表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
~In the World~ この世界の中で……  作者: 愛守
第一編 それぞれの価値観
18/55

天才

「それでは行くぞ!」

「はい!」


 剣での攻撃と聞き、ユウキは少し怖気づいた。しかし、すぐさまそれを振り払い、真っ直ぐな視線を向ける。


「それっ! スラッシュ!」

「くっ!」


 団長の目にも止まらぬような真っ直ぐ横に払った斬撃に、ユウキは咄嗟に応じるので精一杯だった。


「大丈夫か!?」

「え、ええ……。代わりにレイジが発動したみたいで、痛くはなかったです」

「そうか……」

「あ、そういえば今の技……」

「ん? どうかしたのか?」

「先程のネガティブも同じ技を使ってました。確か、スノウさんのシューティングスターをそれで……」

「なるほどな。あの守りの属性である技に対抗するには、同じく守りの技を使うという手法は有効だ」

「そういえば、ゼフュロスはその技に対抗しようとしてました。それぞれの得意分野で戦おうと提案した時に。つまり、ゼフュロスの投げ技に不利な守りの技だったからなんですね」

「ふむ。しっかり理解できておるではないか」

「それにしても、守りの技なのに攻撃にも使えるんですね……」

「そうだ。一口に守りと言っても、自ら仕掛けることが可能な攻撃と一体の技もある。シューティングスターは遠距離攻撃としても使える守りの技だ」


 ユウキはマリアの言葉を思い出していた。スノウが守りに特化しているというのは、実際にその通りだった。攻撃技にも守りの属性が付与されているため、打撃系統の技と撃ち合えば一方的に勝つことができる。その鉄壁の守備は相手に余裕すら与えないため、完全な優位に立てるということだ。


「いろんな技があるんですね……。俺も、一つずつでも覚えます!」

「ふむ。やる気は充分のようだな。それではもう一度行くぞ!」

「はい!」

「スラッシュ!」


 団長の斬撃が体を掠める瞬間、ユウキはカウンター技を発動させた。


「……っと! あれ? 上手く行ったかも!」

「ふむ。それが本当であればスラッシュ同士で相殺できる。試してみるか?」

「はい! やってみます!」

「そうか。ならば、同時に技を出すとしよう。行くぞ……せーの!」

「スラッシュ! 痛あっ!」


 タイミングは遅れていないにも関わらず、ユウキが一方的に技を受けた。


「だ、大丈夫か!?」

「へ、平気でーす……」


 結論から言えば、ただの勘違いだった。先程発動したカウンター技も、やはりレイジだったのだ。


「無理はしない方がよいぞ?」

「いえ、やります! できます、絶対!」

「う~む……」

「そういえば、イミテーションは何で昨日は見せてくれなかったんですか?」

「わざわざコピーするような技を使ってなかったであろう?」

「あ~、そういうことですか……」


 テンションが下がりながらも、ユウキは何か方法がないのか考える。


「……そういえば、昨日と言えばレイジを覚えた時も、団長の一言によって俺は習得できたんですよね。何か、コツみたいなのありませんか?」

「ふむ、コツか……。何だろうな。柔軟な態度、であろうか?」

「柔軟な態度……」

「まさかこの技を教える日が来るとは思ってなかった故、的外れかもしれぬぞ」

「いえ、やってみます!」

「それではもう一度スラッシュで攻撃する。こちらへ来るがよい」

「はい!」


 団長の言葉にヒントを得たユウキは、今度こそ成功するという確信を覚えた。そこに何ら根拠はないが、なぜか彼にはそう思えたのだ。


「では行くぞ! スラッシュ!」

「イミテーション!」


 団長の斬撃を、ユウキは再びカウンターで受け止める。今度は自らの戦闘スタイルへの拘りを全て捨て去って臨んだ。


「……よし、今度こそ発動した気がします!」

「本当に大丈夫か? これがダメなようならまた後日にするぞ」

「えー……。でも、これで成功すればいいんですもんね!」

「自信があるようだな。よし、もう一度同時に技を出すぞ。せーの!」

「スラッシュ!」


 今度はお互いの技が相殺され、ユウキもダメージを受けていない。


「……な!? ま、まさか本当に!?」


 団長が驚愕の表情を見せた。


「……無傷だ。今度こそできた! やったー!」

「まさかここまでとはな」

「よし、これでスラッシュも同時に使えるようになったぜ! 試しにもう一度、スラッシュ!」


 ユウキは満足そうにスラッシュを試し打ちしている。

 だが、その様子を見て団長の表情が変わった。


「……お主、何を言っておるのだ?」

「え? 俺、何かまずいこと言いましたっけ?」


 ユウキは焦った。団長が怒っていると思ったからだ。


「いや、失言とかそういうことではないから安心しろ。だが、イミテーションでコピーした技は一度しか使えぬぞ?」

「え? でも、まだ使えるような感覚があるんですが……」

「……お主、もしやイミテーションではなくスラッシュ自体を習得したのではないか?」

「ええ!? そうなんですか?」

「試しにもう一度スラッシュを使ってみろ。せーの!」

「わっ! す、スラッシュ!」


 慌ててユウキもスラッシュで対応する。その結果、技は再び相殺された。


「……やはりか」

「えー!? せっかくイミテーションを習得したと思ったのに、がっかりです」

「まあ、よいではないか。技を使えるようになったのだから」

「そ、そんなあ……。でも、確かに使えるようになったと思ったのになあ……」

「うーむ、それなら試そうか。ゼフュロス! そこにいるのはわかっておる!」

「ありゃりゃ~、ばれてたか」


 入口の丁度死角となっている場所から、ゼフュロスが頭を掻きながら姿を現した。


「え!? いつからそこに!?」

「ちょっと前からだよ。で? 団長、俺に何の用だい?」

「ユウキに技を使ってみてくれ」

「あ~、そうなるよね~。見付かるとこれだから……」

「さっさとやらんか!」

「わかったわかった。それじゃ、お嬢ちゃんを助けた時と同じくらい加減してやるから、安心しな」

「そっか。それなら安心だ」


 そう言った後、ふとユウキは思った。それならもっと早く来てくれれば、怖い思いをしなくてよかったのではと。


「それじゃ行くぜ? そんなに何回も付き合うつもりないから、緊張感は持っとけよ?」

「安心しろって言ったり緊張しろって言ったり、一体どっちなんだよ!?」

「あまりそんな難しいこと言うなよ。気楽に行こうぜ。飽きたら帰る、それだけさ」

「いいぜ、これで上手く行けばいいだけだ!」


 ゼフュロスの態度がユウキの心に火を着けた。


「じゃあ一回目~、ウィンド!」

「イミテーション!」


 ゼフュロスの放った風魔法に合わせ、ユウキはカウンターを発動させた。

 だが……。


「……で、成功したのか?」


 その威力があまりに低いので、攻撃を防げたのかどうかの判断が団長にはできなかった。


「あ、はい。多分、上手くいったと思います」

「では、使ってみるがいい」

「はい! 行くぜ……! ウィンド!」


 ユウキのかざした左手から一陣の風が生じた。


「こっ! これは!?」

「なっ!? 本当に俺の使ったウィンドをコピーした!?」

「今度こそ、イミテーション習得だ!」


 ユウキはうれしさのあまり、飛び上がった。


「驚いた……。イミテーションとスラッシュを同時に覚えたのか! やはり、伝説の勇者というのはすごい才能を持っておるのだな」

「え? 伝説の勇者!? ねえ、俺それ今聞いたんだけど? ねえ団長!」


 ゼフュロスが驚愕しつつ問うが、団長はそれを完全に無視している。


「期待しておるぞ、ユウキ!」

「はい、がんばります!」

「ねえちょっと! 団長ー!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ