助けを呼べば合い言葉を求められる! ──正義のヒーロー、合い言葉マン!
「助けて!」
山道を一人、散策していたら、悪の戦闘員みたいなやつらに捕まった。
やっぱり私みたいなアイドル級のかわいい娘が一人でこんなところ、来るんじゃなかった!
「イヒ!」
「イヒヒ!」
「イヒーーッ!」
どこかスケベを感じさせる甲高い声で戦闘員たちが喜ぶ。
「待て!」
勇ましい男のひとの声がした。
振り向くと、サムライみたいな格好の、でもなんとなく裏社会のひとっぽいオーラを漂わせた中年男性が、腕組みをして立っていた。
「た……、助けてください!」
私は手を伸ばし、見るからに強そうなそのひとに、助けを求めた。
「とりあえず戦闘員ども、動きを止めろ」
男性がそう言うと、戦闘員たちが大人しく動きを止めた。
「俺の名は正義のヒーロー『合い言葉マン』」
男性は編笠の下に隠した顔から凛とした空気を漂わせながら、言った。
「女……。助けてほしければ合い言葉を言ってみろ」
いや……、そんなの知らんし……。
とりあえず私は現在私が言える唯一の言葉を言ってみた。
「助けて!」
「違うッ!」
合い言葉マンが組んでいる腕の力を固くした。
「合い言葉はそれではないッ!」
定番の合い言葉を言ってみた。
「山!」
「そんな誰にでも予測のつく、しかも古臭いものではないッ!」
叱られた。
そうか……。
現代で合い言葉といえば、パスワードだ。
パスワードの定番といえば──
私は自分の生年月日を表す四文字の数字を口にした。
「容易に他人に知られうるパスワードは避けてくださいッ!」
また叱られた。
でも、わかんないよ……。そんな……初対面のひととの合い言葉なんて……
はっと気づいた。
どうして戦闘員たちは、大人しく彼の言うことを聞いて、待ってるの──?
わかった! 合い言葉は……
私は叫んだ。
「イヒーーッ!」
「よし、助けてやる」
合い言葉マンはそう言うと、戦闘員たちに命じた。
「この女を見逃してやれ」
「イヒ……」
「イヒーッ!」
戦闘員たちが泣きそうな声で、合い言葉マンの言うことを聞いた。
やっぱりそうだったんだ──
このひと、悪の組織の幹部だったんだ。




