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彼女に送る恋の歌(仮)  作者: ぽっぽー
2/2

一話

「はいはーい、さっさと文化祭の出し物を決めるわよー」

 他称、委員長。真面目な正確と人をまとめる才能、そして特徴的な黒縁めがねをかけた彼女は、そう呼ばれている。首の付け根あたりまで伸ばしている髪の毛と、眉毛あたりで切りそろえられた前髪。もちろんのこと、髪は校則に沿って、一切染められておらず、綺麗な黒髪を保っている。

「えぇと、なになに・・・・・・メイド喫茶、お化け屋敷それにSSP? なによこれ」

「せくしーすしぱーてぃー!」

 僕の隣から声があがる。友人である佐藤勝だ。こいつは髪の色を茶髪に染めており、委員長から目の敵にされている。まあでも実際、校則なんて守ってるやつはあんまいない。クラスを見渡せば茶色い頭なんていくらでもいるし、制服を着崩しているやつなんかも多い。たぶん言動が残念だから目の敵にされてるんだろうな。

「あんたのことだからまたゲームかなんかで得た知識なんでしょう? だいだい寿司なのにセクシーってなによセクシーって」

「委員長はわかってない! 女子が素手で寿司を握る。そしてなおかつ格好はセクシー! これは男のロマンだよ!」

 椅子から立ち上がり、両手を机につきながら、勝は吠えた。その発言に半数程度の男は湧くが、無論女子は黙って冷たい視線を向けいている。

「はいはい。ほかに何か意見はない? えーっと、皆木、あんたはなんかないの?」

「ん、ああ・・・・・・」

 なぜ僕に聞く。それなりの付き合いだから、何も言わないのはわかるだろうに。

「なんでもいいよ」

「あんたは本当に駄目ね。僕はここにいませんよー、みたいな態度をいつまでしてるのよ。あの馬鹿ほどとは言わないけど、もっとこう、熱くなりなさいよ」

 馬鹿とはなんだ、と隣でうるさくしている勝を見ながら、僕はひとつため息をついた。

「――ッ」

 仕方なく意見を適当に言おうかと思うが、口から声が出てこない。喉から流れる空気は声にならず、漏れるばかりだ。

 怪訝に思ったのか、委員長と勝が僕を見つめている。

 ――私を見捨てたのに、あなたは勝手に自分を楽しむの?

 声が、聞こえる。

「おい、大丈夫か要!」

「ちょっと、顔色悪いわよ!」

 胃のそこからなにかが這い上がってくる。嘔吐感を必死に押さえながら僕は口を押さえながら立ち上がる。

 ――また、逃げるの?

 声は止まない。僕を呪う怨嗟の声は耳に止まずに入り込んでくる。

 足がもつれ、椅子と机の群れに倒れ込むが、痛みなんて気にしてられない。わき上がる吐き気と止まぬ声が僕を攻撃してくるからだ。

 ああ、僕は、未だ彼女から逃げられないでいる。

 彼女がこちらを見ている。あのときのおぞましい姿のまま、僕を見下ろしている。

 僕は、赤く嗤う彼女を見ながら、気を失った。

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