あなたが好き
地下牢での会談?から数日たった頃、ガーランド国内でルーク王子とソフィア姫の婚約内定の噂が流れ始めた。
それを…どこかで聞きつけたらしいウエラ達が、めちゃくちゃ私に気を使っている。…のがわかる。
お庭のガゼボで「物思いに耽る私」を気取っていると、ケーキを持って兄様が現れた。
「愛しい妹よ。お腹空いただろう?」
(ちょっと、空気…読んでよね…。私はね)
「今、この世界の在り方について想いを巡らしているのよ?」
大きなお皿に載った沢山のケーキと、兄様の笑顔。
「太っちゃう…」
「でも、食べるんだろ?」
兄様が微笑む中、私はケーキを口に運んでいた。
「ウエラに聞かれたよ。噂は本当なのか?とか、プリシラ姫はどうなるの?とかね」
その光景を想像すると楽しい。
「ウエラったら、私に聞けないから兄様に聞いたのね。そんなに気を遣わなくても…直接聞いてくれればいいのに」
「いや…、普通は聞けないだろう?姫様、振られたのですか?なんて…」
「まぁそうね、確かに」
高い陽射しに光り輝く緑の木々と、そよぐ風に小鳥達の歌声。
アローゼ国での懐かしい日々が、夢の中の風景のように浮かび上がってくる。
この国に来なければ…何もかもが動かなかった。
この国で運命の歯車が動いて、目の前の扉を自分で開いて…未来への幾重にも分かれた道が見えてきた。
ん?扉…自力で開けてないな?
えっと、ルークに手を引かれて開けて。
遠い目で、過去を想う私を兄様は心配そうに聞いてくる。
「もしもし?プリシラ、糖分取り過ぎて変になったのか?中で休んだ方がいいよ」
(…)