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魔法使いの館の物語  作者: 優緋
悪魔が結ぶ家族の絆
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魔女を狩る父との再会

 雀が家の傍まで来ると、家から見覚えのない背の高い男の人が出てきた。

 着ているスーツは晃と同じような黒い色だけど、晃の闇夜を思わせるのと違い、この服は喪服のようで死を思わせる。

 印象に残ったので気にしながら歩いていって横を通り過ぎる瞬間、雀は何かを感じて足を止めた。

「もしかして、お父さん……?」

 何となくそう思った。思ったからもう一度声をかける。

「お父さん」

 一瞬、その男の歩調がずれて、それが雀に確信させる。

「待ってよ、お父さん!!」

 歩いていた男が足を止めて、雀の方を振り向いた。ただ、正面を向かないし、目線を落して、顔を合わせようとしない。

「……違う」

 男はそれだけ言って再び歩き出した。

「そんなぁ」

 雀は、歩き去っていく父にかける言葉が見つからず、街灯の灯る暗い道路で後ろ姿を見ている事しか出来なかった。

 雀の声が届かなくなると天空から黒い影が電柱の陰に落ちてくる。影は人の形になり、晃になる。

「……これだけで満足か?」

 博人は声のした電柱の陰の方を振り向く。

 晃は一歩踏み出し、陰から出て、黒い服の少年が姿を現した。

「お前は、いったい?」

 博人はこの非現実的な光景からすぐに冷静さを取り戻し、彼の正体を問いただす。さっきまでそこには誰もいなかったし、今も目の前に立っている晃から気配を感じられない。職業柄こういう不思議な現象には良く出会う。

「……さぁてな?」

 噛み合っていない会話。

 それだけ言うと晃は黒い影になって笑みを残して消えた。

 これで博人に晃の強い印象が残る。そして、晃は、声に出さすに言っているのだ『悩め』と。

「何なんだ、あいつは?」


 父親に来ないでほしいと言われ、雀は沈んだ気持ちで家の扉を開ける。

 中に入ると黄金お婆ちゃんが、手紙を両手で抱えるように持って立っていた。何処とは言えないが、その様子がいつもと何処か違っていると雀は感じる。

「どうしたの?」

 黄金は何も言わず、手紙を躊躇いながら両手の上に乗せて差し出した。

 受け取った封筒の裏には志田切博人ひろとと父の名前が書かれていた。

 その名前を見た雀は、乱暴に封を引きちぎって中身を取り出し、その場で読み始めた。

『すまない』

 そんな謝罪の文から手紙は、始まっていた。

『私は、君の母を悲しませるつもりはなかった。私は彼女が魔女だと知らずに結婚した。

 私は君の母が魔女だと知ったために彼女の傍から離れなければならなかった。

 それは、私の生業が魔女狩りだったためだ。もし、仲間に私の妻が魔女だと知られれば、狩られてしまう。

 私にはそれを止める力はない。だが、それだけはどうしても避けたかった。

 そのため、私は仲間を連れて日本を離れる事にした。

 それから仲間と共にヨーロッパ圏で魔女狩りを続けた。ただ、ひたすら妻の無事を願いながら。

 妻の死を知ってすぐに君に会いに行こうとした。だが、魔女の元にすぐに行く事なきるわけがなかった。

 いや、そんなのは言い訳で君が魔女としての才能を持っていたらと思うと怖かったんだ。

 ぐずぐず悩んでいるうちに杏の母――黄金に手紙で、言われたよ。雀が魔女になったと。

 だから、私は、この手紙を残し、日本を去ろうと思う。

 本当にすまない』

 書かれているのは、これまで一緒に居られなかった理由。そして、これからも一緒に入らないと言う別れの言葉。

(何なのよこの内容は?)

 手紙を読み終えると、納得できなくてくしゃっと握りつぶす。手紙には日本を出るのは明日の12時だと書かれていた。

(ねぇお母さん、私、どうすればいい?)

 いくら思っても答えは返ってこない。

 雀は部屋に入ってふさぎこんだ。部屋に月の光が差し込み暗く僅かに雀を照らした。


 博人は港まで来て、12の星が円状に並ぶ紋章の描かれた蒼い船の前に来た。ふいに風が吹いて何かを感じて博人は町の方を見る。

 そこには、別段変りない町の灯りがあるだけ。

(気のせいか)

 そう思って、博人は、船に乗る。


(ただの人間しては、以外に感がいい……)

 電柱の上に立つ闇に溶けていた影が色を持ち晃になる。服が黒く、すぐに気配を消したため博人に気づかれたりはしなかった。

 まぁ、さっき姿を見せて、気配を印象付けていたため、怪しまれにくくしていたが。

(それに、さっき姿を見せたから、まさか、尾行しているのが、俺だとは思わないだろうが)

 雀の父親について知らないから、知っておいた方がいい。

 そもそも、母親が、死んだら、父親が引き取る。この街にその父親が来ているのに、雀を引き取る様子がなかった。

 そこには、必ず理由があるはずだ。晃は、その理由がどんなものか興味があった。

(さて、行くか)

 と、と小さな音を立てて、電信柱から降りると闇に溶けるように影になって消えた。


 船の甲板に影になって、そっと晃は近づいて隠れる。船の入口には、屈強な感じの黒いうスーツを着ている見張りが立っている。ちらっと見たスーツの襟にバツ印に箒のバッジが見えた。それは、東洋の魔女狩りの組織が使う紋章。

(魔女狩りの船か。……これは、中に入るのは少し難しそうだな)

 雀の父親は、この船の中に見張りの横を通って入って行ったのを見た。

(成程な雀の父は魔女狩りの関係者なのか。……もう少し詳しく知りたいかな)

 晃は、甲板から影になって上げ蓋で繋がっている下の倉庫のような場所へ入る。真っ暗なその部屋にある積荷の箱を晃は開けて確認する。

 中には、ハーブや魔女の杖等と対魔女用の道具。

 魔女や魔法使いから押収した道具とそれらを逮捕もしくは狩るための道具。

(これは、結構な数を狩ってるな)

「で――」

(……話し声)

 晃は目を閉じて耳を澄ます。

 不明瞭に聞こえた声が鮮明になる。

「志田切博士がいると魔女を見つけるのが簡単でいいよな」

「ああ、うっかり魔女じゃない人間を殺すことも減ったしな」

 晃は目をゆっくりと開く。

(なるほど、そういうことか……)

 晃は影になってその場から消えた。

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