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~In the World~ この世界の中で……  作者: 愛守
第一編 それぞれの価値観
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山岳地帯

 本部に着いてからも団長は落ち込んだままだ。ユウキたちからすれば、むしろ大活躍だったのだが。


「本当に自分が情けない。ユウキが誰よりも先に気付き、スノウはそれを援護した。ゼフュロスもスノウを助けたそうだな……ご苦労だった」

「いや……あの、団長? 珍しくほめてもらえるのはうれしいんだけど、ちょっと落ち込み過ぎだぜ?」

「あんたはもう少し反省を覚えた方がいいと思うわ」

「ハニー! そりゃないぜ!」


 マリアの鋭いツッコミにユウキは感心しかける。だが、よくよく考えると、今はそれどころではない。


「マリアもよく戦ってくれたな」

「団長……」

「各自、休憩してくれ。私は少し一人になりたい……」


 そう言い残し、団長は鍛錬場へと向かった。


「やれやれ、また団長の悪い癖だ」

「あんたのその気楽さを少し分けてやりなさいよ」

「ハニー、それは俺にも難しいぜ」

「あのままではかわいそうです……」


 三人も団長を心配している。ユウキは、こういう時こそ自分が力になりたいと考えを巡らす。


「う~ん。みんなで何か元気付けられるような物、探しませんか?」

「そうだな、それじゃ俺は森の方行ってみるぜ」

「道草食うんじゃないわよ?」

「わかってるって! ついでに素敵な歌でも考えてくるさ!」


 ユウキとマリアには、とても彼一人で大丈夫だとは思えなかった。


「心配だから私もゼフュロスについて行くわ。スノウはユウキとお願い」

「はい。ユウキさん、よろしくお願いしますね」


 スノウと二人きりと聞いて、ユウキはつい意識してしまう。だが、それではゼフュロスと同じだと、すぐさま邪念を振り払う。

 団長のためにも、やるべきことをやらねばならない。


「それじゃ、私たちは先に行くわ」

「おお、ハニー! 腕を引っ張るなんて積極的だね。そんなに俺のことが恋しいのかい?」

「目を離すとすぐ消えるからでしょ! 全く! 私や団長があなたのせいでどれだけ苦労しているか考えたことあるの? 大体今回だって急にいなくなったりするから……」


 マリアの説教がフェードアウトしてゆく。


「それでは私たちは山岳地帯に行ってみましょうか」

「は、はい! 行きましょう!」


 ユウキは張り切っている。何かあった時にスノウを守れるのは自分しかいないと。

 だが、ユウキはよくよく考え直す。スノウと行動を共にするよう言われたのは、自分を一人にすると危ないからなのではないかと。実際、ユウキは自分よりスノウの方が強いと感じていた。


「ユウキさん、そちらではありませんよ? 山岳地帯はこちらです」

「あ……す、すみません!」


 ユウキは考えるのに気を取られ、町を出たことにも気付いていなかった。

 このままではダメだと、彼は気を引き締めなおす。スノウを守るためというより、迷惑をかけないために……。


「山岳地帯は足場も悪く、時々霧も出ます。気をつけてくださいね」

「はい! 充分に気をつけます!」

「それでは登りましょう」


 そう言われ、ユウキは気付いた。すでに目の前に山があるということに。

 彼は呆然としていたことを悟られないように、慌てて山を登り始める。


「ユウキさん、そこ危ないですよ」

「え? うわっ!」

「だ、大丈夫ですか!?」

「す、すみません……」


 ユウキは坂から転落した。登り始めのところだから高さがなく、少しりむいただけで済んだ。

 だが、情けないところをスノウに見られたことで、彼は顔を真っ赤にした。


「今回復しますね。ヒール!」


 スノウが両手をユウキに差し出すと、その手が柔らかい光に包まれた。その光は手を離れ、ユウキの怪我を包み込む。


「……おお! 傷が治った!」

「もっと高いところから落ちたら大変です。気をつけてくださいね」

「はい……すみません」

「では、行きましょう」


 ユウキは完全に気が抜けてしまっている自分を恥じ、気合を入れなおすために右手で頬を叩いた。周囲に音が響き渡った。


「きゃっ! な、何をなさったのですか?」

「ちょっと意識を集中させようと思いまして、そのためのおまじないです! 知りません? 俺の元いた世界では主流ですよ」

「そ、そうなんですか……。まだ鍛錬による疲れが取れていなかったのですね」

「そ、そうですねー」


 ユウキが呆然としている理由は、疲労が残っているからではなくスノウと二人きりだからである。


「あ、綺麗な水晶。団長、喜ぶかもしれません」

「本当だ。綺麗……!」

「もっと登ってみましょう」

「はい!」


 山岳地帯に何があるのかと、ユウキは不思議に思っていた。だが、その謎が今解けた。様々な大きさの水晶にユウキは見惚れている。中でも一番大きなものは背丈を優に超えており、とても持っていけそうになかった。

 と、そうしている間に……。


「ユウキさーん。大丈夫ですかー?」


 スノウはもう遠くまで進んでいた。


「大丈夫でーす! 今行きまーす!」


 大丈夫とは言ったものの、スノウがいる場所より先はさらに険しい山道だった。


「無理しなくても大丈夫ですよー?」

「いえいえいえ! 無理だなんて! ほら、この通り! こんな道軽々と!」


 ユウキは一気に坂を駆け上り、息を切らした。


「……やっぱり別な場所にしましょうか?」

「いや、大丈夫です! さあ、行きましょう!」

「疲れたら言ってくださいね」

「はい! わかりました!」


 彼はスノウの気遣いを受け入れたように振る舞ったが、スノウの前で弱音など吐けるわけがなかった。

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