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神々に愛されし乙女の転生譚  作者: 楠 のびる
第一部 神々に愛されし乙女
3/9

Act.2 依頼と対価



 はっと開くと、目の前には見慣れない木で出来た天井があった。


「はあッ、はあッ、はあッ、はあッ」


 フィーリはベッドの上で仰向けのまま天井の一点を見つめ、荒く呼吸を繰り返し、身体にかけていた毛布を握りしめる。

 荒い呼吸が落ち着き、やがて深呼吸に変わるのには相応の時間を要したが、フィーリは最後大きく息を吸いこみ吐くと、やっと毛布を握っていた拳の力を緩めた。


「はぁ……ひさびさ、に見た。」


 そうフィーリは一人ごちると、掌で顔を撫でながら、上体を起こす。

 顔を含め全身、汗まみれだった。汗を含んだ寝間着代わりの簡素な服が体に纏わりつき、気持ちが悪く、フィーリは顔を顰める。まるで死んだ時のような、感触だった。


(自分の死ぬ時の夢なんて、最悪。)


 それは忘れたくても忘れない、前世の記憶。

 フィーリには前世の記憶があった。それを思い出したのはまだ三歳の時、とある事件がきっかけで、フィーリは前世の生と死を追体験した。


(本当によく狂わなかった……)


 まだ三歳という幼かったからよかったのかもしれない、とフィーリは今にして思う。もしある程度成長していたら、前世と現世の記憶がいりまじり、廃人になっていたかもしれない。まだ記憶が少ない幼児だったからこそ、前世の記憶を受け入れることができたのだとフィーリは推測する。

 ふと腕に冷たいものが触れた。フィーリが視線を向ければ、金色の双眸とぶつかった。白い鱗の生えた胴で蜷局を巻き、鎌首を持ち上げた蛇。フィーリの相棒オルだ。


「大丈夫、オル。もう落ち着いたから。」


 そう微笑みながらフォーリはオルの頭を撫でる。フィーリの言葉に安心したのか、オルは金の瞳を細め、赤い舌をチロチロと出し入れした。


 フィーリは背伸びをしつつ立ち上がると、身体の凝りをほぐすように、軽く柔軟をしつつ、昨日までのことを思い出す。


 昨日、男達に襲われていた兎の獣人族の青年を助けた後、彼に案内されるがまま、彼の住む村についたのは夕刻だった。

 フィーリの村を見た最初の印象は質素な田舎。木造の小さな家屋に畑、牧場……普段なら長閑な田舎の村だろう。しかし、村人たちは物々しい雰囲気だった。


 青年が村に入ると村人たちが駆け寄る。そしてフィーリの姿を見て、目を見張り、さらにはフィーリが引きずってきた男二人を見てぎょっとした。ちなみに捕えた男二人には【浮遊】の魔法をかけ、地面すれすれに浮かべて運搬した。村へ向かう道中、段差のある山道を進んだ為、時々後ろでうめき声が聞こえたが、フィーリは無視した。


 男達を村人に預けた後、青年に村の中では比較的大きな建物に案内され、村の長と面談。一通り事情を説明した後、村には宿屋が無い為、とりあえずは村の長の家に泊めてもらったのだった。

 案内された部屋は急ぎ準備を整えたのであろう、少々埃臭い部屋だったが、野宿をすることも多い冒険者業を生業としているフィーリにとって、ベッドと屋根があるだけで、十分だった。


 だがそれで気が緩んだのか、あの夢を見ることになった。


「汗を流したいな。」


 フィーリは呟くと窓に視線を向ける。日が出始めた頃で空はまだ薄暗く、思った以上の早起きをしてしまったと知る。


(さすがにこの時間じゃ風呂には入れないか。)


 昨日は村長宅の浴室を借りたが、さすがにこの時間では迷惑になるとフィーリは考える。

 仕方なしにフィーリは室内に備え付けてあった桶に、魔法で水を張って湯を沸かすと、厚手の布地を浸して絞り、全身を拭いていく。何度か繰り返した後、そのまま着替えを終え、最後に己の髪をゆるく三つ編みに結ぶと肩に垂らす。


「ふう、さっぱりした……お湯は後で捨てるとして、と。」


 そうフィーリは呟き、視線をベッドに転じる。そこには蜷局を巻いたまま、瞳を閉じている相棒が微動せずいた。


「オル、鍛錬に行くけどついてくる?」


 そう声をかけるとオルは瞳を開くと鎌首を持ち上げ、ちろりと赤い舌を見せる。それが返事だった。


「じゃ、いこうか。」


 フィーリがベッドに近づいて手を差し出すと、オルは器用に腕に身体を巻きつかせながら登り、彼女の首回りに、首飾りかのように胴を巻きつかせ、最後は己の頭を、フィーリの頭の上に乗っける。これがフィーリの相棒の定位置だった。

 相棒が定位置についたことを確認し、フィーリはベッドの脇に立てかけてあった朱塗りの刀を持つと、音も立てず部屋から出て行った。








 朝早く村長宅を訪れたケイは困惑していた。


「彼女が、いない?」

「ええ、朝食の準備ができたのでお呼びしようとしたら、部屋にはいらっしゃらなくて……」


 そう村長の奥方で困ったように言った。本当に困っているのであろう、彼女の犬の耳もペタリと下がってしまっている。奥方の隣にいた村長も困惑の表情を浮かべていた。


「外套は部屋にあったから出て行ったわけではないとは思うのだが……ケイ、悪いが探してきてくれないか?」

「わかりました、長。」


 ケイは頷くと村長宅を後にした。

 外に出るとケイは、己の耳を澄ます。兎の獣人族は総じて耳がいい。能力が高い者なら、山三つ先の物音も聞き分けることができるが、そこまでは至らずともケイの能力は高い方だ。


 耳を澄まし、周囲の音を聞き分ける。村人の話し声、家畜の鳴き声、井戸から水をくみ上げる音……ふと、普段村では聞こえない、空気をきる音が聞こえた。


(森の奥……泉のほうか。)


 村長宅の背後には森が広がっている。すこし奥に進めば、水が湧き出る泉があったことを思い出し、ケイは足を向けた。

 泉に到着すると、ケイは目的の人物を発見し、そして息を飲む。


(まるで、女神のようだ。)


 木々の隙間から零れた陽光が、泉の水面を照らしていた。その反射する光が、目的の人物を照らし、神秘的な雰囲気を作り出した為、ケイにそう思わせた。


 目的の人物、フィーリは泉の側の、拓けた場所で、刀を振るっていた。


 右へ一閃、反す刃で左へ一閃、さらにそこから振り上げ、真下に振り下ろす。

 その動作一つ一つが洗練されており、まるで剣舞を待っているかのようだった。さらには降り注ぐ陽光が、彼女の動作と共に揺れるピンクゴールドの髪を輝かせ、まるで天界に住まう神々を連想させた。


 ふとフィーリが動きを止めた。そして視線を、木々に影に隠れるように立っていたケイへと向ける。


「覗き見とは、感心できない趣味ね。」


 先日聞いた鈴の転がるような、だがとても冷めた声だった。ケイは慌ててその場から飛び出すと謝罪をする。


「フィーリ殿、すまない。」


 謝罪の言葉にフィーリは小さくため息を漏らすと、刀を朱塗りの鞘に納めた。その動作が謝罪を受け入れられたのだとわかり、ケイは安堵する。

 そんな彼にフィーリは話しかけた。


「あなたは、確か昨日の……名前を聞いてなかったわね。」

「ケイ、だ。」

「そう。で、ケイさん、私に何か御用?」


 聞きつつもフィーリはさほど関心はないのだろう、動いて緩くなった髪を結び直しつつ問う。

 昨日の微かに見せた微笑みとは真逆の冷めた態度に、ケイは少々違和感を覚えつつも、目的を遂げる為に口を開いた。


「長が、朝部屋にいないと……朝食の準備ができたそうだ。」

「そう、もうそんな時間なの。」


 今気が付いた、という風にフィーリは空を見上げる。薄暗かった空は、いつの間にか明るくなっていた。


「迎えに来てくれてありがとう。行くよ、オル。」


 ケイに礼を言いつつ、フィーリが相棒を呼んだ。すると今まで泉の側の岩の上で、日光浴のように蜷局を巻いて寝ていた蛇が鎌首を持ち上げ、赤い舌をチロリと見せた。

 フィーリが近づいて手を差し出すと、腕をつたって定位置へと収まる。


「……まるで、言葉を理解しているようだな。」


 その一連の動作を見ていたケイが呟いた。動物でも人間の言葉を理解はしているだろうが、この蛇のように明確に己の意志を表示しているのは、初めてみた為の疑問だった。

 ケイの呟きに、フィーリが答える。


「ええ、オルは私と契約しているから、そのあたりの蛇とは違うわ。」

「契約? ……使い魔か。」


 術者が召喚魔法で召喚した者と契約し、従属させ、使役するものを使い魔と呼ぶ。

 使い魔となる召喚されたものは、精霊だったり、神獣だったり、魔獣だったりするから、それなら人間の言葉を理解しているというなら納得がいった。


「そんなもんよ。」


 ケイの言葉にフィーリは頷きつつ、彼に背中を向けて歩き出した。





 村長の家に戻り、部屋で再度汗を拭き、身だしなみを整えて、食堂に姿を現せたフィーリは、用意された朝食をありがたく頂く。


 朝食の献立は、スープとパンのみという質素だったが、フィーリにとっては十分なものだった。

 スープは腸詰めとじゃが芋、人参などの根野菜を煮込み、塩コショウで味を調えたもので、火が十分に通ったほくほくの根野菜に腸詰めからにじみ出た出汁と塩コショウのシンプルな味付けが、しつこくなく、食欲を増進させる。

 さらに焼き立てであろうパンは程よく固く、咀嚼の回数を増やし満腹感を得ることができた。


 村の様子を見れば豊かではないのだろう。それでも突然の来訪者に嫌な顔をせず寝床を用意し、朝からスープを仕込み、パンを焼いてくれた村長夫妻に、フィーリが文句を言うはずもなかった。


「ごちそうさまでした。」


 食後に出された飴色の茶を飲みつつ、フィーリは礼を言う。彼女の膝の上ではオルが蜷局を巻いて鎮座していたが、誰もそれを気にもとめなかった。否、その余裕がなかったというほうが正しい。


 張り詰めた空気にフィーリは片手でオルを撫でながら内心ため息を漏らしつつ、この状況を打開する為に口を開いた。


「で、ご用件は?」


 その言葉に、目の前の席に座った、眉間に皺を寄せていた犬の獣人族である村長の肩が揺れた。そして数瞬迷った後、重々しく口を開く。


「……フィーリ殿、折り入って頼みたいことあります。」

「それは、攫われた村人の救出の件ですか?」


 フィーリが先読みして答えると、村長が目を見開いた。その様子に、フィーリは自分が言ったことが正解だったと確信し、肩を竦めてみせる。


「彼……ケイさんがこの場にいる時点で予想は出来ました。」


 でなければ、彼が今この場にいることがおかしい。ちらりと視線を向ければ、部屋の隅にはケイがいる。彼も驚いているのか、目を見開いていた。

 それにとフィーリは言葉を続ける。


「昨日の捕まえた連中の口ぶりだと、他にも掴まっている人がいるみたいでしたしね。」

「そうですか……お願いします。報酬はお支払しますので、どうか、村人の救出を……」


 そう村長は沈痛な表情で深く頭を下げる。だがフィーリは首を横に振った。


「お断りします。」

「なぜだ!?」


 断られるとは思っていなかっただろうケイが声を荒げる。だがその声に怯まず、フィーリは小さくため息をついた。


「理由はいくつかあります。私は冒険者ギルドに所属する冒険者です。依頼を受ける場合は、ギルドを通すことが規則になっています。」


 冒険者ギルドに所属する冒険者は、様々な恩恵を受けることが出来る。それは宿屋の割引から国境を越える時の通行料の免除など様々だ。その恩恵を受ける代わりに、冒険者はギルドの規則を守らねばならない。その一つに、ギルドを仲介せず個人での仕事の請負の禁止だ。

 もちろん暗黙の了解で、小さな事案ならギルドも目を瞑る。しかし、今回のような大事になると規約違反となってしまう可能性が高い、とフィーリは懸念する。


 さらに理由はもう一つあった。


「これを見て下さい。」


 そう言ってフィーリは胸元からネックレスを取り出す。銀の細い鎖の先には、親指ほどの金のプレートがあり、そこには無色透明の金剛石が二つ、嵌められていた。


「私の階級ランクは『二つ星』です。」


 村長とケイの顔色が変わる。彼らも理解したのだろうが、あえてフィーリは言葉を続けた。


「報酬を支払うとおっしゃられましたが、依頼で私個人を指名する場合、この村の全世帯の、半年分の収入を集めたとしても足りません。」


 冒険者ギルドには階級制度というものが存在する。冒険者の実力によって階級を分け、実力に合った依頼を請け負うための制度だ。

 冒険者は階級にあったプレートが支給され、それを見せなければ依頼を受けることはできない仕組みとなっている。高い階級の者が低い階級の依頼を請け負うことは可能だが、その逆は不可。それにより実力と不相応な依頼を受ける冒険者が減り、無駄な死を減らすことができた。また依頼者が冒険者を指名する場合、階級によって指名料が発生する。


 階級は低いほうから、駆け出しや見習いの『鋼鉄』、見習いから卒業した一般的な実力の『赤銅』、それなりに実力のある『白銀』、実力だけでなく世間でも名を知られるほどの『黄金』。そして実力も名声もある、『星持ち』とも呼ばれる『金剛石』。


 『鋼鉄』以外の階級は実力で『下級、中級、上級』分類されており、さらに『星持ち』階級の冒険者は『一つ星、二つ星、三つ星』と呼ばれる。そして『星持ち』と呼ばれる冒険者は、一つの国に両手の指の数で足りる程度の人数しか存在せず、その指名料は破格だった。

 もし正規の手段で彼女を指名し雇おうというのなら、この村の収入だけでは到底まかなえるわけがない。


「それほどの金額を、用意できるのですか?」

「そんな……人の命が懸っているというのにッ!」


 冷静に淡々と事実を突きつけるフィーリに、ケイの悲痛な声がかぶさる。だがその言葉にフィーリは不愉快そうに片眉を上げてみせた。


「逆に、なぜ私が命を賭けなくてはいけないのですか?」


 その言葉に村長もケイも息を飲んだ。


「私はこの村に初めて来ました。親族や友どころか、知人さえいません。ケイさん……彼は偶然助けただけです。」


 最後の部分はぼそりと付け加え、フィーリは言葉を続けた。


「報酬以外に私が命を賭ける理由は、どこにありますか。私は赤の他人の為に、善意で命を賭ける事ができるほど、善人じゃない。」


 冷たく言い切るフィーリに、ケイは泉の場所で感じた違和感を再度覚える。


(まるで、昨日とは別人のようだ。)


 昨日の彼女は、少なからず人の温度を感じることが出来た。傷を癒してくれた時の微かな微笑みを、ケイは忘れることができなかった。だが今目の前にいる彼女は、まるで精巧につくられた人形のように人の温度を感じることはできなかった。

 村長とケイが黙ってしまい。フィーリは再度ため息を漏らすと言葉を紡ぐ。


「まず領主に話をされては?」


 だが村長は弱々しく首を横に振った。


「……すでに訴えましたが、無理だったのです。」


 村から人が消えはじめたのは、二週間ほど前のことだった。森に薬草を取りに行くと言った娘達が夜になっても戻らず、翌日探しに出ると娘が持っていた籠が森の中で発見されたが、娘を見つけることはできなかった。獣に襲われたような形跡もなく、森に慣れている村人が迷うとは考え難い。そして近隣の獣人族の村では、人がいなくなるという噂は聞いていた。


 人攫いなのでは、と村長は考えにいたり、領主に知らせる為に人をやった。しかし戻ってきた者は、領主からは色よい返事はもらえなかった。元々、この地方を治める人族の領主は排他的で獣人族をよく思っていない。


「私達、獣人族は、高く売れるのです……」


 そう村長は項垂れ、痛みを堪えるような声音で呟く。

 獣人族は人族より身体能力が高く、様々な能力を持つ。さらに容姿は人と異なり、若く美しい者は高く売れる。貧困に喘いだ獣人族の村では、奴隷商に泣く泣く娘を差し出すという話もある。貴族の中では獣人族の美しい奴隷を所有することが、ステータスと思っている輩も存在する。


 身体能力が高くとも、捕縛され拘束されれば、逃げ出すことは難しくなる。

 ケイも娘達を探しに出かけて、隙を突かれ男達に拘束された。逃げ出せたのは、男達がアジトについた時の一瞬の油断したところを逃亡したのだ。


「私達はもうあなたを頼るしか……! 金なら言い値を必ず用意します!」

「まだあいつらが隠れている遺跡には、多くの同胞がいる! 俺ができる事ならなんでもする! 頼む!」


 村長がガタリと立ち上がり、テーブルに額をこすりつけるほど、頭を下げる。ケイも同じように頭を下げる。村長が立ち上がった反動で、彼が座っていた椅子が後ろに倒れて音を立てた。その音に反応したオルが頭も持ち上げて、頭を下げる村長、同じくケイを金色の双眸で映したあと、フィーリを見上げる。


「……遺跡?」


 フィーリがケイの言葉に反応した。


「あいつらがアジトにしているのは、遺跡なの?」

「ああ、そうだが……」


 フィーリは視線をケイに向ける。

 敬語ではなくなった彼女に言葉に、ケイは意味がわからず、ただ言われるままに頷いて見せた。


「ケイさん、その遺跡の場所はわかる? ここから近い?」


 さらにケイが頷いたのを確認し、フィーリは顎に片手を添え、数拍考えた後、村長に視線を戻す。


オサ殿、取引をしましょう。」


 そうフィーリは、村長に話をきりだした。


「私がここを訪れ目的は遺跡探索です。ですがこの辺りをいくら魔法で探ってもわからず……たぶん遺跡には【隠蔽】の魔法がかけられていて、私の探知にひっかからなかったんでしょう。」


 フィーリはちらりとケイに視線を向けつつ、言葉を続けた。


「ケイさんは私を遺跡に案内する。私はその対価に村人を救出する。長殿、いかがですか?」

「フィーリ殿、それはあまりにも……」


 自分達にとって都合が良すぎる、と村長の顔には書かれていた。だがその言葉をフィーリは首を横に振った。


「長殿、私にとって遺跡の情報は金品よりも重要なんです。等価かどうかを決めるのは私です。それに、これは私が持ちかけた取引なので、ギルドの規定に反することはありません。」


 そしてぼそりと村長には聞こえず、だが兎の獣人であるケイには微かに聞こえるほどの音量で、フィーリは呟いた。


「……それに、もしあなたたちが報酬を用意出来たとしても、その後の生活はどうするのよ。」


 それはケイが昨日聞いた、人の温度のある、フィーリの言葉だった、


(この人は……!)


 そこでケイは、一つの可能性が浮かんだ。それを確認すべく、口を開こうとしたが、それよりも先にフィーリが話しだす。


「ただ、この取引をするにあたって、いくつか条件をつけさせてもらいます。」


 その言葉に、ケイは確認する機会を失った。





主人公の真意についてはまた後日。

今後は予告通り、不定期・超鈍足更新となります。



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