あなたが好き
今日の私は、ルークの部屋にいた。
お城に来るまでの馬車からの風景。
母国とは違う街並み、賑わう人々の活気。
ガーランド城の優しい人々。
穏やかな風。
…楽しかったここでの生活。
心配そうにルークが声をかけてきた。
「プリシラ…ボンヤリしてるけど、どうしたの?何か悪い物でも食べたの?」
(ルーク…)
「ひどいわ、ルーク。考え事をしていたんですよ。ほら、私は夢見る乙女でしょう?色々とね、…想い悩むのですよ」
ルークの顔が歪んで、…そして大笑い。
「ル、ルーク。し…失礼ですよ」
「ごめん、ごめん。…で、何を悩んでいたの?」
「ルークが…」
「俺…?」
「あ…あの、お仕事お疲れ様です」
ルークは拍子抜けしたように、
「どうしたの…?」
ルークは微笑んでくれる。
(その極上スマイルで、何人の貴婦人のハート射抜いたのやら…天然だよね)
私は、声が詰まる。
伝え方が分からないから。
ニルスのまっすぐな愛の表現と、ルークの静かな表現。
ニルスは嫌だけど、本当に私だけを見つめている。
…ルークのプロポーズって、私が隣国のお偉いさんの娘だから?
本人には…聞けないです。…よね。
迷う迷う迷う迷うぅ…。
ルークは、目の前のプリシラが赤くなったり、真剣な顔になるのが餌を取られた小動物みたいで面白いなって、それをプリシラに言えば怒られるかな?と、くすぐったい気持ちを笑って誤魔化していた。
ドアのノックの音の後にアレンが現れて、小声でルークに耳打ちをした。
「プリシラ、少し待っていて」
「はい」
急用か来客か、王子様は忙しいから仕方ない。
時計の針だけが規則的に動いていた。
…。
遅いな…。
あれから1時間はたっている。
忙しいなら帰ろうかな。
そう思い、馬車の手配を頼むために部屋を出て応接室に近づくと、ドアの前にアレンが立っていた。
「アレン様?」
私に驚くアレン様。
「お忙しいみたいなので、今日は帰ります。馬車をお願いしていいですか」
アレン様は慌てて、
「プリシラ姫、部屋に戻って下さい。ルークもすぐに戻りますから」
(えー。帰りたい…)
アレン様がここにいるという事は…、ルークもここにいる…。
来客か、
静かに応接室のドアが開き、顔を出したのはソフィア姫。