表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
彼女に送る恋の歌(仮)  作者: ぽっぽー
1/2

序章 悲劇、怨嗟の声

ちょっと息抜きに。更新は不定期。

眼前に写るのは道路についた大型車両の轍。タイヤの焦げる臭いが鼻をつく。

 ――ああ、これは一体なんだろうか。

 視線を横に向ければ、赤く血ぬれた彼女の体が地面に横たわっている。腕は通常ではあり得ない方向に曲がり、足は複雑に折れ曲がっている。

 ――さっきまでは、いつも通りの日常であったのに。

 たわいもない話をしていた。あの子が少しうざったいだの、体育の教師が汗臭いだのと、至極どうでもいい話だ。しかし、どうしてだろうか。煌びやかで、男女関係なしに人気があって。それでいてなぜか僕と対等に接してくれる彼女が、こんなにもおぞましい姿に変貌してしまっている。

 ――僕でなくて良かった。

 車にひかれ、死にゆくのが僕でなくて本当によかったと、心の底から安堵する僕がいる。誰がどう見ても、僕が死んだ方が皆にとって最良だったのだと、わかっているのに。あんな姿にならなくてよかった、痛い思いをせずによかったと、心の底から思うのだ。

 ――ああ、僕は本当に最低だ。

わかっている。僕は最低だ。彼女は僕を助けてくれたのに。それでもよかったと思う心に嘘はない。だからこそ、僕は自分を嫌悪することをやめられない。

 喉が渇き、足が震える。転んだときにできた擦り傷が疼く。力の入らない足をたたき、僕は歩き始める。事故が起きた反対側へと徐々にスピードを上げて走り出す。

 二度とあの光景が目に入らないように。彼女が視界に入らないように。

 僕は全力で、死にものぐるいで、転びながらも、彼女から逃げるために、走ったのだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ