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 プリシラはベッドの中で、モンモンと時間が過ぎるのを待っていた。

 

 ウエラが行ってから、かなりの時間がたっている(プリシラの体内時計で)。

 やることもないので(暑いし)、置き時計の針が動くのを見ながら(暑いな…)、窓の外で遊ぶ小鳥の声にアテレコしているしかなかった(暑…)。

 布団…暑…。

 この世のすべてが子守唄だわ。 

 あくびが出てくる(眠い)。

 自我がスルスルと、深い深い暗闇に意識を沈めこんでいった。


「姫様!起きて下さい」

 心地よい深い水底から、思い切りよくウエラに引っ張り上げられた。

「…ウエラ?」

「姫様。寝ぼけてないで下さい。やっとソフィア様にお帰りいただけましたよ」

 あれ(昼寝)から、1時間くらいたっている。

 言われた通りに寝ぼけていたので、ウエラの言った言葉が思考として理解できるのに、多少時間がかかった。

 (本で読んだわ。記憶喪失の人の記憶が戻った瞬間って、これなのね)

「ソフィア様は…帰った?」

 半ぼけの私に、ウエラはため息ついてから教えてくれた。

「そうです。大臣の姫君を門前払いってわけにいかないので、奥様がお相手してくださったんです。お花を持って来てくださいましたよ。見に行かれますか」

「そうする」

 ウエラと一緒に行った応接室のテーブルの上には豪華な花束が飾ってあった。

「お話ししていると悪い人には思えないのよね」

 フワフワと話す母親に、兄ジュリアンがピシャリと答えた。

「騙されちゃいけませんよ。それが詐欺師の手口ですから。花に毒が仕込んであるかもしれないからプリシラは近づかないで」

 そう言うと、花瓶ごと廊下に出した。

 

 確かに、何しに来たのだろう。

 …とか、思ったらいけないのだろうけど…。


 ルーク達の乗った馬車が大臣の領地に入って行くと、街道の雰囲気が変わってきた。

 

 うなだれ座り込む人や、死体とわかる体にすがり泣く人。争いながらゴミ箱を漁る子供達。

 ルークは、馬車の中から息を飲み、凝視しながらジャックに対して呟いた。

「なんてことだ。ジャック、これはいつからなのだ?」

 窓の外の光景は見たくないジャックは、ルークを見ながら答えた。

「10年くらいです。今の大臣の統治下になってからですよ。俺の家族も飢えと病気で死にました…」

 ルークは、静かに目を閉じた。

 

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