あなたが好き…です。
「間違いなく、『ルーク王子』と言う言葉がキーワードでしょうね」
神妙にリチャード医師は言った。
ニルスは訳がわからない様子で、大人しくイスに座っている。
アレンは「ふぅぅん?」と言った後に、興味深そうに「ルーク王子」と、ニルスに話しかけてみた。
「アレン…、やめた方が…」と、ルーク。
「アレン様、ダメですよ」と、プリシラ。
黙ってニルスの様子を診るリチャード医師。
最初は何も様子の変わらなかったニルスが徐々に震え出して、イスから飛び跳ねた。
…のを、プリシラがすかさず頭を殴りつける。
ニルスは頭を抑えながら上目遣いで、
「プリシラ…痛いよ…」
「うっ!」
(ヤバいわ!私、今…不覚にもニルス様を可愛いとか思ってしまった…。落ち着け…私)
「ニルス様の病気が治るおまじないですよ」
それを見たリチャード医師は、
「プリシラ様が殴ると治るようですね…」
それは納得できないプリシラは、リチャード医師に聞いた。
「リチャード先生、ニルス様は一生このままなんですか?」
「先ほども言ったとおり術をかけた者じゃないと術を解くのは、なかなか難しいと…」
ニルスは、大きな瞳をウルウルさせながら、
「プリシラ…、僕…病気なの?」
「ニルス様…」
(可哀相なニルス様、まだ子供なのに…)
「プリシラがいないとダメなの?だったらさぁ、プリシラが一生、僕の側に居てよ。ねっ?」
プリシラは素早くルークの後ろに隠れる。ルークは咳払いしてから、
「リチャード先生、…ニルス王子は入院させた方がよくないのか?」
「そう…ですね…」
入院の言葉にニルスは、
「冗談だよ。やだな…。うん、やだな…」
と…俯いてしまった。
「ニルス様は、少し休んだ方が良いでしょう」
リチャード医師の言葉で、ニルスをベッドに寝かせて全員が客室を出て行った。
窓から差し込む柔らかな陽射しと、庭の木々渡る初夏の風。
ニルスは、アローゼ城の自分の部屋から見る景色を思い出していた。
ホームシックではないけれど、胸の奥の芯がチクチクとほろ苦い。
ホームシックじゃなくて…、さっきのルークとプリシラの事が胸の奥でチクチクと熱くて、涙が溢れてくる。