天才
「それでは行くぞ!」
「はい!」
剣での攻撃と聞き、ユウキは少し怖気づいた。しかし、すぐさまそれを振り払い、真っ直ぐな視線を向ける。
「それっ! スラッシュ!」
「くっ!」
団長の目にも止まらぬような真っ直ぐ横に払った斬撃に、ユウキは咄嗟に応じるので精一杯だった。
「大丈夫か!?」
「え、ええ……。代わりにレイジが発動したみたいで、痛くはなかったです」
「そうか……」
「あ、そういえば今の技……」
「ん? どうかしたのか?」
「先程のネガティブも同じ技を使ってました。確か、スノウさんのシューティングスターをそれで……」
「なるほどな。あの守りの属性である技に対抗するには、同じく守りの技を使うという手法は有効だ」
「そういえば、ゼフュロスはその技に対抗しようとしてました。それぞれの得意分野で戦おうと提案した時に。つまり、ゼフュロスの投げ技に不利な守りの技だったからなんですね」
「ふむ。しっかり理解できておるではないか」
「それにしても、守りの技なのに攻撃にも使えるんですね……」
「そうだ。一口に守りと言っても、自ら仕掛けることが可能な攻撃と一体の技もある。シューティングスターは遠距離攻撃としても使える守りの技だ」
ユウキはマリアの言葉を思い出していた。スノウが守りに特化しているというのは、実際にその通りだった。攻撃技にも守りの属性が付与されているため、打撃系統の技と撃ち合えば一方的に勝つことができる。その鉄壁の守備は相手に余裕すら与えないため、完全な優位に立てるということだ。
「いろんな技があるんですね……。俺も、一つずつでも覚えます!」
「ふむ。やる気は充分のようだな。それではもう一度行くぞ!」
「はい!」
「スラッシュ!」
団長の斬撃が体を掠める瞬間、ユウキはカウンター技を発動させた。
「……っと! あれ? 上手く行ったかも!」
「ふむ。それが本当であればスラッシュ同士で相殺できる。試してみるか?」
「はい! やってみます!」
「そうか。ならば、同時に技を出すとしよう。行くぞ……せーの!」
「スラッシュ! 痛あっ!」
タイミングは遅れていないにも関わらず、ユウキが一方的に技を受けた。
「だ、大丈夫か!?」
「へ、平気でーす……」
結論から言えば、ただの勘違いだった。先程発動したカウンター技も、やはりレイジだったのだ。
「無理はしない方がよいぞ?」
「いえ、やります! できます、絶対!」
「う~む……」
「そういえば、イミテーションは何で昨日は見せてくれなかったんですか?」
「わざわざコピーするような技を使ってなかったであろう?」
「あ~、そういうことですか……」
テンションが下がりながらも、ユウキは何か方法がないのか考える。
「……そういえば、昨日と言えばレイジを覚えた時も、団長の一言によって俺は習得できたんですよね。何か、コツみたいなのありませんか?」
「ふむ、コツか……。何だろうな。柔軟な態度、であろうか?」
「柔軟な態度……」
「まさかこの技を教える日が来るとは思ってなかった故、的外れかもしれぬぞ」
「いえ、やってみます!」
「それではもう一度スラッシュで攻撃する。こちらへ来るがよい」
「はい!」
団長の言葉にヒントを得たユウキは、今度こそ成功するという確信を覚えた。そこに何ら根拠はないが、なぜか彼にはそう思えたのだ。
「では行くぞ! スラッシュ!」
「イミテーション!」
団長の斬撃を、ユウキは再びカウンターで受け止める。今度は自らの戦闘スタイルへの拘りを全て捨て去って臨んだ。
「……よし、今度こそ発動した気がします!」
「本当に大丈夫か? これがダメなようならまた後日にするぞ」
「えー……。でも、これで成功すればいいんですもんね!」
「自信があるようだな。よし、もう一度同時に技を出すぞ。せーの!」
「スラッシュ!」
今度はお互いの技が相殺され、ユウキもダメージを受けていない。
「……な!? ま、まさか本当に!?」
団長が驚愕の表情を見せた。
「……無傷だ。今度こそできた! やったー!」
「まさかここまでとはな」
「よし、これでスラッシュも同時に使えるようになったぜ! 試しにもう一度、スラッシュ!」
ユウキは満足そうにスラッシュを試し打ちしている。
だが、その様子を見て団長の表情が変わった。
「……お主、何を言っておるのだ?」
「え? 俺、何かまずいこと言いましたっけ?」
ユウキは焦った。団長が怒っていると思ったからだ。
「いや、失言とかそういうことではないから安心しろ。だが、イミテーションでコピーした技は一度しか使えぬぞ?」
「え? でも、まだ使えるような感覚があるんですが……」
「……お主、もしやイミテーションではなくスラッシュ自体を習得したのではないか?」
「ええ!? そうなんですか?」
「試しにもう一度スラッシュを使ってみろ。せーの!」
「わっ! す、スラッシュ!」
慌ててユウキもスラッシュで対応する。その結果、技は再び相殺された。
「……やはりか」
「えー!? せっかくイミテーションを習得したと思ったのに、がっかりです」
「まあ、よいではないか。技を使えるようになったのだから」
「そ、そんなあ……。でも、確かに使えるようになったと思ったのになあ……」
「うーむ、それなら試そうか。ゼフュロス! そこにいるのはわかっておる!」
「ありゃりゃ~、ばれてたか」
入口の丁度死角となっている場所から、ゼフュロスが頭を掻きながら姿を現した。
「え!? いつからそこに!?」
「ちょっと前からだよ。で? 団長、俺に何の用だい?」
「ユウキに技を使ってみてくれ」
「あ~、そうなるよね~。見付かるとこれだから……」
「さっさとやらんか!」
「わかったわかった。それじゃ、お嬢ちゃんを助けた時と同じくらい加減してやるから、安心しな」
「そっか。それなら安心だ」
そう言った後、ふとユウキは思った。それならもっと早く来てくれれば、怖い思いをしなくてよかったのではと。
「それじゃ行くぜ? そんなに何回も付き合うつもりないから、緊張感は持っとけよ?」
「安心しろって言ったり緊張しろって言ったり、一体どっちなんだよ!?」
「あまりそんな難しいこと言うなよ。気楽に行こうぜ。飽きたら帰る、それだけさ」
「いいぜ、これで上手く行けばいいだけだ!」
ゼフュロスの態度がユウキの心に火を着けた。
「じゃあ一回目~、ウィンド!」
「イミテーション!」
ゼフュロスの放った風魔法に合わせ、ユウキはカウンターを発動させた。
だが……。
「……で、成功したのか?」
その威力があまりに低いので、攻撃を防げたのかどうかの判断が団長にはできなかった。
「あ、はい。多分、上手くいったと思います」
「では、使ってみるがいい」
「はい! 行くぜ……! ウィンド!」
ユウキのかざした左手から一陣の風が生じた。
「こっ! これは!?」
「なっ!? 本当に俺の使ったウィンドをコピーした!?」
「今度こそ、イミテーション習得だ!」
ユウキはうれしさのあまり、飛び上がった。
「驚いた……。イミテーションとスラッシュを同時に覚えたのか! やはり、伝説の勇者というのはすごい才能を持っておるのだな」
「え? 伝説の勇者!? ねえ、俺それ今聞いたんだけど? ねえ団長!」
ゼフュロスが驚愕しつつ問うが、団長はそれを完全に無視している。
「期待しておるぞ、ユウキ!」
「はい、がんばります!」
「ねえちょっと! 団長ー!」




