あなたが好き
今日で3日間ルーク様に会えていない。
(寂しいわ…)
前にルーク様が仕事で会えなかった時とは、何もかもが…こんなにも違う。
(悲劇のヒロインだわ)
ほら、私が…私の体が一回り小さくなったような閉塞感。
心臓が暗い沼に落ちたような…暗黒感。
(外の景色が眩しい…)
空虚なガラス人形の私が…ここにいる。
(虚しいわ…)
決めた。あまりにも暇なので、犬と遊ぶ!
で、ウエラと一緒に外に出たのはいいけれど…。
いいけれどね、
私と一緒に犬達と遊ぶウエラが、ずっとブツブツと呟いている。
「ルーク様は、一体全体どういうつもりでいらっしゃるんでしょうか?あんなに姫様を追いかけ回しておいて情勢が変わったらからって、あんな裏表だけの古ダヌキの娘のメギツネとくっつくなんて」
「ウエラ、言い過ぎよ。王子の結婚には政治と、国の存亡がかかってくるのよ。…これはね、仕方ないことなのよ」
ウエラが鬼の形相で言い返してきた。
「姫様。私が言いたい事は、ルーク様の心変わりの事ですよ。こんなにも薄弱な人だったなんて…。ニルス様の方がよっぽど姫様を思っておいでですよ。幸せにして下さいますよ。…今からでも考え直しませんか?」
(ウエラやめて。綺麗な風景が色褪せるから…)
「ニルス様は私から見れば近所の子供で、恋愛感情なんてあり得ないわ。例えばね、劇的に何かが変わっても、それだけは変わらないわ。それに、ニルス様には、きっと年相応の可愛らしい方が現れるわ」
「もったいないですよ…。大切にされますよ。今の恋愛よりも、20年30年先に一緒にいて幸せな人生になれそうな人かを…見極めた方が良いと思いますけど…ね」
(ウエラ、ありがたい言葉だけど…私には、そんな眼力ないよ)
「で、…国には、いつお帰りになるんですか?」
ウエラの言葉に驚いた私が、 「えっ?」
私の言葉に驚いたウエラも、 「えっ?」
オズモンド邸では、大臣とソフィア姫がワイン片手に笑いあっていた。
「お父様、おめでとうございます。何もかもがお父様の望み通りに上手くいきそうですわね」
「まったくだ。我々一族をないがしろにすれば、ガーランド国は滅びるという事がやっと分かったのだろう」
「政界と、国内の隅々にまで根を絡ませておいて正解でしたわね」
「ルーク王子がアローゼの娘を連れて来た時と、ジャックの不始末には焦ったが、終わりよければ全て良しだ」
「私は王妃。お父様は王家と親族。オズモンド一族は益々の繁栄ですわ」
「本当に、笑いが止まらん」
高笑いの大臣と、ほくそ笑むソフィア姫の姿は壁に掛けられた鏡に映っている。
燭台のロウソクがゆらめくたびに2人の姿も揺れていた。