あなたが好き
「…」
(自分のことは自分で守れます…。って、今言ったらマズいよね…)
…だけど、この人と一緒にいれば穏やかに過ごせる事だけは知っている。
私の戸惑っている様子を見たルークは優しく、そして少し困った笑顔を見せて言った。
「オズワルド大臣に言われたんだよ。こんな風に国家間の問題になったのは俺の優柔不断のせいだから、責任を取ってソフィア姫を正妃に迎えろと」
「…?国家間…?」
「俺とニルス王子」
(ちょっと…待って)
「それって、大臣がニルスを使ってルークを暗殺しようとしたんでしょう?どこがルークのせいなの?」
ルークは笑いながら、
「暗殺までいってないって。本来はニルス王子に自分の商談と、俺とソフィア姫の関係の取り持ちを頼むつもりだった…が、同席していたジャックが勝手に暴走してしまった。不可抗力だった…まぁ、嘘だろうけど」
(なんか…腑に落ちないんだけど…)
「で、ジャックはなんて言っているの?」
「黙秘か、ニルス王子を褒めるかの…どっちかで」
「ふぅうん。ねぇルーク。私はジャックに会えるかしら?」
ルークの目に好奇心の光が灯った。
「どうするの?」
ルークとプリシラが退室した後の応接室では、オズワルド大臣がルークの父王と話し合っていた。
「陛下、我がオズワルド家に何かあれば国内外に噂が流れ、社交界でも国際的にも醜聞になりかねませんな…」
父王は怪訝そうな顔をした。
「どういう…意味かな?」
得意気に大臣は笑う。
「ルーク王子と隣国王子との三角関係。これは素晴らしいスキャンダルになります」
「大臣、それは我が息子に対して言い過ぎでは?」
「これは、言葉が過ぎました。私はこの国の外聞を心配いたしている次第で。こうなった事での…我が家への罰は甘んじ受けましょう。が、ルーク王子とニルス王子の未来を考えれば、娘ソフィアとルーク王子の婚姻が両国の関係を保つ最善かと思います」
「それは、先程本人がお断りしたはず」
「国王陛下、国内外の醜聞をお考えなされませ。この先、幾世代にも渡り人の噂となりましょう」
困惑顔の国王、したり顔の大臣。
全てが上手くいった。と、勝者のように常に微笑んでいるソフィア姫。
応接室の中は混沌としていた。