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出逢い
ガーランド王国建国祭から3カ月ほど前のアローゼ国にあるエドモンド邸。
今日も元気に父娘の言い合いが響いていた。
「ダメだ。貴族の娘が苺を売るなんて絶対にダメだ。何かあったらどうするんだ」
「お父様?どこの世界に(私は貴族です)って看板ぶら下げて歩く人がいるんですか?お父様は常々仰ってましたよね?貴族たる者、市井の人々の暮らしを見ておかなければならないと。絶好のチャンスです」
エドモンド卿は娘を落ちつかせようと、
「市井の暮らしを見るのは良いが…、なぜ隣国なのだ?我が国は見たくないのか?」
プリシラは落ち着き払い、苺柄のドレスを出して、
「いつも見に行ってますから。それに、店番用にドレスを新調したんです。可愛いでしょう?じゃあ、私はこれから勉強があるので失礼します」
プリシラは言うだけ言って部屋から出て行った。
エドモンド卿は深いため息をついた。その様子を見ていた侍女のウエラは、
「旦那様諦めた方が宜しいですよ。プリシラ様は言い出したら聞かないのですから、私たちがお供して側で見てますから」
「ウエラも…あのドレスを着るのか?」
「まさかです」