あなたが好き
王都のエドモンド邸の応接室。
兄とプリシラは、テーブルの上に置かれ、嫌な気配を発散させているような(偏見)ソフィアからの手紙を凝視していた。
母はハンカチで口を押さえ、手紙から出る胡散臭さい…何かを見つけようとしているみたいだった。そして、しばらく見た後に飽きたらしくて、思い出したように聞いてきた。
「…で、プリシラは何てお返事書くの?」
「お母様、今それで悩んでいる…」
(どうすればいいのだろう…か、ルーク様からは…【家から出ないで。知らない人と怪しい人は、例え、出入りの業者でも家に入れない事】っていう…なんだか報告書みたいな、手紙貰っているしな…)
「ソフィア様は、怪しい人…だよね?」
母と兄は、黙って何度も頷いた。
プリシラは、ルークからの手紙の内容を自分なりに反芻していた。思い出せば出すほどに、こう、なんだろう?胸の奥で何が引っかかる。
(…今日の朝、何日かぶりにルーク様からお手紙を貰って「わー♪キャー♪」とか、身も心もスキップしながら~ワクワク♪ドキドキして読んだ手紙には【家から出るな。誰も家に入れるな】って、…私はさぁ、小さな子供のお留守番ですか?なんなのよ!本当にもぉー!)
モンモンと、ブツブツ言っているプリシラを、母と兄は心配そうに見つめているしかなかった。
オズモンド邸。
ソフィアはプリシラからの返事を読んでから、手紙をテーブルの上に置いた。大臣は、その様子を見届けてから聞いた。
「あの娘、何と書いてきた?」
ソフィアは微笑みながら答えた。
「困りましたわ。とても高い熱が出ていて、面会謝絶なそうですわ」
「熱が?」
「えぇ、ドクターストップらしいですわ」
大臣は、それは困った。という風にアゴを触りながら、
「ほう。ソフィア…で、どうするんだ?」
「そう…ですわね…?」
悩むように伏せた瞼と、歪むように微笑んだ口元だった。
午後のエドモンド邸。
昼食後、プリシラはいつものようにソファでウダウダしているところだった。
そこへ、ウエラが走り込んできた。かなり焦っている(目は泳ぎ、口はパクパク)
「姫様…大変です」
何かあった事は私にだって、何となくわかった。
「ウエラ、どうしたの?」
「早くベッドに入って下さい」
「えっ?何?」
背中を押されて、着替えもしないでベッドの中に詰め込まれた。
「どうしたのよ?」
私も焦る。
血走った目のウエラが小声で言った。
「ソフィア様が、どうしてもお見舞いしたいと玄関で粘っておいでです。今、奥様が対応されていますが、万が一のためにベッドから出ないで下さい」
言うだけ言うと、ウエラはまた走って出て行った。
ベッドの中で物想う。
ソフィア様…、アクティブだな。
あれ?これって私、ピンチじゃないの…。
とりあえず、ウエラ階段で転ばないでね。