳地帯を見ることってできます?」

「ええ、できるわよ。その人の特徴は?」

「髪が白くて、長さは俺と同じくらいです。後、背がかなり高いです」

「これと言った特徴はないのね。まあ、この時間の山岳地帯ならそんなに多くの人がいるとも思えないし、いいわ。ヴィジョン!」


 ユウキはここで初めて気付いた。この世界では白い髪は一般的だということに。団長もスノウもそうなのだから、もっと早く気付いてもよかったことだ。

 加えて背の高い人も多いということが、マリアの言動から感じ取ることができる。


「……あら? 誰もいないみたいよ?」

「ああ、もう別な場所に移動したのかな……。すみません、ありがとうございました」

「まあ、また会えるんじゃない? その人もネガティブと戦っているのなら」

「そうですね」


 それまでどうか無事でいてくれと、ユウキは祈った。

 そして、しばらくの後。


「さてと、食べ終わったな。ごちそうさま」

「あ、俺も。ごちそうさま! この後はどうします? また鍛練お願いできますか?」

「少しは休むことも考えろ。また倒れるぞ?」

「うっ! 確かに、また朝食抜きは嫌です……」

「どの道明日は余裕ができるだろう。その時にでも鍛えてやる」

「え? 明日は任務とかないんですか?」

「さっきネガティブを三人も倒したでしょう? 向こうだって何か対策を練ってから行動してくるわよ」

「なるほど……」


 マリアの言う通り、あれ程やられておきながらまた懲りずにすぐ来るとは思えない。傷を癒したり、作戦を立てたりするのが普通だ。


「と言うことだ。鍛練は明日にする。各自、今日はしっかり休んでおくように!」

「おう! 団長、俺も一生懸命休むぜ!」

「ゼフュロス、お主は少し反省をしろ!」

「えー? それはないぜー!」


 ユウキは、とりあえずゼフュロスとは関わらないでおくことにした。余計に疲れるだけだから。

 それに、少しマコトのことについて考えたいというのもあった。


「スノウさん、マリアさん、少し考えたいことがあるので、お先に失礼します」

「はい、ごゆっくりお休みくださいね」

「明日はちゃんと起きるのよ?」

「はい、がんばります……」


 ユウキは寝室に向かい、ベッドに寝転びながら考える。マコトはどうやってこの世界に来たのか。まさか、自分と同じように死んだのではないかと。

 そして、マコトの発言にあった騎士団を率いているという事実。その口ぶりから、彼がリーダーだと推定できる。

 ユウキは余計に心配になった。マコトでもリーダーが務まる騎士団は、果たして強いのだろうかと。

 彼を危険に晒さないためにも、ユウキは早く会わなければならなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ