あなたが好き
ソフィア姫が私を見て微笑む。
「プリシラ姫、お久しぶりですわね」
頭を押さえつけられたような感覚。
つられて私も微笑む。
「お久しぶりです。ソフィア姫」
そこには感情の移入も起伏もない。
…ただ微笑むだけ。
無機質な人形と人形の(バチバチ)の挨拶。
ソフィア姫は目だけを後ろに向けて、後ろの応接室の中を気遣う振りをしながら、
「もう、お話しも終わりましたの。プリシラ姫も中へどうぞ」
…目は笑っていない(怖)
ソフィア姫の後ろ、応接室のソファには国王陛下とルークが隣り合って座り、向かい側に大臣が座っている。
空気が濃密…。
というより、夏の嵐の前にやって来る低気圧より気圧が密密している。
(…こんな怖い所に入れるわけないでしょう。それより…ソフィア姫のこの余裕は何でしょう?)
私に気付いたルークは、王子様スマイルで立ち上がり優しく言った。
「プリシラ、こっちにおいで」
(嫌です…)
とも言えないので、渋々と…部屋の中へ…ソフィア姫の前を通る時の、ソフィア姫の私を射るような視線がずっと後を憑いてくる。
(オバケ…みたい?)
ルークの横に移動すると、ルークは微笑み私の右手を取り言った。
「俺はプリシラ以外と結婚する気はないですし、側室も持つ気はありません。生涯かけてプリシラ1人だけです」
大人たちに堂々と(輝きながら)宣言するルーク王子様。
(眩しい…。じゃなくて、そんな事…なんでこんな所で言うの?)
「ル…ルーク?」
握られている手を振り切ってやろうか?
金魚のように口をパクパクさせている私に、国王陛下が優しく声をかけてくれた。
「ルーク、プリシラ姫が困っいる。早く私室に戻って説明した方がいい」
眩しいルークは私を見つめながら、
「父上ありがとうございます。さぁ、プリシラ行こうか」
「えっ、あっ…はぁ…」
言うより早く、ルークは私の手を握ったまま、応接室を駆け抜けた。
そのままルークの私室に走り込んだ。
「ルーク、説明してよ」
息を切らして、やっと言えた。
(こんなに走ったの子供時代以来だわ)
体幹の鍛え方が違うのか、平然としているルークはソファに座って自分の隣をポンポン叩いている。
…ここに座って。という意味らしい。
心でため息ついてルークの隣に座る。
落ち着いてきたら…、握られていた手から熱い血が逆流してきたみたいで顔が…熱い。
ルークは私の両手を取ると、高熱で滲むような瞳で呟いた。
「この世の何よりもプリシラが全てなんだ。改めて誓うよ。何があっても一生守る。だから、俺の側にいて…」
(…その前に、どうしてこの展開になったのか説明してよ)