転校生の神様
黄金お婆ちゃんは、次の満月の晩までじっくりと考えてほしいと言って考える時間をくれた。考えるのに5日間というのは長すぎる。魔女になるというのは、きっとそれ程の覚悟がいるものなんだ。
学校の教室で、学校に来てからそんなことを考えていた。
「……何ぼけーっとしてるんだ?」
無言でいつの間にか晃が机の前で見下ろしている。雀は、晃の顔をじーっと見た。昨日言われた、魔法使いのことを考えて、頭がいっぱいだった。
「……おい」
雀は、晃の事を気にも留めず、自分の事を考えていた。
(……そっか、わからないなら、聞いてみるのも1つの方法かも。でもここじゃ、人が沢山いて、魔法使いの話なんてできないよね)
「ねぇ、昼休み時間作れないかな?聞きたいことがあるの」
「……わかった。んじゃ、屋上な」
「うん」
(……昼休み、か。そうとう、いろいろ聞かれるな、これは。魔女のこととか、俺のこととか……、できれば、俺のことは喋りたくないし、魔女のことも言っちゃいけないことがあるし、めんどそうだな)
雀は、晃が喋る時いつも間があることに気付いた。それが、無口だからではなく、僅かに思案しているということにも。きっといろいろあるんだなと思った。
(……ん、今のは、火の気配?ってことは、ラードか?)
晃は、火の気配を微かに感じた気がして真面目な顔で目だけを動かし気配のした廊下を見る。
我に返った雀は周りが妙に教室が騒がしいのに気がついた。
「何があったの?」
「転校生が来るんだと」
「ふぅん。珍しい時期の転校生だよね。私が転校してきたばっかりなのに」
「そういえばそうだよな。普通、同じクラスに連続で来るわけが……ん?」
(……まさか、ラードが転校してくるわけが……あいつならやりかねないな)
晃は、何か微妙な顔で答えた。
晃は自分が言った言葉に、めんどくさいことになるような予感がした。
雀は、不思議そうに晃の顔を見つめる。
(……?)
「ねぇ、何か知って……」
キーンコーンカーンコーン
転校生について何か知っているか、心当たりがありそうで 雀が聞き返そうした時、予令が鳴った。結局、そのことは聞けなかった。
先生が、教室に入ってきた。その後ろから違う学校の制服を着た男の子が入ってきた。きっと、あれが転校生なのだろう。
生徒がざわつく。その様子を見て先生が手をパンパンと叩いて生徒を静かにさせる。
先生は、横に立った転校生の黒板の近い場所に名前を書いた。
「さて、今日は転校生を紹介します。加賀見翔君です。仲良くしてあげてください。加賀見君、自己紹介してね」
「加賀見翔です。よろしく」
そう言って加賀見が微笑むと女生徒は、皆見惚れた。無理もない、スタイルは身長が高くて良いし、顔も、目鼻立ちが整っていてとてもかっこいい。
ただ雀だけは、ぽかーんと、口を開けていた。
髪と瞳の色が違うが、そこにいるのは間違いなく私達を襲ったラードだったからだ。
晃は、一番後ろの席で溜息をついていた。ただこうなることをある程度予想していたらしく、驚いた様子はない。
「席は、藤堂君の隣が空いてるね。そこに座って」
「わかりました」
そう言って、加賀見が教室を見回す。目があった晃は、露骨に嫌そうな顔をして目を反らす。
加賀見は、歩いて席に向かう途中、雀の前で足を止めた。
「よろしく」
「あ、う、うん」
昨日、晃を殺そうとしていたのを知っているだけにどう反応すればいいのか困る。
加賀見が、雀に手を差しだしたので、雀はぼーぜんとしながらもその手を握り返し、握手を交わした。
その後、加賀見は晃の横の席に座った。
「よろしく」
晃は、机に肘をたて手に顎乗せて、そっぽ向いた。加賀見と眼を合わせるつもりはないようだ。
「……で、なんでお前がここにいるんだ?」
答えは予想はできたが、一応確認のために聞いて見た。
「お前の見張りだ。人を傷つけたらどうなるかわかるな?」
「あ~、わかったわかった」
どうでもよさそうに晃は答える。いい加減な返答に加賀見は、さっきまであった余裕の笑みを消して睨むが、晃は気にも留めない。
雀がその様子を見るとそっぽを向いた晃が、嬉しそうに口の端を上げているのが見えた。その光景が雀には、2人が仲がよさそうに見えた。
「それでは、授業始めまーす」
教師の声を聞いて雀は、急いで教科書を取りだして、ページを捲った。
この後も雀は、昨日のことがあったので、2人を眼でついつい追ってしまっていた。




